博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず』

2006年10月04日 | 世界史書籍
塩野七生『ローマ人の物語27・28 すべての道はローマに通ず』(新潮文庫、2006年10月)

これまでローマの政治史を年代順にずっと追ってきたこのシリーズですが、ローマ帝国最盛期から斜陽の時代に入っていく前に一息入れようということなのか、今回は街道・橋・水道施設・医療・教育など、ローマのインフラ整備がテーマとなっています。写真・地図などカラー図版も惜しげもなく挿入されております。

ローマ時代の旅行者は都市間の距離や、各都市の宿泊施設などの情報が表面に刻まれた金属製のコップのようなものを持ち歩いていたとか、各地の情報が書き込まれ、ガイドブックの役割も果たした絵地図が4世紀には存在していたという話とか、貧乏人も運転手付きのレンタル馬車や乗合馬車を利用してそれなりに快適に旅行できたとか、旅や地図に関する話が割合に面白かったですね。

しかしローマ帝国の東西分裂後、街道がメンテナンスもされずに放置されたのはともかく、帝国の後継者のひとつであるビザンチン帝国の将軍の手によって水源地の水の取り入れ口が閉じられ、水道の坑道も閉鎖されることによって、西暦538年に水道設備が全く用をなさなくなったというエピソードには、何やら暗然とした気分にさせられます。で、次巻からはローマの『終わりの始まり』に突入していくわけですが……
コメント (4)
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