子どもの生命をかいかさせる「人間教育」

2024年09月06日 12時00分00秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

問われる私たち大人の「生き方」

聖ウルスラ学院 梶田 叡一 理事長(教育心理学者)

教育は、子どもの幸福の実現のためにあるのです。

日本の教育界では近年、子どもの「学習」と「成長」に対して責任ある教育指導が、ますます求められています。

「身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること」

「短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義など将来にわたる持続的な幸福を含んだ概念」が、ウェルビーイングです。

ウエルとは良い、ビーイング状態が、組み合わされた言葉です。

釈迦は「仏は何のためのにこの世に出現したのか」という問いへの答えとして、衆生に仏の智慧を開き、示し、悟らせ、入らせるため、と述べました。

では、この4段階を教育に置き換えると、「開く」とは、子どもたちの心を活性化させ、先入観や偏見を取り除き、学びの対象となる世界に<目を開かせる>と言えるでしょう。

「示す」とは、子どもたちが学びのポイントや意義、用語の意味が分かるように示すことです。

「悟らせる」とは、学びの対象の良さや味わいを、自分なりに発見し、深め、納得させるようにすること。

「入らせる」とは、その道に入り込ませることで、学んだことが日常生活に生かされ、実際の行動につながっていくようににすることと言えるでしょう。

特に、「開く」とは、心を開いた上で示さないと、効果がないからです。

納得の感動も生まれないので「悟る」と「入らせる」ことににもつながりません。

この「開く」には、あらゆる人々の中に仏の生命が、本来、具わっているという大前提があるのです。

具わっているのだから、「開け」ばいいのです。

しかし、多くの人は、それをなかなか信じない。

だから、釈迦は、種々の比喩や物語を通して「信」を起こさようとしました。

教育に話を戻すと、日本には長い間、本来具わっている無限の可能性を「開く」ための工夫や問いが欠けていました。

「示す」ばかりになっていたのです。

「これは大事なことだから、とにかく覚えなさい」と指導してきました。

また、2000年初頭からは「ゆとり教育」が本格化しました。

だが、実態はどうであったのか。

「子どもに寄り添う」「指導ではなく支援を」というかけ声ばかりが全国にこだまし、子どもを手放してで見守る状態となりました。

「子どもには無限の可能性がある」と口だけで言うだけなら<きれいごと>です。

その子どもの可能性を開くために働きかけをするのが大人たちの責任です。

人間教育とは、「生命の可能性を開花させる教育」と言えるでしょう。

幸福の条件としては「身体的な健康」「精神的な満足」「社会的な豊さ」は確かに欠かせません。

その上で、<人間としてより良く生きる>その中に幸福の本質があるんです。

生命の充足感にこそ、ウェルビーイング(幸福)の本質があるのです。

「生きているのが楽しい」「生まれてきて良かった」という実感と言えるでしょう。

「生きているのが楽しい」といっても、「悩みや困難がなにもない」ことではありません。

悩みや困難さえも「生命を開花させる力」の変えていく―その創造的生き方に、本当の幸福のあるのではないでしょうか。

「宿命を使命に変える生き方」にこそ「生命の真の輝きがある」。

そのとおりです。

生き方という視点でウェルビーイング(幸福)を吟味すると、その対象は「子ども」に限りません。

教師をはじめ全ての大人も含まれます。

こどもたちのウェルビーイング(幸福)のために、大人たちはどう生きるかが問われるわけです。

教師たちの真の働き方改革には、「子どもたちにとって教師はどんな存在であるべきか」という問い直しが不可欠なのです。

「社会のための教育」から「教育のための社会」への転換が期待されます。

それは「子どものための社会」であり、「一人一人の生命を大切にする社会」

「誰もが使命の花を咲かせられる社会」と言えるでしょう。

 

 

 


