博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『エピソードで読む西洋哲学史』

2006年10月19日 | 世界史書籍
堀川哲『エピソードで読む西洋哲学史』(PHP新書、2006年4月)

要するに西洋哲学の入門書なんですが、他の類似書と異なるのは、哲学者の私生活やコジップに関する記述を大量に盛り込んでいる点です。これで楽しく哲学が学べるかと思いきや、ゴシップの方にばかり注目してしまって肝心の思想の方には目が行かなくなるという罠が……(^^;)

しかし思想の解説も類似書に比べると随分わかりやすくなっていると思います。恥ずかしながら哲学入門書は『ソフィーの世界』ですら内容がよく理解できなかった私ですが、この本はそれなりに内容を理解しながら最後まで読み通すことができました。
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『梁山伯与祝英台』

2006年10月17日 | 映画
『梁山伯与祝英台』(凌波・楽蒂主演、1962年、香港)

数年前にNHK-BSの『香港映画のすべて』という番組で紹介されてからずっと気になっていた作品ですが、最近ようやっと入手して鑑賞。

中国の説話を映画化した作品です。祝英台は女性ながら学問をするために男装して杭州の学校に入ります。そこで梁山伯という男性と出会って仲良くなり、自分が女性であることを明かして結婚を誓い合います。しかし祝英台は頑固な父の命によって権門の子弟に嫁ぐことになり、泣く泣く梁山伯との結婚を諦めますが、梁山伯はこのことにショックを受けて病死してしまいます。祝英台は輿に乗って嫁ぎ先に向かう途中で梁山伯の墓に立ち寄りますが、この時に突然嵐が吹き荒れて墳墓が真っ二つに裂け、彼女がその中に吸い込まれます。その後二人の魂は二匹の蝶となり、ようやく添い遂げることができたという内容です。

このうち祝英台は当然女優さんが演じているのですが、この作品では本来男性であるはずの梁山伯や、その他の学生も女優さんが演じています。だから女優さんが演じている梁山伯が、祝英台が実は女性だったと知って驚くという訳の分からない場面も出て来るわけであります(^^;) 『香港映画のすべて』によると、当時の香港では若い男女が撮影場や舞台で共演しあうのは風俗上よろしくないとされていたということですが……

物語はミュージカルのように歌を交えて進んでいくので、(学生が師匠の講義を受ける場面では『論語』や『大学』の句に曲をつけて斉唱したりします。)イメージとしては宝塚歌劇に近いですね。上映時間は122分とショウブラ作品にしてはやや長めですが、不思議と見ていてダレませんでした。

キングレコードの黄金のシネマシリーズ第3弾がもしリリースされるなら、是非こういう古典物もラインナップに加えてほしいところです。
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『漢字伝来』

2006年10月15日 | 日本史書籍
大島正二『漢字伝来』(岩波新書、2006年8月)

日本に漢字が伝わってから仮名が誕生するまでの軌跡を追った本ですが、内容的には同じく今年岩波新書で出た『日本語の歴史』とだいぶかぶってます(^^;) 

ただ、こちらの方は中国語学プロパーが書いているということで、音韻に関する説明が割と詳しいのが特徴でしょうか。
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古典小説のドラマ版あれこれ

2006年10月13日 | 中国古典小説ドラマ
『大清風雲』もあと数話で見終わるので、次に何を見ようかなあとあちこち物色してましたら、こんな作品を見つけてしまいました。

『封神演義』のドラマ版で、范冰冰が妲己、周杰(『還珠格格』で爾康、『射英雄伝』で楊康を演じた人)が武王を演じるという点に目が止まってしまいました。しかしこの作品、どうも殷周の宮廷劇が中心で哪吒(ナタ)や楊の出番が少ないんじゃないかという悪寒が……

あと、『少年楊家将』という作品も気になってます。こちらは『楊家将』の楊業の死までを映像化しているようです。しかしこっちはDVD版がまだリリースされておらず、VCD版のみ販売という点がネックですね。まあ、どうせ出るとしてもPAL版なんでしょうけど……
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講談社『興亡の世界史』刊行

2006年10月13日 | ニュース
来月から講談社が『興亡の世界史』というシリーズを刊行するとのこと。↓
http://shop.kodansha.jp/bc/books/koubou/

カルタゴや東インド会社をネタに一巻を割くなど、この手のシリーズでは今まであり得なかったような構成になっていて何だか面白そうです。しかしハードカバーで全21巻を揃えるとなると、値段もさることながら置き場所の確保が問題ですなあ……
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『ニューギニア高地人』

2006年10月11日 | 世界史書籍
本多勝一『ニューギニア高地人』(朝日文庫、1981年)

