新庄トライアウトで記者席から「マジかよ!」 報道陣ざわめきも「申し訳ない」と反省のワケ

2020年12月09日 03時54分12秒 | 野球

川口穣2020.12.8 11:47AERA

打球音やグラブにボールが吸い込まれる音、投手が投球時に漏らす声、そして「パパ頑張って!」という子どもの声援がいつも以上に大きく響く――。

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 今オフに戦力外通告を受けた選手や現役復帰を目指す選手らが参加するプロ野球12球団合同トライアウトが7日、神宮球場で行われ、投手33選手、野手24選手の計57名が参加した。

 合同トライアウトは例年、プロ野球ファンにも公開され、数千人の観客が詰めかける。応援する選手のプロ復帰を願いながらも、どこか「引退試合」のような雰囲気に包まれることもあった。一方、今年は新型コロナウイルスの影響で非公開。球場近くに集まるファンの姿も見られたが、スタンドからはスカウトや家族ら関係者と報道陣だけが見守るなかでの開催となった。

 例年とは全く違う雰囲気のなかで猛アピールしたのが、北海道日本ハムファイターズを自由契約になった左腕・宮台康平(25)だ。この日は堀内汰門(24、前ソフトバンク)、小山翔平(24、前巨人)、中村和希(25、前楽天)と対戦し、三者三振に切って取った(投球はいずれも1ボール1ストライクから開始)。

■慣れ親しんだ球場で奮起

 宮台は東京大学出身選手として松家卓弘(横浜、日本ハム)以来13年ぶりにドラフト指名を受け、18年に日本ハム入団。19年には2軍で4勝を挙げたものの、今シーズンは2軍で防御率7.71と苦戦し、戦力外となった。

 この日会場となった神宮球場は、宮台が大学時代に慣れ親しんだ球場だ。記者は東京六大学時代の宮台を神宮で観戦したことがあるが、そのころの躍動感あふれるフォームとマウンドさばきをよく覚えている。

 学生時代の最速は150キロ。この日の最速は144キロにとどまったが、のびのびとした投げっぷりはそのままで、低めにコントロールされた直球の球威はバックネット裏2階の記者席から見ても充分に伝わってきた。変化球も圧巻だった。堀内に対しては130キロのチェンジアップ、中村に対しては外へ逃げる低めのスライダーを振らせ、いずれも空振り三振。宮台は自身のアピールポイントに「140キロ台中盤のストレートと、チェンジアップ、スライダーのコンビネーション」を挙げるが、その強みを存分にアピールしたマウンドだった。

 この日は2018年のセ・リーグ最優秀中継ぎ投手、近藤一樹(37、前ヤクルト、37)も参加。加藤脩平(21、前巨人)を空振り三振、飛雄馬(29、前DeNA)を右飛、中村和希を空振り三振に仕留めてアピールした。

 インターネットテレビで中継を見守ったヤクルトファンの女性(25)は、「まだまだ投げられると思う。スワローズからいなくなってしまうのはさみしいけれど、ぜひ再契約を勝ち取ってほしい」と期待した。

■帰ってきた「新庄劇場」

 また、この日最も注目を集めたのが2006年に引退して以来のプロ復帰を目指す新庄剛志(48)。守備では一塁、二塁、三塁、センターを守り、守備機会はなかったもののシートノックやボール回しでは軽快な動きを見せた。

 その一挙手一投足を多くの記者が追いかける。新庄が記者席から見えにくい位置に移動すると、離れた場所にいるカメラマンに無線を使って「いま、新庄さん何してる?」逐一と確認する記者もいた。

 なかでも、記者席がざわめいたのがシート打撃の4打席目。日隈ジュリアス(23、前ヤクルト)からレフト前ヒットを放つと「マジかよ」という驚きの声が方々から上がった。

 新庄はトライアウト後の取材で、「打席に立ったときに“うわ! 野球やってる”っていう気持ちになれたね。この1年間は自分に勝てた気がする。こんなに野球の練習したことなかったから」と話した。

■新庄「申し訳ない」の真意

 また、レフト前へのタイムリーについては「ランナーがいてくれて、アドレナリンが出てボールがよく見えた。止まってたんじゃないかというくらい」としつつ、こう反省した。

「申し訳なかったのは、タイムリー打った後に手を上げてしまったこと。ピッチャーの方に本当に申し訳ない」

 戦力外通告を受ける選手の再挑戦の機会を均等化するためにに始まった合同トライアウト。例年50~70人程度の選手が参加するが、再びプロ野球選手としてグラウンドに立てるのはごくわずかだ。かつては10人を超える選手がプロ再契約を勝ち取った年もあったが、ここ数年は2~3人程度にとどまる。果たして、今年は何人の選手が再びプロ球団のユニフォームに袖を通せるか。(編集部・川口穣)

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