米国の公立学校で「聖職教育」

2024年09月06日 11時04分09秒 | 社会・文化・政治・経済

仕掛けたは、大統領選挙で共和党のトランプ前大統領を支持する宗教右派勢力。

聖書戦争のアメリカであるが、憲法は信教の自由を認め、国教を禁じている。

それなのに、米国の宗教ナショナリズムが広がっている。

トランプは、2016年の大統領選で「キリスト教を復活させる」と訴えた。

このこともあり、宗教右派の8割が投票し、勝利の言動力となった。

宗教ナショナリズムを巡る論争は、米国社会の分断をさらに深め、保守派とリベラル派の対立を激化させた。

白人労働者が栄えた「古き良きアメリカ」の復活を願う共和党にとって、トランプが掲げる「米国を再び偉大に」は心に響いたのであろう。

そして「白人ナショナリズム」の原動力になっている。

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文字通り殺し合う関係にあったプロテスタントとカトリックですが、やがてアメリカで融和し、部分的に手を組む関係になります。

その背景にあったのが、マルクス主義の発展と、その思想にもとづいた共産主義国家ソ連の誕生です。

宗教は麻薬と唱え信仰の自由を認めないソ連共産主義に対抗して、反共産主義という立場で両キリスト教宗派は接近するのです。

アメリカには160万以上のNPOがあり、これは日本の特定非営利法人だけでなく、学校法人や医療法人、宗教法人、社会福祉法人なども含みます。これらで使われる予算はほぼ日本の国家予算にあたるといわれます。NPOの10%が教会などの宗教機関ですから、その分の予算があるなら、かなりのお金が動くことになりますね。

――カリスマ牧師が運営するメガチャーチの存在感が大きいとのことですね。

メガチャーチは全米で1300以上あるといわれ、小さいものでも2000人、巨大なものだと1万~4万7千人が参加し、それが50軒ほどあるといわれます。この50軒ほどある巨大なメガチャーチの多くは、南部や中西部に集中しています。個々のメガチャーチの収支情報を入手するのは困難なので、細かい情報はわかりませんが、医療や福祉活動などにあてるには十分な予算といえるでしょう。

メガチャーチを含むこれらNPOは税制でも優遇されており、富裕層が寄付したお金をほとんどそのまま予算として使用することができます。寄付する側も、自らがその活動に賛同できる団体を選んで「喜んで」寄付することができます。その寄付金は徴税の対象外だからです。

トランプ自身は信仰心が篤いとは思えませんが、宗教票が大統領選にとって重要であることは、レーガン大統領選出の事例から知っています。支持を得るために「宗教的パフォーマンス」はつねに行ってきました。

大統領就任式に使用した聖書は、スコットランド系の長老派だった母から日曜学校を卒業したときに貰ったもので、それを予選のスピーチでしばしば手に持ったり引用したりしていました。引用を間違えたなどの笑い話もありますが。中絶に対しても厳しい態度で臨んでいます。

これらの選挙前の公約を実現すべく、トランプ政権はすでに動いており、大統領令などで一部の州(オハイオ州)では中絶が非合法化され、マイク・ペンスが推奨する同性愛者の更生プログラムなどについても議論されています。

――宗教票をまとめる上で、副大統領となったペンスの働きが大きかったようですね。

共和党の候補者たちが予選でトランプに敗北したことで、これら候補を支持していた宗教票がトランプに流れました。それを担ったのがマイク・ペンスでした。

彼はアイルランド系でカトリックとして育ちましたが、福音派の妻と知り合い結婚すると、ボーン・アゲインの福音派に改宗しました。改宗後もカトリック保守との繋がりは一部維持しており、そうした立場からカトリック保守票と福音派票をまとめ上げ、トランプに投票するように仕向けることに成功しました。

政治的には共和党主流派とのパイプ役でもあり、トランプとは対照的にもの静かで落ち着きがあり、トランプが逸脱発言をしてもペンスが修正役を演じているともいえるかもしれません。大統領本選直前のトランプの女性侮辱発言は、キリスト教保守の女性たちの怒りを買い、ペンスはトランプを叱責したそうです。