この著者の本は政治性が強そうだという先入観があり、今まで敬遠してきたのですが、故あって読んでみることに…… 内容はニューギニア島西部(すなわちインドネシア領)の山岳地帯で石器時代同様のくらしを送っている「ニューギニア高地人」たちの民族誌です。

この本の中で特に興味深かったのは、彼らが貨幣がわりに使っている宝貝(子安貝)に関する話です。同じ宝貝といってもいくつかの等級があり、古い時代に取れた貝ほど価値があるとされ、逆に昨日今日海岸で拾ってきたような貝にはほとんど価値がないとのことです。だから豚一頭を買うにも等級が高い貝だと4個か5個支払ってすむのが、等級の低いものだと数え切れないほど支払わないといけないということになります。

また、戦時中にニューギニア島に進駐した日本軍が現地人と食糧を取引するためにあらかじめ宝貝を大量に用意していたものの、現地人は日本軍の持つ宝貝を価値のあるものとは見なさず、ほとんど取引にならなかったというような話も紹介されています。

なんで宝貝に関する話に注目したかというと、現在西周金文に見える貝について論文を用意しているからなんですね(^^;) 西周期の中国では宝貝が貨幣的な使われ方もされる一方で、何らかの由来のある宝貝が特別視されていたようで、このあたりニューギニアでの話が参考になりそうです。
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『大清風雲』その4

2006年10月09日 | 中国歴史ドラマ
(前回:その3

『大清風雲』第31~40集まで鑑賞。

ドルゴンと大玉児は范浩正を処刑するか助命するかで揉めるが、二人でともに身柄を拘束された陳県県令の胡光と阿里達を訊問した結果、范浩正を助命することで合意。議政大臣による議政会でこのことを議題に揚げるが、ドドは范浩正の助命に強行に反対したばかりか、執拗に助命をはかる大玉児が范浩正と不倫関係にあるのではないかと彼女をなじる。大玉児はドドの侮辱に腹を据えかね、心中ドドへの殺意を抱くのであった。結局范浩正は処刑を免れたものの、朝廷での官職は剥奪され、家族を連れて故郷に戻ることになる。

そしてまた時は流れ、順治十年(1653年)となった。福臨は16歳の青年に成長したが、「皇父摂政王」の称号を得たドルゴンは未だ乾清宮で政権を担っております。ちなみに史実ではドルゴンは1650年に死去しておりますが、中国の歴史物では話の展開の都合上登場人物の死期を伸ばすというのはよくあることなので、気にしないことにします。

そんなある日、かつてドルゴンの暗殺をはかった碩果が刑期を終えて北京に戻ってきた。福臨は早速彼を宮中禁衛統領に任命し、幼馴染みの英格爾とともに側近とする。また帰郷していた范浩正も都に呼び戻し、ドルゴンらから彼を南方四省総督に任命する了解を取り付ける。これに味をしめた福臨は、今度は諸臣の協力を得てドルゴンから政権を奪い、親政を開始しようとします。重臣の鄭親王ジルガラン、ソニン、オーバイ、范浩正らに相談を持ちかけますが、皆が皆「その心意気は良いのですが、皇太后には相談なされましたか?」といちいち子供扱いされるのが面白くない福臨は敢えて大玉児には内緒にして事を起こすことに。

福臨は朝政の場で陳名夏という人物にドルゴンが乾清宮から退去し、皇帝に政権を返還するよう求める上奏を行わせ、これに激怒したドルゴンは議事の場から退出してしまいます。ドルゴンの側近の何洛会はこの時ドルゴンをかばうあまり、福臨に対する暴言を吐いてしまい、捕縛されたうえに福臨から死刑を宣告されてしまう。
後で何洛会が捕らえられたことを知ったドルゴンは、福臨と一戦を交えることも辞さずという態度を取り、一触即発の危機に陥ります。

ここでようやく范浩正から事の次第を知られた大玉児は両者の間に立って事態の収拾に乗り出します。ドルゴンが何洛会が釈放されれば政権を福臨に返し、また自分が管轄していた両黄旗を返還してもよいという申し出に感動した大玉児は、彼との再婚を実現させることでこれに応えようとします。しかし福臨はドルゴンが母と再婚するのは皇帝としての恥辱と猛反発。これを見かねた大玉児の侍女・蘇蘭は、福臨にドルゴンと大玉児はホンタイジとの結婚以前に既に恋仲であったこと、また本来ヌルハチの後を継ぐのはドルゴンのはずであったことなどをとくとくと言い聞かせます。事実を知り、衝撃を隠せない福臨。母の再婚に対して態度を軟化させた福臨は、まず手始めに何洛会を釈放します。

