
「半年以上かけてわずか二週間のいのち」
どの作物かお分かりになるだろうか。
11月に種まきをして、苗を植え付け、
冬の間は小苗でじーっと寒い冬をやり過ごし春を待つ。
春の到来を待ち構えていたかのようにある時期からぐんぐん大きくなり、や
がて白い花を咲かせる。
まだ若いうちは《すんなりホッソリさん》。
一般的にスーパーでお目にかかるのはこのくらいのもの。
ぺっちゃんこではいいとこひとつもなし!
このくらいのものでは青臭く有機栽培のものでも美味しいとは言えない代物だ。
《ぷっくり太っちょさん》が採り頃で食べ頃。
時期的にこの頃から虫が多くなり始めキズ果が出だす。
もっとも、無傷のものがあるのが奇跡的なくらいで、
そんな優等生を摘み取る時、私にはその子が光って見える。
そんな優等生に会えるのもせいぜい一週間といったところだ。
日に日にキズ果が多くなり、虫取りしたとしても葉っぱはボロボロになっていく。
そしてこれも例年のことだがちょうど二週間で
出荷に耐えうるものは(B品でさえ)無くなる。
二週間のいのちなのだ。
有機栽培で露地栽培ならば、長きにわたっての収穫は不可能である。
しかし年に一度のお楽しみなのだ。
この時期ならではの唯一生食でも食べられる豆
といったら・・・そう、スナップエンドウのこと。
加熱してお塩パラリの旨さ甘さといったら格別だ。
最期は虫に吸われるわ、食われるわで
《見るも無残なガザガザさん》になり一生を終える。
今年は5月2週目限定で出品リストに載せてもらったが、
見事に時期ぴったりでお届け出来た。
そして、おなじみの顧客の方々や身内で初夏の味を堪能している。
うちでは変わったものは栽培していない。
どれも皆おなじみの野菜がほとんどだ。
でもどうだろう。
いつも食べているおなじみの野菜が「これなんだ~?!」ということになった時、
人の価値観は強烈に変わると思っている。
そういう野菜の『絶対的エース』しか人の心を打つことはできない。
そんなふうに思い日々やっている。
※ この記事は、NPO法人土といのち『お便り・お知らせ』2017年6月号より転載しました。