――それからバノンですね。

バノンもカトリック保守で、イスラム教徒入国禁止令は、欧米のキリスト教文明がイスラムによって脅かされているという考えからです。また最近「ジョソン修正案」を覆す意向も発表しました。

これは60年前にジョソン大統領が政教分離を推進しようとして、宗教団体にNPO法人のステイタスを与え、これによって徴税の対象外とし、その代わり宗教団体は政治的な活動に直接関与したり、政治団体に資金を提供したりできなくなった法律です。

これを廃止して、宗教団体が堂々と政治活動を行い、メガチャーチなど莫大な資金力を持つ宗教団体が、トランプに好都合な政治活動に資金提供できるとことになるかもしれません。つまり、政教分離の原則はいっそう後退して、政治と宗教が一体化しかねないともいえますね。

――他方で、トランプ政権ではイスラエルへの強い肩入れや、クシュナーやフリードマンといったユダヤ教正統派の重用など、ユダヤへの目配りも感じさせます。

上級顧問に起用されたジャレッド・クシュナーはイバンカ・トランプを、婚姻前にユダヤ教に改宗させたことからわかるように、かなりの信仰の篤い正統派ユダヤ教徒といえます。ユダヤ教は母系宗教で、普通女性(母)が非ユダヤ教徒の場合、男性(父)がユダヤ教徒でも、その子供はユダヤ教徒になりません。そのため、子供たちをユダヤ教徒にするために、女性(母)がユダヤ教徒である必要があったんですね。

また、駐イスラエル大使に指名されたデヴィッド・フリードマンもユダヤ教徒で、オバマを反ユダヤ主義者呼ばわりしていすます。ヨルダン川西岸地区のエルサレム隣接するユダヤ・サマリア地区(Judea Samaria)のイスラエルによる占領を、国連に承認されていないにもかかわらず、旧約聖書のヨシュア記に明記されるユダヤ王国の一部であったことから、この土地はユダヤ・キリスト教国家であるイスラエル国家の帰属であると発言しています。この地区がエルサレムに隣接していることから、イスラエルがエルサレムを首都にしたい思惑とも関わっていますね。

――そうしたなか、トランプ政権ではキリスト教シオニズムが強まっている印象をもちます。

アメリカはイスラエル建国以降、ほぼ一貫してこの国を熱心に支援してきましたが、オバマ大統領時代は、パレスティナ人の土地に容赦なく領土を拡大するイスラエルを阻止するよう働きかけたり、強硬派のネタニヤフ首相には批判的姿勢をもせたりしました。

トランプはそれを、オバマ以前のアメリカの対イスラエル支援政策に戻し、さらに以前にも増してイスラエル内の強硬派寄り政策を推進しようとしています。

イスラエル内やアメリカのユダヤ・ロビーには穏健派も存在し、彼らは戦闘回避のためにパレスティナとの和平に応じる用意もありますが、強硬派はパレスティナと徹底抗戦によってユダヤ国家イスラエルを守り、さらに拡大し、聖地エルサレムを首都として奪回する考えを持つなど、おっしゃるようにキリスト教シオニズム的思考がみて取れます。

これら強硬派は、過去のアラブ諸国との戦闘でイスラエルが勝利してきたのは、アメリカの支援もさることながら、イスラエルが神に守られ、神から祝福されているからだというキリスト教シオニズム思想を持ち、アメリカのユダヤ教正統派もこの考えを共有しているのです。

――そもそもキリスト教シオニズムとは、どのような思想なのでしょうか?

