「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

おせち料理 Long Good-bye 2023・12・10

2023-12-10 05:59:00 | Weblog

 

 今日の「 お気に入り 」は 、沢村貞子さん ( 1908 - 1996 ) のエッセイ  ( 1908年は 、明治41年 )  

 「 わたしの献立日記 」( 中公文庫 ) から 「 お正月 」と題した小文の一節

    備忘のため 、抜き書き 。

    引用はじめ 。

 「 ・・・ 四十二年から書き始めた献立日記は毎年 、暮の三十日  ( 四十二年は昭和 、1967年のこと  )

  からお正月五日までは空白 ―― ただ 、『 旅行 』となっている 。

   一年中 、台所に立っている女の人にとって割烹旅館のお正月は 、

  なんとも楽しい 。朝 、ゆっくり起きてお風呂へはいり 、きれ

  いに掃除された部屋に坐れば 、上げ膳 、据え膳 ―― 目出たく

  凝った山海の珍味が目の前にスッと出てくるのだから ・・・ な

  んとも らくちん 。 」

  ( 中 略 )

 「 ・・・ 俳優にとって 、暮からお正月は 身体がいくつあっても

  足りない書き入れどき ―― 脇役もそれなりに 、あれこれ仕事

  がはいってきて 、休みをとるのはむずかしかった 。( 十二月三

  十日から一月五日いっぱい 、一切仕事をしないことにしよう )

   自分でそう決めたのは 、二十五、六年前のことだった 。その頃

  は夫婦とも 、ただもう仕事に追いまくられ 、ゆっくり話をする

  暇もなくて ・・・ これが 、人間の暮らしと言えるかしら 、と

  フト溜息が出たりした 。考えたあげく 、家人のスケジュールに

  あわせて 、私も正月休みをとることにした 。芸能界で仕事を断

  るのは 、頼むよりもむずかしいことはわかっていた 。格別 、ど

  うということもない脇役のわがままな願いに対して ・・・ かなり 、

  風当りがきつかった 。でも ―― それを通した 。連続ドラマでも 、

  松の内 休めないものは 、初めからおろしてもらった 。この世界

  に大切と言われる つきあい も欠くことにした 。

   ある巨匠のお宅では お正月早々に大ぜいのスタッフが集まって華

  やかな宴を張るのが吉例になっていた 。ある年 、その先生から 、

  初めて大役をいただいた私は 、翌年のその日 、必ず来るように 、

  とプロデューサー達から再三注意されたけれど ―― 失礼した 。

   私たちのお正月を大切にしたかったから ・・・ 。そのせいだけと

  は思わないけれど 、巨匠からは二度とお声がかからなかった 。約   ( 周りの 忖度だな !? )

  束ごとの多い世界で 、自分の好きな生き方をする以上 、そのくら

  いのことがあるのは当り前である

                ( ´_ゝ`)

   献立日記十冊目 ( 四十九年 ) 元旦に 、初めて簡単なおせち料理が ( 四十九年は 昭和 。1974 年のこと 。)

  書いてある 。つまり 、この年から 、私たちはわが家で新年を迎え

  るようになったということ 。相変らず 、正月休みはつづけている

  ものの 、折角の旅行が面倒になってきた 、というわけである 。

   十二冊目 ( 五十年 ) のおせち料理が細かく丁寧に書いてあるのは 、

  腰を据えてわが家のお正月を楽しむようになったしるしだろうか 。

  以後 、毎年の料理の欄を 、嬉しそうに赤い線で囲んだりしている

  けれど 、中味は同じようなもの ―― 昔人間が松の内 欲しいと思う

  ものは永い間の経験で 、おおよそ決まっているらしい 。

   二十一冊目 ( 五十七年 ) のおせちの品数が多少ふえているのは 、 ( 五十七年は 昭和 。1982 年のこと 。) 

  年明け早々 、親しい人たちが揃って年賀に見えたから ―― とその

  年の日記に書いてある 。

  一の重

   〇七色なます ―― にんじん 、大根 、椎茸 、きゅうり 、油揚げ 、

    しらたき 、黒ゴマ

   〇黒豆ふくめ煮

   〇いくらのきんかん詰め

  二の重

   〇紅白かまぼこ

   〇伊達まき

   〇かずのこ

   〇くわいのうま煮

   〇蓮根の白煮

   〇たたきごぼう

   〇椎茸のうま煮

   〇栗の渋皮煮

   〇昆布巻き

  三の重

   〇ふきよせ ―― 八つ頭 、にんじん 、こんにゃく 、鶏肉 、焼

    豆腐 、さやえんどう

  ほかに用意した生ものは 、

   〇まぐろ 、ひらめ 、牛肉

  主婦は大忙しだった 。

  お互いの思い出話もさかなになって 、とても楽しかったが 、そう

  いう集まりがつづいたのは五年ほどだった 。料理人がくたびれた 。

  二十九冊目 ( 六十三年 ) のおせちの欄には ( 今年から簡単にする )  ( 六十三年も 昭和 。1988 年のこと 。)

  と言い訳が書かれ ―― 品数もぐっと減っている 。それでも 、な

  にかしらととのえようとするのは 、老女にとって 、やっぱりお正

  月は格別の日 ・・・ 生きてゆく上の 、一つの折り目 、切れ目

  ような気がするからである 。」

   引用おわり 。

   ( ´_ゝ`)

   令和6年の正月は 、なぜか 、これまで作ったことも 食べたことも

  ない 、「 七色なます 」と 「 イクラのきんかんづめ 」をつくって 、

  迎えてみましょうか ・・・ 。

   そう言えば 、昔は 、家人と 共同で 、おせち料理をつくってたなあ 。

   もちろん 出来合いのもの 手作りのもの 取り交ぜて 。

   今じゃ すっかり 通販生活 。

   Am〇zon なけりゃ 夜も日も明けぬ 。

   ♪ おカネをちょーだい  (^^♪ 、どなたの歌でしたっけ 。

   (* ̄- ̄)

   歳末の土曜日 、自転車を駆って 、繁華街にある しにせ 眼鏡店に出

  かけた 。常用している 老眼鏡 のスペアを 誂えようと思ってのこと 。

   駅前の大通りの 、江ノ電高架下に設けられた 細長い駐輪場に駐輪し

  ようと思ったが 、事前登録制度になっているらしく 、振りの客は利

  用できない様子 。仕方ないので 、近くのコンビニに自転車を仮り置

  きして 、眼鏡店を覗いてみることにした 。

   ようやく店に着くと 、驚いたことに 、店内は こどもや付き添いの親 

  その他 老若男女で 大賑わい の順番待ち 。

   世の中 、難聴者だけでなく 、難視者が増えている様子 。スマホのせい

  だな 、きっと 。21世紀半ばの世の中は 、難視者でいっぱい ・・・ ?

   早々に退散して 、平日に出直すことにした 。

   あたたかい師走の晴れた空の下 、久々の長距離サイクリングで運動には

  なった 、電動アシスト車ではあるけれど 。

   月給取りやめてから20年 、はやくやめてよかった と思う一日だった 。 

  ( ´_ゝ`) フー 。

   筆者が勤め人だった頃 、あいつより先には死にたくないと思う 、うまの

  合わないひとが何人かいた 。相手もそう思っているに違いない 。

  今は 忘却の 彼方に ・・・ 。

   明日をも知れぬ命だけれど 、気分だけでも 、もう二十年生きる気で 。

  

  

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