うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

コーラスライン(映画)

2017年03月25日 | 映画

 前に書いたことあったかな?16年ほど前、NHK BSでミュージカル映画を1週間通して放映したことがあり、そのうち「ヘアー」「ジーザスクライスト・スーパースター」とこの「コーラスライン」を、一本のVHSテープに録画した。これらのどれも繰り返し、何度も見返していてもう体に染みついている。

 どういうわけか、この時代、30代ごろに見た映画は体にしっかりと染みついてしまって、離れようとしない。映像にそれほど関心がなかったせいもあり、自分のビデオデッキを持ったのは30ちょっとすぎくらいだったが、そのせいだろうか。そもそも映画館自体、20代ごろはそれほど行っていない。ただし、上記の「ヘアー」と「コーラスライン」はロードショウで映画館で見ている。

 それはともかく、僕自身はもちろん、映画の人たちみたいに舞台オーディションを受けた経験はないが、広くこれを面接と捉えれば、何度も経験しているわけで、そういう意味での共感を感じることはあったと思う。それに、ブロードウェイじゃなくて市民ホールだけど、舞台や舞台裏とかにはそこそこ出入りしていて、なんとなく雰囲気を感じられる、ということもある。

なので、なんだかその辺の質感のようなものがひしひしと伝わって来るのだろう。久しぶりにこの映画をちらちらとみていると、なんだか自分自身の経験と混ざりあって、かつて自分があの場にいたような気すらしてくる。

 

 

 映画ではなく、舞台公演を見た人の評価を、たしかウェブで読んだことがあるが、そういう人たちにとってこの映画は物足りないらしい。もっと素晴らしい舞台なのに、それを伝えていないと。そこはわからないが、ミュージカル特有のおおらかな筋書の矛盾とかは別としても、ちょっと詰めすぎかな、と思う気がしないでもない。舞台の台詞ならライブ感で見られるが、映画にするとちょっとというところもあるし。

それでも、空港からタクシーで会場に向かう冒頭のシーン(遠景に世界貿易センターがそびえている!)などは、映画ならではのものだし、細かいところだが、回想シーンの明るくて広い練習場(キャシー全盛の時代)や、オーディション会場の控室で、窓越しに雨が降っていることが分かるシーンなど(侘しい。。)は、舞台では再現しえないところだろう。

 

個性豊かな登場人物たち。

 ザックと舞台にあこがれる有能な秘書(よく気が働いて、仕事を楽しんでいる。こういう子は大好きです)とのやりとり。秘書、もちたいです。。

ザックをサポートするラリー。舞台上でのプロっぽい働きもいいが、ザックやキャシーとの友情を示すシーンもいい感じ。休憩時間にキャシーのところへ行き、「粗末な昼食だ。まずいパストラミと、ぬるいトニックウォーター」とか言いながら食事をするところなんか、共感をそそります。あれだけ激しく動く人が、これしか食べないなんて。。「休め」の姿勢で、肩の力を抜いて立っている姿も印象的。

ザックの照れ隠し的冷たさも、やはり共感させれるところがありますが、ふと見せる心の温かさが素敵です。結果発表の直前、舞台上に立つみんなを見て、ふと「A long day..」と、ねぎらいのような言葉をかける。こういうところがリアルというか、共に長い一日を過ごしてきたという共感を素直に伝える台詞として、とても人間臭い感じを与えてくれます。

ダンサーたちの、舞台上からの強烈な自己主張、すごい人もいるし、緊張で変なこと言う人もいる。見ちゃいられないというか、結構痛い感じもしますよね。。通常会社の面接なら、キャンディデート側は一人のことが多いですけど、ライバルが隣にいる中での自己主張だものね。10代半ばの子もいれば、30前後の人もいる(十分若い気がするが、この世界ではベテランなのか。)。

中ではダイアナ、生真面目な人で、芸能学校の授業で自分がアイスクリーム・コーンやスポーツカーになったつもりで演技せよ、と言われて何にも感じない、と悩む。クラスメイトはみんな小器用なんだろうねえ。。

実は一番好きなのは、女房子供を抱えて頑張っている、ドンという人。指名されて興奮し、一生懸命支離滅裂な主張をしまくる。「今日ここでみんなのいうことを聞いて、俺は・・週何時間レストランで働いて、仕事はつらいが、云々。。俺の女房は世界で一番きれいで可愛いが・・、よくわからない(I don't know)・・」
客席でザックは、打ち合わせのためにやってきたラリーと思わず顔を見合わせる。僕の人生のどこかで、こんなシーンを経験したことがあるはずだよな。。とってもリアル。。

 

 

先に掲げた3本の映画、「ジーザス・・」は1973年と古く、「ヘアー」は1979年だが、舞台は1960年代後半の設定だ。コーラスラインの舞台上演は1975年かららしいが、映画の公開は1985年で、設定上も現在になっている(画面に1984年であることを示す看板が出ている)。ので、この中では一番「現在」に近い。
なので、これらのなかでは現代アメリカ、という印象がつよく伝わってくる。


個人的な事情を言えば、ちょうどこれを見たころ、しばらく勤めていた会社を辞め、春から米英系の大きな会社に移る過程にあった。
それまでいた会社は今はもうないが、昨今でいえばブラックの烙印を押されかねないような面を持っていた。
もともと僕は米系企業でキャリアを始めたので、米系の次の会社に行くことを、まるで古巣に帰るような ほっとした気持ちで捉えていた。
まあそんなわけで、この「コーラスライン」を見て、「ああ懐かしい(現代の)アメリカ」という印象を 抱いたことを覚えている・・。現代、つったってあれだよねえ。。そのころ生まれた赤ん坊が、今や会社の子として活躍しているんだからなあ。。

 

というわけで、思い切り私的な感想でございました。

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