キリスト教シオニズムの歴史的起源はアメリカではなく、イギリスの中東支配時代にまでさかのぼります。大英帝国にとってインド支配は要で、中東はインドに行くルートとして重視され、ここに非公式支配を確立しました。

19世紀英国を代表する外相で首相も務めたパーマストン、彼の縁者であったアントニー・アシュレー・クーパーが英国の中東支配にあたって、「アラブ人の土地支配からユダヤ人の土地を、キリスト教徒が守るべき」という発想を持ちますが、ここからキリスト教シオニズムが出てきます。その考え方が、ユダヤ教からキリスト教に改宗したディズレーリ首相によって、現実味を帯びる外交政策として実行されていくのです。

この過程でキリスト教でも、ユダヤ人をキリスト教徒に改宗させる福音主義的な教派の布教活動と結びつき、エルサレムやその周辺の土地はユダヤ人だけでなく、キリスト教徒が帰還すべき「聖地」だとみなされるようになります。

この背景には、18世紀頃イギリスのピューリタン思想から出てきた千年王国論があります。これは聖書のヨハネの黙示録に書かれているもので、この世の終わりに救われるためには、古代イスラエル王国を復活させ、そこにまずユダヤ人を帰還させる。そうすることで、ユダヤ人の帰還を支援するキリスト教徒も救われ、やがてキリスト教徒も聖地エルサレムを目指すという考え方です。

この思想が20世紀になると、ドイツやイングランド経由でアメリカに渡り、とくに戦後1947年のイスラエル建国以降、アメリカのキリスト教福音派の多くはこのキリスト教シオニズムを熱狂的に支持します。これが今日のアメリカのイスラエル支持の外交政策に繋がっていくのです。

アメリカにおける「政治と宗教」

――これまでのお話を聞いていると、アメリカでは「政治と宗教」とが解きがたく絡み合っています。

合衆国憲法修正第1条で「政教分離」が謳われていますが、これはあくまで公的な原則であり、場合によっては矛盾を生み出すこともあります。

この憲法が起草されたのは18世紀ですので、この場合の宗教とはキリスト教の諸宗派を意味します。カトリックやプロテスタントの非主流派であるピューリタンが、英国で迫害されたり差別されていた時代でしたので、「信仰の自由」とは、キリスト教のどの宗派を信じていても迫害されてはならないことを意味し、イスラム教や仏教はもちろん、ユダヤ教やモルモン教すら含まれていませんでした。

こうした歴史と伝統を踏まえてか、アメリカではキリスト教徒以外の大統領が選出されたことはなく、キリスト教、とくにピューリタンが建国した国であることから、その宗教的理念が政治と不可分に結びついています。

――それが大統領選にも現れ、宗教票が選挙を左右するにいたるわけですね。

欧州の主要国ではプロテスタントかカトリックですが、長い歴史のなかで、とくに近代以降世俗化が進み、また建国の理念とキリスト教はそれほど強い結びつきを持ちません。それに対して、18世紀に建国され移民によって形成されたアメリカでは、国民の団結を図るためにもキリスト教を共通理念とし、その信仰に訴えることが国民の心を動かすので、選挙などの投票行動に現れるのです。

とくに小さい国家を唱える共和党支持者にとっては、国より教会が日々の生活に入り込んでいます。とりわけ福祉の領域でそれは顕著ですが、先ほどお話ししたように、福祉国家でないアメリカでは、国より教会がそれを担っているからです。

またアメリカのプロテスタント教会、とくに福音派は、現世的な傾向のあるカルヴァン派が多いことから、勤勉に働くことによってお金を稼ぐことは神への奉仕である、という考え方をもっています。これは旧約聖書の申命記一説に基づきます。プロテスタントでもルター派は基本的に新約聖書を重視することから、旧約聖書を引用するカルヴァン派は特徴的です。

このようにアメリカではキリスト教が人びとの生活に密着し、資本主義の発展にも寄与してきたことから政教分離は難しく、大統領を選ぶときもその信仰が注目され、大統領就任式では聖書に手を置いて宣誓し、歴代の大統領はリンカーンの使用した聖書を使ってきました。

