私は、なんでも歌にするクセがある。
このクセ、今に始まったことではなく、多分若い頃から「気がついたらそうなっていた」という感じ。
だから、家の中で一人ミュージカルをやっているようだと感じる時もある(そういう人も世の中にはけっこういるかもしれない)。
もちろん、歌うのは私だけで恵子は絶対に歌わない(彼女も歌ったら本気でミュージカルになってしまうので、これもちょっとヤバい)。
恵子が「郵便屋さん来たよ。見てきて」と言えば(彼女は車椅子なのですぐには見に行けない)「ゆうびんやさん、ゆうびんやさん、もう来たの?…」なんて勝手な歌詞を即興で作り、歌いながらいそいそと郵便受けをチェックしに行く。
メロディもほとんど即興だけれども、その時の気分で(というか、即興で作った歌詞の語呂で)既存の曲の替え歌になったりする時もある(童謡や歌謡曲、ポップスだけでなく、自分が練習してきたクラシックのフレーズだったりする時もあるから恐ろしい)。
でも、たいていは私が子供番組をやっていた時に作ったような簡単なフレーズで歌うのでひょっとしたら子供には受けるかもしれない(笑)。
これは、もう一種のクセなので「気がつくと(無意識に)やっている」としか言いようがない。
洗濯物を洗濯機に入れる時もそうだし、台所で野菜の皮をむいたり切ったりしている時も何かしら口ずさんでいる(別にハナ歌を普通に歌っているわけではなく、自分がしている行為を歌にしているのだから「ミュージカル」、なのだ)。
(人が見たら)さぞ楽しそうにも見えるかもしれないが、これを近くでいつもやられている相手にとってはけっこう「ウルサイ」はずだ(迷惑かも?)。
もちろん聞かされる相手は恵子だけで、誰か他に人がいる時にやったことはない(ということは、完全に無意識というわけでもないようダ…)。
恵子が病気になる前は、時に「うるさいからヤメなよ」と言われた(まあ、あまり文句を言うタイプの人ではないのだが)。
でも、病気になってからは(彼女のテンションがちょっと落ちたせいか)あまり叱られることもない。
(無反応というのも)ちょっと寂しいナ… と思い、「歌だけじゃあ受けないんだったら…」と最近は踊りも加えるようになってきた(別に受けようと思ってやっているわけではないのだが)。
とはいっても、そんなにダンスに自信があるわけではないので、他人から見るときっと滑稽なパフォーマンスに見えるはず。
というか、わざとこっけいなフリをつけている時もある。
さすがに恵子も「なにやってんのよ」と笑う。
彼女のリハビリ訓練のためにいろいろなリズムパターンで歩く練習や手を動かす訓練をしている時も意図的に歌う(こちらは、「1、2、1、2」といった単なるリズムパターンにフレーズをつけて歌っているだけなのだが)。
病院やいろいろな場所で療法士さんたちのリハビリ訓練を数限りなく見てきたが、ほとんどの療法士さんたちも患者さんのためにリズムだけは取っているものの、歌っている人を見たことがない(「歌えば良いのに」といつも思うが…そういう療法士さんが実際いないのはナゼ?)。
恵子のリハビリの日課の一つとして「足湯」訓練を行っている。
夜、彼女の就寝前、彼女が風呂場に行くのではなく、私が風呂場から温泉を大きな容器にためてベッド脇まで持っていく(うちのお風呂は温泉を引いている)。
彼女の足をほぐして動きを促すリハビリなので、「グー,チョキ、パー、ホイ」とか言って彼女が足の指をリズミカルに開けるようこれまた即興のリハビリソングを歌う。
毎日がけっこう「ミュージカル」(なのダ)。