(写真は中国・雲南省の昆明にある、石林。ここは石林が広大でダイナミック。かなり有名な奈観光地で、中国人観光客も多い。桂林近くの玉石林とはまた違った表情を見せてくれる。私はここ、石林も好きだが、しっとりと落ち着いた感じの、夕日の玉石林も好きだ・・・中国ではいたるところでこのような石林を見ることができる。)
THE PROMISE 無極
満足度 ★★★☆☆
感動度 ★★★☆☆
面白さ ★★★☆☆
色彩美 ★★☆☆☆
民話的な話の構造 ★★★★☆
歌舞伎的な画面の構図 ★★★★☆
京劇的な見得 ★★★★☆
チャン・ドンゴンの目力と見得の切り方★★★★★+★
中国
監督 チェン・カイコー
キャスト
チャン・ドンゴン
真田広之
セシリア・チャン
ニコラス・ツェー
リィウ・イエ
まるで漫画のように面白かった。
しかし面白いだけではない。
しっかりとした話の構図が、この映画には描かれている。
ここではあらすじは省かせていただきますが、見とれる画面といただけないCG部分が混在した感じのする映画でした。
『白波五人男』や『野田版ねずみ小僧』の屋根上部分を意識した中国的な趣を感じさせない 屋根。
屋根の上には赤頭の連獅子を思わせる衣装、鬘。
女は鳥の羽織を着せられ、大きな鳥かごに・・・
女を助け、まるで凧(鳥)のように飛ばすが、その衣装は どう見ても歌舞伎の『源九郎狐』の宙吊り・・・
とらえられた広間では ちょんまげ風の歌舞伎のギャラリーのような構図で、付き人が無表情で座り、一本調子で順番に台詞を唱えていく。
これって・・・・・・
歌舞伎!だな。
主役のチャン・ドンゴンは、某歌舞伎役者の目力のそっくり。メークやヘアスタイルで、信長役の某役者にそっくり。
ただ、チャン・ドンゴンは、某歌舞伎役者よりも数段演技力が上。表情も豊かだったことを付け加えておきたい。
チャン・ドンゴンが歌舞伎役者や京劇風に見得をきると、決まる!正直 格好が良い。
真田広之の起用といい、おそらく、興行採算上、日本をかなり意識して作られたに違いない。
真田広之は今回の少しいやらしい姑息な役を演じきっていたような気がする。
ただ、顔ばかりが映って、実際に戦う場面はスタントマンや代役。
きめのポーズと表情は、豊かであった。
回想的美しいシーンがあるかと思えば、下品な如来像のような場面が多様されている。
狼少年のような昔の漫画を思わせるコマ送りがあるかと思えば、赤蟻と黒蟻の戦いのような場面あり。
これぞ 良い意味合いで、井波律子さんの書いておられたグロテスクリアリズムに通じるものがあるように感じたのは、私だけだろうか・・・
鳥に意味をおいているところも興味深い。
火傷を負い、黒い羽のマントを着せられた男。
時には死の世界に通じる烏。
時には中国で吉兆文様の一つの孔雀にも見える。
孔雀は雲南省では、守り神の一つで、孔雀舞なども有名である。
男は死に直面するが、あの世の世界に行く前に、煙となって消え去った同郷の男の黒いマントを身にまとい、生の世界に戻る。すなわち死の再生である。
民話的 話の構造はしっかりとしたもので、感心してしまう。
余談だが、このマントは、シンデレラの二パターンのうちの一つである『皮かぶり姫』のイメージとも重なる。
この映画の 原文or脚本or演出は、民話と歌舞伎から構想を練り上げられたのではないかと、私は考える。
小難しいことは抜きに、男前が多く出てくる映画は観ていて心地が良いものである。
くふふふふ・・・