今日の「お気に入り」は、「推敲」という言葉の由来。
「 昔、唐の詩人、賈東(かとう)が、
鳥宿池辺樹 鳥は宿る池辺の樹
僧敲月下門 僧(そう)は敲(たた)く月下の門
という句を考えついた。はじめは『僧は推す』としたのを、再考、『僧は敲く』に
改めた。しかし、なお、どちらがよいか判断がつかず、馬上で『推』したり『敲』
いたりして考えにふけるうちに、大詩人、韓退之(かんたいし)の行列につき当り、
とがめられた。一部始終を打ち明けたところ、韓退之はこれに感じ、ともに考えて、
『敲』がよい、といったという故事による。
賈島は鞍上、まさに夢中だったのである。さめた頭で考える必要もあるが、とき
には、こういう無我夢中で考えることもなくてはならない。 」
(外山滋比古著 「思考の整理学」 ちくま文庫 所収)