奈良の斑鳩の里にある 法輪寺
4月6日(日)、奈良県のいかるがホールにて 桜祭能を楽しむ。
初めて聴いた能楽の『雪』は素晴らしかった。
今回の能楽は今までとは違った新たな感覚を受け、感激した。
能楽鑑賞の初心者である私はゆっくりとした曲(演目)は、どちらかといえば苦手であった。
どういった点を味わえばよいのか、わからずにいたのだ。
ところが今回、初めて驚くばかりの感情を味わうことができた。
喜ばしいことである。
始まってちょうど十分後の
急ぎはほどにこれは早や・・・・・
から、雪が舞う。
舞台後方から観ていると、その雪は優雅で美しい。
舞台右上の、生の桜の枝から舞い落ちた花びらのようにも感じ、女心にも感じる。
能楽シテをつとめられた植田恭三氏の声は以前から好きだったが、
あら 面白の雪の中やな・・・・・・
からのビブラートの効かせ方に震えが生じる。
布で覆われていたかご?からは 座ったままの雪の精が現れ、ワキとシテの問答?が十分間、堪能できる。
開始から二十分目に入ると 雪の精は立ち、かご?から出る。
峰の雪、汀みぎわの氷踏み分けて・・・・・・
を受けて、地が五分間うたう。
雪の精が裏を向き、後見人の所へ行き支度を調えてもらった後の15分間の舞が非常に美しい。
雪のしんしんと降る中を優雅に舞う。
会場でいただいたパンフレットには、
・・・・・・旅僧の教の功徳を喜び、自然界の命も、仏の縁が結んだ結果としてこの世に現れた美の花であることを,廻雪の舞にうたいあげて,やがてあけゆく東雲のにかかる雪の花と消えゆくのである。・・・・・・。
と記されている。
雪の精の幽玄の美しきこと・・・。
会場外の桜の花と雪の精、そして はらはらと散る花びらと雪とが私のイメージの中で重なり合っては舞い、幻想的な独自の世界を作り出す。
雪といった今にも消えゆく切なさのなかにも、力強さを表現。その控えめで品の良さは心地よく,心に響く。
15分の優美な舞も終わり、シテと地のやりとりの中、
地 (姿もさすが)峰の横雲
のところで、雪の精は左に面を向け、優しく峰の横雲を現わす。
この姿を見て、
『もう終わっちゃうんだぁ~。』
といった寂しさに包まれてしまった。
地 ・・・・・雪の花は
で、かご?に戻り、
地 又 消えきえとぞ
で、かごから出て舞台に立ち、
地 なりにける
で、かご?の中に入る。
最終に
地 ・・・・・・・いかにも 地元のさくら・・・・・・
〃
で、厳かに幕を閉じた。
心底、感激した。
能楽がこんなにも味わい深いものとは・・・と、痛感した舞台であった。