そのため、有権者にとって宗教は重要な争点であることを意識し、たとえ大統領候補本人が敬虔なクリスチャンでなかったとしても、そうであるかのようなパフォーマンスで、宗教票を集め選挙で勝利する可能性を高める努力をします。ただし共和党が宗教票を意識的に集め支持基盤としたのは、1980年のレーガン大統領選出以降です。

――そうしたなか、最大の浮動票のカトリックを制する者が、大統領選で勝利するといわれます。今回もトランプがカトリック票において、ヒラリーを上回りました。

 

過去三回の大統領選挙でのカトリックの投票行動を、ピュー・リサーチセンターの統計でみてみましょう。2004年のブッシュVSケリーでは、ケリーがカトリックであるにもかかわらず、ブッシュ52%、ケリー47%で、カトリック票を多く集めたブッシュが政権を取っています。ちなみに内訳を人種別でみると、白人カトリックはブッシュ56%、ケリー43%、これをヒスパニックでみるとブッシュ33%で、ケリー65%と逆転されます。

次に2008年のマケインVSオバマでみると、全体だとマケイン45%でオバマ54%、白人カトリックはマケイン52%で、オバマの47%を逆転し、これをヒスパニックでみるとマケイン26%で、オバマ72%と大差です。白人カトリックが共和党に多く入れているにもかかわらず、ヒスパニックのおかげでカトリック全体ではオバマが優る結果となりました。

2012年のロムニーVSオバマは、ロムニーはモルモン教徒ですが、ロムニー48%でオバマ50%、白人カトリックはロムニー59%でオバマ40%、ヒスパニックのカトリックだと、ロムニー21%でオバマ75%と、またしても大差です。

そして今回のトランプVSクリントンだと、トランプ52%でクリントン45%、白人カトリックだとトランプ60%でクリントン27%、ヒスパニックだとトランプ26%でヒラリー67%という統計があります。

合計数でカトリック票を多数、獲得した方が大統領に選出されていることから、カトリックを制する者が勝利するといえると思います。また、カトリックは共和党支持の保守と民主党支持のリベラルに分かれており、カトリックのケリーがブッシュに負けたことから、候補者次第でどちらにも転ぶという点では浮動票だといえるでしょう。

――現在、カトリックの40%がヒスパニックです。ヒスパニックが今後増えていくなかで、カトリック票と政治との関係はこれからどのようになっていくのでしょうか?

白人カトリックは共和党に、ヒスパニックのカトリックは民主党に入れる傾向が強いのですが、合計数では2004年と2016年では共和党が多数派になっています。そうしたなか、カトリックの40%がヒスパニックであることから、その影響は大きいといえます。

さらに年々、とくに南部でその人口が増加し、テキサスのような保守の牙城でもヒスパニックの流入が顕著なことから、彼らの投票行動を配慮した政策が求められると思います。

ちなみに、トランプの「メキシコとの壁発言」はヒスパニック全員を敵に回したわけではなく、違法移民の排除にはむしろ賛成の合法移民のヒスパニック系は、逆に「強いアメリカ」や「雇用増大のアメリカ」を信じていることから、トランプを支持しているともいわれます。

またあわせて注意しなくてはならないのは、ヒスパニックがカトリックとはかぎらず、近年は福音派に改宗しメガチャーチに通う者も増大傾向にあることです。著書を書くために調査したカルフォニア州オレンジ郡のメガチャーチでも、そうした人たちと多く出会いました。彼らのあいだではペンテコステ派という福音派がとくに人気があり、メガチャーチを運営し、もっとも信者数を増やしている教派ともいわれることから、共和党が票田として狙っています。

――福音派については、ABCニュースの出口調査によると、福音派の白人の81%がトランプに投票しており、過去3回の米大統領選で共和党候補者が獲得した以上の福音派票でした。トランプのエスタブリッシュメント攻撃が、福音派票を集めるのに利したのでしょうか?

