トウガンや
昆布、
島ニンジン、豚レバーを煮込んだ汁が、
大鍋の中でぐつぐつと音をたてる。
台所で大城清子さん(69)=南風原町津嘉山=が、
ニンニクやショウガを素早く切り刻む。
冬至の朝、滋養強壮にと
昼ご飯に「島野菜のチムシンジ」を作る。
チムシンジは
豚レバーを煮込んだ汁物で、
沖縄ではレバー(肝臓)を「チム」と、
煎じものを「シンジ」と呼ぶ。
風邪や疲れた時にクスイムン(薬膳料理)として食されてきた。
レバーに昆布、季節の野菜をたっぷり入れた「チムシンジ」を作る大城清子さん。
「てぃーあんだがいいよねえ」
と愛情あふれる手でおいしい料理を作り出す
=南風原町津嘉山
「大正生まれの母から受け継いだ味ですよ。
娘や孫たちが風邪を引いた時に食べてもらうのは
これが一番」。
清子さんは朗らかに笑う。
湯気を立てる大鍋の傍らで、
次に手掛けるのは副菜の「千切り大根と刻み昆布のイリチー」だ。
材料に用いる肉は、
南風原町産のチラガー(豚の顔の皮)。
ゆでたチラガーを炒めて酒を振り、
だし汁に浸してしんなりさせた千切り大根と昆布など材料を加えて、
手早く炒める。
千切り大根と刻み昆布のイリチー
夫の善増さん(69)と35年間酪農を営み、
娘3人を育ててきた。
自宅前に畑「美花城(みーはなぐすく)ファーム」を構える。
ハーブや豆、野菜類を育て日々、食材として使ってきた。
黒豆入りのご飯を炊き、
デザートにはもぎたてのスターフルーツを楽しむ。
調理で出た野菜の皮は乾かして、
畑の肥料に用いる。
食と暮らし、命の営みがつながっている。
清子さんの半生は、9月に他界した母・與座やすさんの影響を受けてきた。
保育所の調理員として多忙な中にあっても食をおそろかにしなかった。
幼少時代からやすさんと台所に立ち、料理を体で覚えてきた。
「田芋のドゥルワカシー(煮物)や、
イムクジプットゥルーが母の味」と懐かしむ。
やすさんは晩年、清子さんの畑で黒豆やうずら豆の収穫を担った。
畑の豆を選んで熟(じゅく)した豆だけを収穫し、
布で一粒一粒を拭き乾かした。
母が丹精込めて収穫した豆をご飯と一緒に炊いた。
ほっこりした味わいが、家族の胃袋を満たしてきた。
(写真手前から時計回りに)島野菜のチムシンジ、
黒米ごはん、
千切り大根と刻み昆布のイリチー、
ローゼルの甘酢漬け、デザート
数年前に酪農をやめ“孫育て”に追われる。
町の農業委員を務めるほか、
酪農教育ファーム活動の一環として、
畑に町内外から子どもたちを受け入れ、
ハーブ摘みや種まきを体験してもらい、
農業と食の大切さを伝えている。
孫たちが畑を駆け回る姿をめでるのも心躍るひと時だ。
孫たちと一緒に食事やお菓子を作るのが楽しみの一つ。
カボチャともち粉を混ぜた餅を普段から作っている孫たちからは
「おばあちゃん、またやろうよ」という言葉が自然に出てくる。
食や孫の話題となると話の尽きない清子さんは、
かみしめるように話す。
「言葉で言うよりもねぇ、
体験が何より大事。
一緒に楽しみながら作って初めて自分のものになるんですよ」
出典元

文・高江洲洋子
写真・具志堅千恵子