博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『楊家将』その1

2007年10月15日 | 中国古典小説ドラマ
もうすぐこのドラマの日本語版DVDがリリースされますが、たまたまヤフオクで台湾版圧縮DVDを見つけ、衝動的に落札してしまいました(^^;) 1991年山西電視台制作のオールド作品です。

日本では北方謙三が『楊家将』の小説を出していますが、楊門女将など存在しない!と言わんばかりに男臭い物語に仕上げているのに違和感を感じていました。かといって田中芳樹のようにひたすら「ヤン・レディジェネラルズ」を強調されるのも何か違うと思うわけで、その点、このドラマはスタンダードな楊家将物語を見せてくれるはずです。

で、今回は第1話~第7話まで鑑賞。

宋の太祖は中原統一を目前にしていたが、精強な楊家軍を擁する北漢だけは征服できないまま、「遼軍との戦いのため、何としても楊家軍を配下に迎え入れよ 」と言い残して陣没する。後を継いだ太宗はまず計略でもって北漢皇帝を生け捕りに。楊継業は宋への帰順を拒むものの、宋の使者として主君の北漢皇帝が説得にやって来たことで、無念と屈辱の涙にくれながら帰順を承諾。

楊継業は太宗より無佞府を賜るが、鬱々として楽しまない日々を送る。そんな中、太宗は遼軍が占拠する応州へと軍を派遣することを決意し、その総大将を武芸試合で決めることにするが、楊七郎がその試合で重臣潘仁美の息子、潘豹をうっかり殺してしまい……

正味1話あたり30分しか無いので、えらく展開が早いです。

で、第7話では無防備のまま幽州に乗り込んで遼軍に包囲された太宗らを救うべく楊家軍が幽州に駆けつけ、敵軍を蹴散らします。遼の皇太后・蕭銀宗は金沙灘で太宗とサシで和議を行うことを提案しますが、これが罠だと察知した楊継業は息子達を太宗や八賢王、侍臣などに変装させ、金沙灘へと派遣します。ところが一行を出迎えた遼の天慶王・耶律沙が太宗や宋国を侮辱するのに耐えきれず、和議に入る前に遼の将兵を襲撃して馬脚を現してしまいます。何というかこの人たち、気が短いにもホドがあるよ……

遼軍の包囲を突破するために楊大郎・二郎・三郎が犠牲となり、四郎・八郎が遼軍に生け捕りされ、五郎は行方不明となり、結局無事に父親のいる本陣に戻れたのは六郎・七郎のみという惨状に…… 7話目にして早くも「血涙」という言葉がしっくりくる展開になってきました(;´д⊂)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『漢字文献情報処理研究』第8号

2007年10月14日 | 中国学書籍
漢字文献情報処理研究会の会誌『漢字文献情報処理研究』第8号が刊行されました。

今回は私も夏期公開講座「”版面権”とは何か」のレポートを寄稿してます。このブログで掲載した報告より少し詳しめになっておりますので、興味がおありの方は見てみてください。

今回の記事の中で個人的に気になったのはVista&Office2007特集ですね。実は年末ぐらいにパソコンを買い換えようかと思っていまして、新品だとXP搭載機なんてもうほとんど無くなっちゃってるわけですが、この特集を読むと、CJK統合漢字拡張領域Bの漢字が使用できるフォントが標準で入っているといった利点もありますけど、全体的にVistaは色々と面倒くさそうだなという印象を受けました(-_-;) 
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

太秦戦国祭り その後

2007年10月13日 | ニュース
本日の『朝日新聞』夕刊で太秦戦国祭りのことについて触れた記事が載ってました。

「時代劇、デジタルで再起図る 変わる京都・太秦の撮影所」
http://www.asahi.com/kansai/entertainment/news/OSK200710130040.html

関西版ではこの記事がカラーのコスプレ集合写真とともに一面に載ってました。まあ、本題は映画村での時代劇制作の新しい試みを紹介することで、戦国祭りのコスプレはついでに触れられているだけなんですけどね…… 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『物語 タイの歴史』

2007年10月12日 | 世界史書籍
柿崎一郎『物語 タイの歴史』(中公新書、2007年9月)

「タイの歴史」と銘打ってますが、特に近現代史に重点を置いています。

タイの歴史は前近代はヴェトナム、カンボジア、ラオスなどの隣国の動向とまとめて扱わざるを得ず、近代以降は英仏など帝国主義国家との関係が焦点となってくるわけで、日本史などとは違って純粋な一国史というのが書きづらいテーマなんですね。山田長政が仕えたアユッタヤー朝なんかも、首都アユッタヤーにはタイ人より外国人の方が多く居住しており、官吏にも外国人を多く登用したということですが。