そういえると思います。プロテスタントはもともと、権威主義的なカトリックに対抗して出てきた宗教なのですが、主流派のアメリカ聖教会などでは歴史的な経緯で、一定のヒエラルキー制度が確立されました。それに対して、非主流派として発展してきた福音派は、誰にもいつでも神が降りてきてボーン・アゲインすることで牧師になれる、徹底した平等主義の民衆のためのキリスト教の教えです。そういう意味では、知性より感情を露わにした熱狂が先行するので反知性主義的だといえます。

そして、トランプは反エスタブリッシュメントとして、典型的な反知性主義でポピュリスト的だといえます。ただ、福音派にかぎらずアメリカでは、知性=権威主義・エリートとする考え方が歴史的に根強くあり、トランプはそういう意味で反権威・エリート=反知性主義として有権者からの支持を得た大統領です。

反知性主義が攻撃する相手は「知性」ともいえるエスタブリッシュメントの学者やジャーナリストであり、ご存知のようにCNNやニューヨークタイムズを始めとする主要メディアをトランプが攻撃するのもそのためです。

――トランプは大統領になったら穏健化するのではないかといわれましたが、エスタブリッシュメント攻撃はやみませんね。

21世紀以降、グローバル化から取り残された民衆のなかでも、とくに失業や貧困に陥っている層から、トランプは熱狂的な支持を得ています。これら「民衆」がインターネットの普及によって、ツィッターなどを通じて政治的発言権を得て、エスタブリッシュメントを批判していることから、トランプも同じ手段によって大統領という地位に就いてからも、エスタブリッシュメントを攻撃しつづけるのです。

ただし、こうした傾向はトランプが始めたわけではなく、先にお話しした65年のバックリーによる草の根運動としての保守主義の浸透や、2009年から盛んになったティーパーティー運動にも類似性を見ることができます。英国のEU離脱を決めた国民投票は直接選挙であり、トランプはこれを称賛していることから、それは直接民主主義への希求ともいえるかもしれませんね。

松本佐保国際政治史

名古屋市立大学人文社会学部教授。慶応義塾大学大学院修士課程修了、英国ウォーリック大学大学院博士号(PhD)。専攻は国際政治史、主に英米、イタリア、バチカンの政治・外交・文化史の観点から近現代の国際関係を読み解く作業を続けている。著書に米大統領選をキリスト教の視点から見た『熱狂する「神の国」アメリカ』文春新書2016、バチカン秘密文書を発掘した『バチカン近現代史』中公新書2013、その他日本語及び英語による著書、共著書や論文多数。


出発点は「一人一人の人間の変革」

2024年09月06日 08時14分21秒 | その気になる言葉

▼教育の道は、永遠なる開拓である。

世に不幸がある限り、教育開拓のクワを振るう手を絶対に休めてはならない。

人間の一生は、あまりにも短い。

その人間が未来のためになせる最も尊い作業は、次代を創造する人を育て、人を残すことである。

▼教育は、人間の栄光の証しである。

人生は、「自分はこうしよう」と決めて努力することだ。

堕落するか、向上するかの分かれ道が、そこにある。

教育は、幸福になるため、人生に勝つため、人生の栄光のためにある。

では、学生が、幸福になるためには、どうしたらいいのか。

教員自身が学生の<良き友>となり、共に学問と価値創造の道を探究していくことだ。

▼今、世界で起こる出来事を<わがこと>として捉え行動する。

そのために、大学が新しい知識や物の見方を提供する。

そして、決して忘れてはならないのが、世界の諸問題の解決といっても、出発点は「一人一人の人間の変革」である。

 

 


