高知発 NPO法人 土といのち

1977年7月に高知県でうまれた「高知土と生命(いのち)を守る会」を母体にした、47年の歴史をもつ共同購入の会です。

第2回「学生と考える記憶の記録と継承」

2021-09-12 09:00:00 | 連載
高知大学地域協働学部教員の森明香です。

第2回「学生と考える記憶の記録と継承」
ビキニ事件を中心に その2


ゼミ形式の実習で学生たちと
ビキニ事件について学ぶようになった理由の一つに、
学校教育で触れた戦争の歴史をめぐる学生たちの
素朴な疑問に触れたことにある。

学生が持って来た調査報告論文
「地域の記憶を継承する
『学びのプログラム』に関する調査研究
〜ドイツにおける事例分析を中心に〜」
を講読したときのこと。
論文は、ユダヤ人迫害やベルリンの壁など
第二次世界大戦や冷戦時代の
生き証人が減少しつつある中、
ドイツの児童生徒たちが経験している
記憶の継承のための複数の教育プログラムを紹介していた。
この議論の際に、
これまで学校で学んだ戦争の歴史に
ある種の違和感を覚えている、
との発言があった。

日本の加害の側面が教えられないのはなぜか。
慰安婦問題がタブー視されているのはなぜか。
戦争責任はどう論じられているのか。
教員に尋ねると「教員の立場からは言えない」
と言われたこともあったという。
体験に基づくごく素朴な疑問として、
「なかったこと」にされる歴史的な出来事があることへの違和感、
なぜ自分事として教えられる機会がないのか、
と思っているようだった。

この論文と議論は学生たちの印象に残るものだったらしい。
月に一度課すレポートでも強い関心を示す言及があった。
自分たちが生まれる遥か前の出来事を、
自分たちが生きる「今」に連なるものとして、
歴史との自己との関係を捉え直そうとする営み。
学生たちがそうした営みに関心を持つという事実は、
私の中でも強く印象に残った。

2020年夏に「記憶の記録と継承」をテーマに、
高校生たちが掘り起こした
高知のビキニ事件を学ばないか、と提案した。
学生は賛同してくれた。

※ この記事は、NPO法人土といのち『土といのち通信』2021年9月号より転載しました。
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