うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

ドッグソルジャー(1978)/Who'll Stop the Rain

2012年10月14日 | 映画

このタイトルの映画は複数あるようで、検索するとよりさいきんのイギリス映画の方がたくさん出てくる。そっちの方は見ていないが、こちらはかなり地味な、あまりレビューなども書かれないような映画だ。

古い音楽を聴いていて、急に思いついて検索したらamazonでDVDがヒットしたので、買ってしまった。
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日本公開は1978年11月。僕が見たのは映画館ではなく、テレビの吹き替え版で、それもそうとうに昔のことだ。印象に残ったのは音楽(CCR、Creedence Clearwater Revival)だ。映画を見てからだったのか、見る前だったのか、前後してベスト盤のレコードを買った記憶がある。

 一見するとはなはだ地味だが、これはたしかに傑作だ。ウェブでいくつかレビューやブログを見たけど、僕も多くの人たちに賛同する。噛めば噛むほど味のある映画だ。

 物語は70年代初頭、戦火の中のベトナムから始まる。従軍記者ジョン・コンヴァースは、無意味な戦争に幻滅し、ヘロインの密輸を企てる。彼は海兵隊時代の友人で、現在は商戦乗務員のレイ・ヒックスに、サンフランシスコまでの麻薬輸送を依頼する。レイは最初はいやがっていたが、戦友のためならと引き受ける。

 サンフランシスコに着いたレイは、金を受け取るためジョンの妻マージに連絡するが、彼女はジョンから何も聞いていなかった。レイは不審を抱き、コンヴァース家に押しかけるが、そこでヘロイン供給者の手先と思われる男二人組に襲撃される。レイは二人組をとりあえず撃退し、マージと共にロスアンジェルスを目指して逃亡の旅に出る・・・。

いわゆるアメリカン・ニューシネマ系の映画で、その何とも言えない雰囲気が全体を貫いている。最初に見たときの僕の感想は、レイの力強さや侠気とマージの大人の女性らしいかわいらしさがとても印象的、というものだった。今回その印象は基本的には変わらないものの、気がついていなかったところ、忘れていたところがたくさんあって、ちょっとした意外感を感じた。最初見たときはまだ子供だったということもあるのかもしれないが。

ジョン・コンヴァースは、以前の印象ではきまじめなインテリで普通の善良な市民、みたいにしか思っていなかった。しかしこの人は、ベトナムの惨状に幻滅したという下敷きはあるが、友人を勝手に麻薬密輸という犯罪に巻き込んでしまうのである。妻まで巻き込んでいる。
 それに、ものすごくまぬけだ。俺は臆病だからとても慎重だ、などと言っておきながら、何者かに荒らされた自宅までふらふらと戻り、道の途中で敵に簡単に捕まってしまう。

コンヴァース夫人のマージも、善良な主婦とは言い切れないところがあって、心の不安を抱え、麻薬に頼るようになっている。
 (この女性らしい弱さ、の表現は、この時代を過ぎると見られなくなってくるような気がする)。

この夫婦の愛情がどの程度深いものなのか、物語の中盤まではよくわからない。ただ、後半になって夫の声を聞いたマージが、ヒックスの制止を振り切って敵の元に向かおうとするところ、そしてラスト、ジョンの運転するランド・ローバーの助手席に座り、ぎこちない表情を見せていたマージが、最後には夫の肩に手を掛けるところに、二人の結びつきの強さが表現されている。

レイはこの物語ではヒーローなのである。だから、港に麻薬を取りに行ったときも、尾行する追っ手を見つけて機敏な行動を取るし、コンヴァース家でも敵の手先を要領よく押さえつけたりもする。逃亡先のヒッピー・コミューンでも、地元の人には顔が利くし、5人の敵を相手に大立ち回りを有利に進める。

ジョンに麻薬輸送を押しつけられたときも、最初はとてもいやがる(当然だろう)。しかし、他でもない戦友の頼みだとして、これを受けるのである。手に余る麻薬をさばこうと、知り合いを通じて金持ちに売ろうとするが、途中で腹が立って投げ出してしまう。祖国のために海兵隊で闘ってきたのに、こんなにばかげた祖国の現状に、立腹したのだ。

 レイの行動はその場その場では適切な判断をしている、といえるかもしれないが、彼自身、麻薬組織に勝てると思って動いているのではないようだ。はじめから危険で、無茶なことだとわかっていたのだが、その場の行きがかり上、そうせざるを得なかった(何となく大戦中の日本軍人を思い出す)。行動原理としては、戦友ジョンへの友情と、戦争を戦い抜いてきたものの誇り、そして後半においてはマージへの愛情だろう。彼が心の底で絶望していたのかどうかはわからない。とにかく最後の最後まで、彼は前に進み続けるのだ。

 海岸に座り込んで沈んでいるマージを見て、麻薬を勧めてしまうというのも、そうしたレイの「行きがかり上」の愛情といえるかもしれない。

人質となったジョンの声を聞いて、動揺し敵の元に向かおうとするマージに対し、最初は何とか止めようとするが、彼女のつよい態度を見て彼は思い直す。
 そこでレイははっきりと、「惚れたぜ」と言って、マージへの愛情を自ら認め、彼女を援護するため銃を取る。
 もちろん、この台詞はマージには伝わっていない。レイは戦友の妻に対し、あくまでも一線を画しつづけたのだ。

 ラストシーンで、ジョンとマージは、二人してどこかに去って行くのだが、この先二人になにが待ち受けているのだろうか?

 

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YouTube: Creedence Clearwater Revival - Who'll Stop The Rain - Vietnam Montage

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シューベルトの「未完成」ほか

2012年10月14日 | 音楽

この週末に聴こうと思い、CDを2枚買ってきた。
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一つはシューベルトの「未完成」を含む、2枚組のセット。同じカール・ベーム指揮のものでウィーン・フィルと演奏したものはドヴォルザークの「新世界」との組み合わせになっている。少し迷ったが、ベルリン・フィルの演奏で、組み合わせが9番((ハ長調の)、もう1枚ピアノ5重奏曲その他がついた2枚組のこちらを選んだ。

「未完成」はいままでアバドが室内オーケストラを指揮したものしか持っていなくて(と思って棚を見直したらナクソスの廉価版も持っていたけど)、さいきんはあまり聴いていなかったが、今回聴いてみると、やはり傑作だと思う。考えて見ると、CDは聴いていないが、時々、道を歩いているときとか、仕事をしているときなど、急に頭の中で鳴り響いていたりした。だから今回買おうと思ったのだが。
演奏について、色々聞き比べた上での感想は当然言えないが、アバドとの比較で言うと、こちらの方が当然重厚感が加わって表情にもコクがある。アバドの軽さも決して悪くないが、今後はこちらを中心に聴くことになるだろう。

ハ長調の交響曲は、クラシックレコードを買い始めた頃に買った1枚の一つだ。初心者だから表題付きがわかりやすかったので。ワルターの演奏だった。この演奏も好きだが、今回ざっと聴いた限りでは、ベームの方はだいぶ印象が変わり、重厚さが強く感じられる。総じて、僕が今まで持っていたシューベルト(の交響曲)は、どちらも軽めの演奏だったようだ。

もう1枚はまたショスタコでで、7番。ショスタコーヴィチはこれで5,7~10番が揃うことになる。好きな作曲家という感じではないのだが、何となく、気になって。まだ聴いてない。
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