ケーブルテレビで放映されていた「サンダーバード」が先日最終回を迎えた。
僕は途中から見始めて、ゴールデンウィークの特別放送でキャッチアップ、録画もしたが、うっかり1話と半分、録画しそびれた。字幕版がこれから放送されるそうなので、それを録画しようと思っている。
このドラマが作られたのは1965年、今から50年も前の話である。基本的な内容は今でも全く古くなっていない。メカや巧みなストーリーなどもさることながら、凄いと思うのは、ジェフ・トレーシー氏が率いる「国際救助隊」が、人命救助を目的に作られた組織であることだ。よくあるような、相手をやっつけ、叩きのめしてしまうようなヒーローものではない。更に、「今日の政治情勢を考えると」卓越した機能を持つメカを、どこかの政府が悪用しかねないので、活動は秘密裏になされ、写真撮影も許さない、という設定も、実に大人っぽいと言うか、見事なものの考え方である。
ただ、男の子というのは昔から、戦争物や戦いものが大好きなことも事実である。そのためか、国際救助隊も時には英国空軍や米国海軍とも協力したりする。また、救助のためにミサイルを使ってその辺のものを爆破したり、そうでなくても色々なものが壊れる過程で大爆発を起す、などの描写はしょっちゅうである。ちなみに、設定の中で多少時代を感じさせるのは、原子力発電所、原子力を使った?海水濾過装置、原子力飛行機、原子力船と、やたらと原子力を万能視していること。それと、なぜか地下鉄は時代遅れで廃止になり、モノレールが高速列車の主役?とされていること。当時モノレールはとても未来的な乗り物だったのかな?
話を戻そう。大人になった僕が見て、おもしろく思ったのは、そういう破壊願望?と平和主義という、本音と建て前みたいなものが設定やストーリーに見え隠れしてることだ(ちょっとうがった見方かも知れないけど)。もう一つ、ここに出てくる登場人物は、男の子があこがれるかっこいい大人の「男性」であること。トレーシー一家もそうだが、他にもパイロット、宇宙飛行士、航空管制官、軍司令官ほか軍関係者たち、船長や航海クルー、建設現場の監督やスタッフ、探検家、科学者、銀行家など、あこがれの「はたらくおじさん」たちがたくさん出てくる。このおじさん達はみんな、今の僕が見ても結構かっこいいのだ。ヘルメットに作業服の建設作業員もかっこいいし、メガネに白衣の科学者なんて、インテリっぽくてあこがれちゃう。たくましくて、仕事ができそうで、偉そうだ。今のおじさん達みたいに、情けない様な描写をされる人はいない。
もちろん女性達も素敵だ。ペネロープ嬢は命令口調がすごく板についている(黒柳徹子さん!!)し、ミンミン(ティンティン)もとてもおしゃれだ。しかし、登場人物の9割ぐらいは男じゃないかな。現代のドラマ作りではこの点がまず指摘されると思う。もう一つ、ペネロープ嬢は有能なスパイのはずなのに、山の中にドレスで分け入ろうとしたり、ネズミを怖がったりと、時に「お嬢様ぶり」を発揮することがある。このような、「女性とは・・」というものの見方を示すような描写は、今日のドラマでは表現できないんじゃなかなと、ちょっと思う。
こうして考えると、このドラマ、古くなっていないと言いながら、結構古き良き時代の作品なのかな、とも考えたりする。男の子達にとっては、なんのてらいもなく「かっこいい大人」にあこがれることのできる、良い時代だったのかも知れない。時代が女性の世界を広げていることは、何の疑いを抱くものではないが、その間に男の子達は道を見失い、困惑しているというのが、今という時代に対する僕のみたてだ。