悲しみは優しさになる

2024年09月06日 07時41分29秒 | その気になる言葉

▼レジリエンスとは、つらい出来事があったとしても、しなやかに対応して生き延びる力。

震災のような大変なことが起きたとき希望を失わず立ち直る。

そのように立ち直る力がレジリエンスである。

では、どう自身を鍛えるのか、それは「感謝」である。

生きていることへの感謝。

励ましてくれた人への感謝である。

▼苦労は力となる。

悩みは智慧になる。

悲しみは優しさになる。

一番苦しんだ人が、一番幸せになるべきだ。

▼「人のつながり」にこそ、未来がある。

人のために灯をともせば、自分の前も明るくなる。

善のつながりを、社会・世界に広げるのである。

▼ここ一番の時には、絶対に負けてはならない。

思い切り戦うことだ。

絶対勝利への一念が大切だ。

そして、自身の使命を自覚することだ。

 


創作 あの頃の自分 12)

2024年09月06日 00時46分33秒 | 創作欄

タイピストの岡村美登里が、取材記者の山崎瑞奈に反目する。

あの時代は、取材した記事をまとめ、電話で送稿することもあった。

勇作が勤務する企業では週刊新聞と日刊通信を発行していて、瑞奈は、当時の厚生省で記者会見をした中ピ連の記事を記者クラブから電話で送くろうとていた。

ところが、電話を受けた美登里は、「社内に戻って記事にしたら」と言うのだ。

「それでは、2時の締め切りに間に合わないわ」瑞奈は口を尖らせる。

「明日でも、いんじゃないの。そんな特ダネなの」と美登里は言うと電話を一方的に切ったのだ。

電話をかけ直した瑞奈は、社内に居た勇作に電話で記事を送稿する。

だが、その記事をタイプに打つことを美登里は拒絶したのだ。

仕方なく勇作は、もう一人のタイピストに、印字をお願いすることとなった。

もう一人のタイピストの大木友恵は、勇作の先輩でさる水島翔太と恋愛関係にあったので引く受けてくれた。

その後、瑞奈と美登里の女同士のこれまでにない反目は、社内に少なからず影響を及ぼす発端となる。

 

中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合)とは、1970年代前半に活動した日本のウーマンリブ団体である。中ピ連(ちゅうピれん)の略称で知られた

代表は元薬事評論家の榎美沙子

新左翼のものを模した、♀印のついたピンク色ヘルメットと過激な活動内容でマスメディアを賑わせたが、だんだんと活動が下火になって解散となった

沿革

1972年昭和47年)6月18日結成

当時日本では、経口避妊薬(ピル)が薬事法で規制され、厚生省医療用医薬品に認められていなかったので、これを女性への抑圧と解釈することにより、ピルの販売自由化要求運動を展開した

1974年(昭和49年)から、有志で下部組織「女を泣き寝入りさせない会」を結成し、家庭内暴力を振るう夫などの職場にマスコミを連れてデモ活動に出かけるという抗議活動を行った

人工妊娠中絶の制限を主張し、国会優生保護法[注 1]改正を提案していた自由民主党参議院議員玉置和郎と当時その秘書だった村上正邦(後に自民党参議院議員)に対し「優生保護法改悪反対運動」として、街頭で玉置・村上を取り囲んで、もみくちゃにしたり、玉置・村上の自宅や、参議院議員会館に押しかけたりした

その後、マスコミを利用する派手な活動形態や、政党・宗教団体の結成など実現可能性の低いアイディアを提案して、それがうまくいかないことに反発を覚える会員が増加し、だんだんと活動が下火になっていった

榎はその後中ピ連を母体とし、中ピ連の活動精神を継承する形で「日本女性党」を結党。

「内閣はすべて女性とする」「公務員はすべて女性とし、男性は臨時職員かアルバイトとする」など、女性主義的な政策を掲げた。

そして1977年(昭和52年)6月の第11回参議院選挙で、地方区全国区に10名の候補者を擁立して確認団体として国政の場への進出を図った。

結果は全候補者が落選、それも全員が有効投票総数に対して一定の得票数に達せず、供託金没収となった。

中ピ連と日本女性党は2日後に解散した。