しかし大玉児に反発するドドはこれが面白くありません。兄のアジゲとともに密かに福臨の暗殺計画を練り、無理矢理にでもドルゴンを即位させようとします。そして順治帝が側近達と猟場で狩猟を楽しんでいる時に、ドドとアジゲは自ら手勢を率いて福臨の一党を襲撃します。福臨側の手勢の多くが倒れ、また碩果もドドの攻撃から福臨を守って戦死し、後一歩まで追い詰めますが、ここでオーバイが福臨の救援に駆けつけ、暗殺は失敗に終わります。

ドドとアジゲはドルゴンが両黄旗の閲兵に赴いていた永平鎮に逃げ込みます。ドルゴンは彼らが謀反をおこしたことに激怒しますが、同母の兄弟を見捨てることはできず、朝廷側と一戦交えることを決意します。命からがら帰還した福臨もドルゴンの一党との決戦を決意。そんな中、大玉児は朝廷の危機を回避するため、ドルゴンに密使を派遣しますが……
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『大漢風 -項羽と劉邦-』第1話

2006年10月08日 | ドラマ『大漢風』
BS日テレで今日から『大漢風 -項羽と劉邦-』の放映が始まりました。

秦の滅亡と楚漢戦争を描いた作品ということで、どうにも新鮮味に欠ける題材なのですが、『天龍八部』で蕭峰を好演した胡軍が項羽を演じているというのに惹かれて見てみることに……

今回は項羽、劉邦、張良、韓信ら主要登場人物の顔見せがメインでしたが、話のテンポが良く、作品の出来は結構良さそうです。次回以降も見ることにしますか……

で、胡軍の項羽ですが、仲間と武芸の稽古をしたり、片手で鼎を振り回して投げ飛ばしたりと、初回から気合いはバッチリです(^^;) 劉邦役もざっくばらんな親分という感じが出ていていい感じでした。
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『エリザベス1世 愛と陰謀の王宮』

2006年10月06日 | その他映像作品
NHKハイビジョンで一昨日・昨日と二夜連続で放映されてた海外ドラマです。差し迫った用事もあり、こんなもんを見てる場合じゃないのと思いつつ、ついつい見てしまいました(^^;)

副題から、エリザベス1世が若いツバメを囲うものの、その若いツバメは「あんな婆さんなんか、女王でなければ誰が相手にするかよ!」とばかりに若い女性と浮気しまくり、それが女王にバレて処刑されるとかそんな話かいなと思いましたが、その予想は半分当たって半分はずれました。

ドラマの前編ではレスター伯という人物がエリザベス1世の恋人として登場しますが、このレスター伯、エリザベスと同じぐらいの年かさであるらしく、とても若いツバメとは言えません(^^;) で、結局彼はアルマダの海戦の陣中で病に倒れてしまい、後編ではその義子であるエセックス伯が女王の恋人となります。このエセックス伯は正真正銘の若いツバメですが、結構本気で女王を愛していたようです。しかも二人の関係はプラトニックに近いものとして描かれています。しかしエセックス伯は女王の寵愛を良いことに勝手な振る舞いを繰り返し、結局終盤で女王の命により処刑されてしまうことになるわけですが……

女王の痴話喧嘩……もとい恋愛遍歴を核にしながらも、エリザベスの君主としての苦悩も描き、全体としては重厚な歴史劇に仕上がっていました。
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『ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず』

2006年10月04日 | 世界史書籍
塩野七生『ローマ人の物語27・28 すべての道はローマに通ず』(新潮文庫、2006年10月)

これまでローマの政治史を年代順にずっと追ってきたこのシリーズですが、ローマ帝国最盛期から斜陽の時代に入っていく前に一息入れようということなのか、今回は街道・橋・水道施設・医療・教育など、ローマのインフラ整備がテーマとなっています。写真・地図などカラー図版も惜しげもなく挿入されております。

ローマ時代の旅行者は都市間の距離や、各都市の宿泊施設などの情報が表面に刻まれた金属製のコップのようなものを持ち歩いていたとか、各地の情報が書き込まれ、ガイドブックの役割も果たした絵地図が4世紀には存在していたという話とか、貧乏人も運転手付きのレンタル馬車や乗合馬車を利用してそれなりに快適に旅行できたとか、旅や地図に関する話が割合に面白かったですね。

しかしローマ帝国の東西分裂後、街道がメンテナンスもされずに放置されたのはともかく、帝国の後継者のひとつであるビザンチン帝国の将軍の手によって水源地の水の取り入れ口が閉じられ、水道の坑道も閉鎖されることによって、西暦538年に水道設備が全く用をなさなくなったというエピソードには、何やら暗然とした気分にさせられます。で、次巻からはローマの『終わりの始まり』に突入していくわけですが……
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