『エッシャー展~視覚の魔術師』
奈良県立美術館
3月22日
息子と『エッシャー展~視覚の魔術師』&芝能を楽しむ。
『エッシャー展~視覚の魔術師』は80点展示され、おもいのほか多い。
ガラスの中に納められた作品は余りにも細かく、わたしたちは入場時に貸していただいた双眼鏡で見ることになる。
ところがこの双眼鏡が使いづらい。
わたしは持参したLeicaのマイ双眼鏡で、作品から少し離れて眺めるとぴったし細部まで見ることができた。
わたしは博物館などに行くときは、たいがい双眼鏡を持っていくことにしている。
ガラス越しに見る作品はあまりにも有名。
それに、私はエッシャー作品は過去何度か見たことがある。
ところがエッシャーが日本びいきであったことは知らなかった。
そういわれれば浮世絵の影響が色濃い作品も多い。
エッシャーの父は貴族で、日本にも滞在していたことがあると説明されていた。
エッシャーはアルハンブラ宮殿の幾何学文様にも影響を受ける。
こちらは説明までもない。
余談だが、アルハンブラ宮殿は 学生時代にわたし一人そこに残り、閉館まで楽しんだことがあるほど美しい。
『エッシャー展~視覚の魔術師』では息子がいつもにも増して鑑賞が長い。
エッシャー作品の中では二次元が三次元と交差するものは多い。
息子は三次元が四次元に移動したかと思うと二次元にといった異次元に誘う一作品に見入っていた画作品名は忘れた。
彼は数学が好きで、エッシャーの細部にわたるまでが面白くて仕方が無いようだ。
目を輝かし、細かな質問を重ね問いかけてくるが、こちらはとんとわからない。
あげくは図形解説の上、彼が逆転して作品説明をしてくれる。
なかなか頼もしい。
好きな数学を我慢して違う学部を選び仕事に就いた彼だが、エッシャーの作品は彼の好みに火をつけたようだ。
エッシャー展の図録を買うかどうか悩んでいた彼。
美術展に行くことが多い彼は図録は滅多に買わないので、珍しい感じがした。
影であらわした作品は浮世絵、平面の正則分割はアルハンブラ宮殿の影響を受けたと思われる作品が続く中、書物の挿絵版画が並べられているコーナーがある。
絵に加えて韻文が日本語で記してあった。
例えば『凧』については
一番高いところで私は無になります。
ある力が私を元に戻します。
所詮私は子どものつまらぬ玩具なのだから。
書物の挿絵版画と韻文の多くの作品を見て、わたしは 辻まことの言葉を思い浮かべ、安部公房の感覚を思い出していた。
何処までも続く道や水の流れ。
影と日向の逆転、圉宇下の逆転、裏表の逆転。
エッシャーはあらゆる表現を投げ掛ける。
『メタモルフォーゼ』は爬虫類から鳥類、魚類へと敷詰められた生き物で変容を遂げる。
その恐るべし横長の作品に、私は蟹のように右に右に歩みながら、全体を見る。
最後に行く頃には初心を忘れるのは、今の世を反映しているようで、皮肉だ。
私は三歩五歩下がり、作品の全体像を見ることにより彼の真意を知る。
エッシャー展も中頃にさしかかった頃、エッシャーは
鳥の「羽」
魚の「ひれ」
によって画面を埋め尽くしていることに気づく。
小声で息子に伝えると、
「それを言っては、おしまいだよ、お母さん。」
と苦笑していた。
『えらく大人げないことをしてしまった。』
と、内心反省。
どうも、子どもと親の関係が逆転しているようだが、エッシャー展の鑑賞には似つかわしい感じがする。
エッシャーの作品は当時美術作品(芸術)として認められなかったと会場に記されていた。
わかる部分もあるが、私は我が子と同様、エッシャーが好きだ。
作品の中に『写像球体を持つ手』という今見ても斬新な作品があり今もわたしの心をとらえている。
産経新聞 (3月20日20時50分配信 )より ▼
開幕した「M.C.エッシャー展」=3月20日午後、奈良市の奈良県立美術館
「だまし絵」で知られるオランダ出身の版画家、エッシャー(1898~1972)の名作を集めた特別展「M.C.エッシャー展~視覚の魔術師」(奈良県立美術館、産経新聞社主催)が20日、奈良市登大路町の県立美術館で始まった。初期から晩年までの作品約80点を紹介している。5月9日まで。
エッシャーは、風景や動植物、建築デザインなどを綿密な計算に基づく版画技法で表現。現実ではあり得ない「トロンプ・ルイユ(だまし絵)」の名手として評価されている。日本に滞在した父を通じ、浮世絵版画の影響も受けた。
長崎県佐世保市のハウステンボス美術館所蔵の代表作「上昇と下降」「昼と夜」などを展示。大阪府八尾市の公認会計士、池田知弘さん(34)は「版画で立体的な世界を表現した想像力に大変魅力を感じた」と話していた。
一般千円、高校・大学生700円、小・中学生400円。
奈良県立美術館
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