【肉の部位によっても熟成法は変わる(写真は「旬熟成」のランプ)】
【肉の部位によっても熟成法は変わる(写真は「旬熟成」のランプ)】
ここ数年、肉を一定期間寝かせてから食す「熟成肉」がブームになっている。
最近ではファミリーレストランの「デニーズ」が熟成肉のステーキを扱ったり、「吉野家」「松屋」といった牛丼チェーンが冷凍の牛肉から冷蔵熟成に調理方法を切り替えたりするなど、身近な外食
ここ数年、肉を一定期間寝かせてから食す「熟成肉」がブームになっている。
最近ではファミリーレストランの「デニーズ」が熟成肉のステーキを扱ったり、「吉野家」「松屋」といった牛丼チェーンが冷凍の牛肉から冷蔵熟成に調理方法を切り替えたりするなど、身近な外食でも味わえる機会が増えた。
しかし、飲食店関係者によれば、いつもリスクと隣合わせなのだという。
「熟成の仕方や期間などに明確な定義や規制がないため、店によって品質・安全管理がまちまちなのが現状です。
これだけ人気になっても消費者側の知識が乏しく、実際には“腐敗”一歩手前の肉を提供する店があっても、『これが熟成肉の特徴なんだ』と勘違いしているケースがある。
一度でも食中毒を出す店が出たら、熟成肉を提供するすべての店が打撃を受けることになるのです」(都内の焼肉レストラン店主)
熟成と腐敗は紙一重――。それは「ウェットエイジング」、「ドライエイジング」という2つの一般的な熟成法と旨味アップのメカニズムを知れば理解できる。
ウェットエイジングは真空パックや布などで肉を包み、乾燥を抑えながら低温で30~50日寝かせる方法。ファミレスや牛丼チェーンは主にこの製法を用いている。
一方、ドライエイジングは空気に触れる低温・高湿度の環境で肉を保管し、扇風機などで風を当てながら水分を飛ばしてじっくりと熟成させる。保存食の意識が強いアメリカでは古くから赤身の肉で取り入れており、日本のブームに火をつけたのもこの製法だ。
「ドライエイジングは熟成が始まると肉の表面が黒ずんで青かびが付着してくるが、他の菌を寄せ付けないので肉は痛むことなく、ゆっくりと発酵させることができる。そうしてカビを削って出来上がった熟成肉は、甘みや柔らかさが格段に上がる」(精肉業者)
いずれの製法も、酵素の働きで肉のタンパク質が分解され、アミノ酸やペプチドに変化することで旨味が増すとみられている。
この業者がいうには、「腐るか腐らないかのギリギリのところで食べるのが一番おいしく、それ以上寝かした熟成肉はアンモニア臭が漂ってしまう」のだという。
では、良質な熟成肉を見分けるポイントは何か。熟成肉炭火焼店「旬熟成」(東京・六本木)などの飲食店を運営するフードイズム代表の跡部美樹雄氏に聞いてみた。
「生の熟成肉の場合は、質のいいものは肉の色がはっきりと赤く、肉臭さがまったくないのと同時に、ほのかにチーズのような香りがします。ねっとりとした触感も特徴的です。また、焼いた熟成肉の場合は、ナッツのような香ばしくも甘い香りがします。
どちらで食べても良質な熟成肉は口に入れた途端にまろやかに溶け出し、肉の脂が体に蓄積されないので食べやすく、胃もたれするようなこともありません」
跡部氏は“究極の熟成肉”を目指し、日々実験や研究を重ねている。店で提供する熟成肉の中には、最高で140日間もの熟成をかけているというから驚きだ。
「今後、熟成肉を扱う店舗の人たち、有識者、畜産農家も交えた価値向上のための協会を設立できたらいいなと思っています。
やはりお客様の口に入るものなので、何か事故があってからでは遅い。安全管理を徹底させて熟成肉がブームで終わらず日本人の食文化に定着してほしいと願っています」(跡部氏)
牛や豚の生レバー規制など、食の安全がなにかと問題になっている昨今。だが、消費者自身も、もっと食に対する知識を持ち、新しい食べ方の特徴や好みを見極める「五感」を磨くべきだろう。
出典元
http://www.news-postseven.com/archives/20140831_274002.html?PAGE=1#container
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