みつとみ俊郎のダイアリー

音楽家みつとみ俊郎の日記です。伊豆高原の自宅で、脳出血で半身麻痺の妻の介護をしながら暮らしています。

I have a dream

2008-09-26 21:59:03 | Weblog
というフレーズは、60年代黒人公民権運動家のマルティン・ルーサー・キング牧師が演説で繰り返し繰り返し使っていたことばだ。
私はこの演説の入ったアナログ・レコードを大学時代に知り合いの牧師さんからいただいてこの演説を暗記するぐらい何度も聞いた。「dream」ということばに敏感に反応したからだ。
イギリスの小説家ルイス・キャロルの有名なお話に『不思議の国のアリス』というのがあるが、この小説の一番最後のページにこんなフレーズが書かれている。
「Life, what is it, but a dream?」。つまり、「夢のない人生なんて何の意味があるのか?」ということばだ。このフレーズにも私はとても敏感に反応して(今現在も反応し続けて)今も「見果てぬ夢」を追い続けている。ある意味、今の私を作ったのはこの2つの「dream」に関するフレーズかもしれない。
 昨日たまたまTVにスイッチを入れたら久しぶりにバーブラ・ストレイザンドが写っているのに驚きそのままずっと見入ってしまった。もちろん、地上波ではない。今の地上波に見る値する番組はほとんどないが、BSでやっていたアメリカのアクターズ・スタジオの番組。有名な役者さんたちに映画評論家のジェームズ・リプトンがインタビューするという番組で、この番組を知っている人も多いはずだ。この番組を見るたびに、アメリカには映画文化やきちんとした「文化」が存在しているんだナ実感するのだが、バーブラ・ストレイザンドが登場していたので私は大興奮しながら見ていた。
なにしろ、私が本当のディーバだと思っている歌手は、このバーブラとジャニス・ジョプリン、そしてマリア・カラスしかいないので、この3人に関する番組が少しでもあるとかなり興奮してしまう。
私がこの3人を特別視するのには理由がある。この3人、けっして美声ではない。けっしてきれいな声ではないのに、彼女たちの歌には本当の意味での説得力がある。あまり知られていないがバーブラ・ストレイザンドがクラシックの歌曲ばかりを歌ったアルバムがある。別に企画ものでもないしアレンジものでもない。ひたすら真面目にクラシックの楽曲を歌っている。このアルバム、私の中では本当に最高のアルバムのうちの一つになっている。ジャニスの『パール』とほとんど変わらないぐらいの珠玉の価値を持っている。フォーレの『夢の後に』など、バーブラの歌を聞いた後に、普通のクラシックの歌手の歌っている同じ曲を聞くと、「フォーレを本当に理解しているのはバーブラだけなんじゃないのかナ?」とさえ思えてくる。それぐらい彼女の歌には説得力がある。音楽の説得力というのは、音や技術だけではないということのいい見本かもしれない(ヴィラロボスの名曲『ブラジル風バッハ第5番』のヴォカリーズも、どんなに技巧や声に長けたクラシックの歌手が歌ったものよりもジョン・バエズの歌が最高としか思えないのと同様だ)。
それぐらい、バーブラの歌は素晴らしいし、演技も素晴らしい。シェールにしても、ベット・ミドラーにしても、歌のうまい人は演技もうまい。要は表現力なのだからこれって「当たり前」の話しなのだが、それが「当たり前」のようにできる人はそれほど多くない。
この番組の最後に、ゲーテのことばを引用してバ-ブラが言っていた。
「何かをやろうと決めた時、世界は自分の味方になる」。
人というのは「夢を持ってやり続けなければ」誰も味方につけることはできないのだと、バーブラのことばを聞いて改めて思った次第だ。

キッチンライブ

2008-09-10 20:12:20 | Weblog
が一週間後に迫っているけれども、今回のライブで「キッチンライブ」というスタイルに一応の終止符をうとうと思う。
サザンではないけれど、「無期限キッチンライブ休止」宣言といったところだ。

このライブスタイルを始めた時は、新しい料理を考えることにも作ることにも一生懸命だったし、もちろん演奏にも一生懸命だったので、一回このライブをやるとあまりの疲労困ぱいに、頭の中が真っ白。演奏後に会う人たちの名前がまったく思い出せないぐらいがしょっちゅうだった。なにしろ名前と顔が一致しないどころではない。目の前にいる「見慣れた顔」の名前という記号へ結ばれるはずの回路がまったく遮断されてしまい、人間には名前という記号があることすら思い出せないようなかなりヤバイ状態。
まあ、こんな状態で始めたキッチンライブもだんだん年数と回数を重ねてくるとまた別の苦しさというのも出てきた。それは、常に新しいレシピを考案していかなければならないというプレッシャー。別に、同じものを何度でも出せばいいじゃないと言う人もいたけど、毎回皆勤賞で来てくれるお客さんもいるのにそんなわけにはいかない。
当初は、季節ごとに旬の素材を使って...というコンセプトで始めたわけなのだけれども、だんだん「季節ごと」という約束が守れないぐらい他の仕事も忙しくなり、レシピのプレッシャーも増してきたためにここらで終止符というのが、ある意味本音かもしれない。
しばらくは、料理と音楽を切り離して(どちらも人を幸せにしてくれるものなのだから)それぞれの幸せを単純に楽しんでいこうと思う。

これまでキッチンライブのレシピは終わった後にHPに掲載していたけれど、初めて事前に内容を教えてしまおうと思う(だから何だ?と言われればそれっきりですが...)。

最初が私の得意中の得意のパイ(お菓子のパイでは有りません。要するにキッシュの仲間だと思ってください)。パイの中身はサケ、シメジ、長ネギ、松の実をベシャメルソース(ホワイトソース)であえたものです。
その次に来るのがカブ、ズキーニ、レンコン、ナスを薄く輪切りにしたものをオリーブオイルでソテーしたものとトマトとモッツァレラチーズをあえて、その上にバルサミコベースのソースをかけたもの。
そして、3番目が自分で手打ちするホウレンソウパスタのペペロンチーノにデミグラ系の特製ソースをあえたスパゲティ。
メインが、豚バラ肉をオレンジソースであえたもの(お客さまにベジテリアンの方がいらっしゃるのでその方には肉以外の別メニューを用意している)。
デザートは、ラム酒のきいたブリオッシュ(試作品はかなりラム酒が効いていてかなり「大人の味」だったけれど、多分本番メニューでは少し「大人」部分はおさえられているはず=でも、ヨーロッパでこの手のケーキを食べると本当に酔ってしまうぐらい酒は効いているんだけどナ...)。
という感じのメニューでかなりオイシイです(自分で言うのも何ですが、料理に関しては「手前味噌」が一番だと思ってます)。
料理の話しばかりで肝心の音楽の話しはまったくしていないと思われるでしょうが、音楽はまあ聴いてくだされば「気持よくなる」ことだけは保証いたします(自分が聴いていて気持よくない演奏は絶対しないように何十年と心掛けてきましたから)。

以上、今回のキッチンライブについての説明ですが、このライブを閉じるにあたっての挨拶代わりとしてお聞きいただけたならば幸いです。