19世紀半ばの開国以後は、英仏などのヨーロッパ勢力とうまく渡り合って東南アジアでは唯一植民地化を逃れ、第一次世界大戦ではそれまでドイツとも関係を有していたにも関わらず、連合国側に与して戦勝国の一員に加わり、第二次世界大戦では色々あって日本と手を結ばざるを得ないハメになりますが、一方でこの状況を利用してかつてフランスに奪われた土地を奪い返すという離れ業を達成し、更に大戦後には日本との提携は日本側に無理強いされたものだと言い張って連合国側への宣戦布告宣言が無効であると認めさせ、国内の工業化にも成功するといったように、ひたすら世渡りがうまく、要領が良いタイの姿が活写されます。

一方で、経済的な成功と前近代のタイの支配領域を復興させようとする「大タイ主義」が周辺諸国で反タイ感情を呼び起こし、日本と同様に歴史問題や経済格差などで周辺諸国への配慮を示す必要に迫られるといったように、現在では先進国ならではの課題を背負うようになったとのことです。

政治的には西洋的な民主主義がなかなか根付かず、民主主義的な経緯で成立したはずの政党政治が腐敗し、国民の民意を反映しないという状況にしばしば陥り、民意を承けた形での軍人によるクーデタと国王による調停がその是正手段になっているという現実が描かれます。しかし政治の分野でもこういうセーフティネット(?)をきっちり用意しているあたり、やっぱり要領の良さが感じられるのですが(^^;)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

狄仁傑映画とブリジット・リンの三蔵法師

2007年10月11日 | ニュース
「ツイ・ハーク監督、唐の探偵・狄仁杰を映画化」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071010-00000039-scn-ent

この表題だと狄仁傑がまるで本職の探偵みたいだというツッコミは置いておいて、何となく『老鼠愛上猫』(邦題:『剣客之恋』)みたいな微妙なコメディに仕上がりそうな気がするのは私だけでしょうか(^^;)

ツイ・ハークは以前に企画していた『西遊記』映画で林青霞(ブリジッド・リン)を三蔵法師役にしようと考えていたとのことですが、そんなら少し前に日本の『西遊記』ドラマで女優が三蔵法師を演じているのは怪しからん!と物議を醸していたのは一体何だったのでしょうか…… もしこの映画が形になっていたとしたら、やっぱり槍玉に挙がることになったんでしょうか。気になるところです。

個人的には、ブリジット・リンの三蔵法師を是非見てみたかったですね(^^;)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『百家講壇 孔慶東看武侠小説』その4(完)

2007年10月10日 | TVドキュメンタリー
『孔慶東看武侠小説』第12集~最終第14集まで鑑賞。

第12集「金庸小説的『短平快』」
『越女剣』・『鴛鴦刀』・『白馬嘯西風』の3つの中・短編について論じる。『越女剣』は金庸作品の中で最も短いが、愛情・歴史・神話・政治など様々な要素が詰まっている。またこの作品に登場する范蠡は、いわば革命を成し遂げた後であっさりと自らの地位を捨てて隠退したという点で、金庸が最も羨んだ歴史上の人物である。『鴛鴦刀』は最も喜劇的な作品で、金庸作品でしばしば見られる宝探しモデルを採る。『白馬嘯西風』は主人公の李文秀を中心に登場人物の片思いが連鎖する作品で、人類が永遠に解決できない問題のひとつ、すなわち民族間の対立を描く。

第13集「飛狐的故事」
『雪山飛狐』は百年にわたる歴史的背景がある物語を1日の物語に縮めており、西洋古典主義戯曲の手法「三一律」(1つの物語を1つの場所で1日の中で語る)を採っている。この物語の影の主人公は胡一刀で、他の人物の口を借りてその生涯が語られるが、これは旧来の章回小説とは異なる新しい文芸小説の手法であった。ただ、この作品では本来の主人公である胡斐の個性がほとんど描かれず、それを補うために彼の成長の過程を示す物語として『飛狐外伝』が書かれた。『飛狐外伝』の胡斐は見も知らぬ人々の利益のために戦う儒教的な「大丈夫」である。他人の利益のために戦うというのは共産党が天下を得た理由であり、『飛狐外伝』はその意味では革命文学と言えよう。

第14集「品読『書剣恩仇録』」
『書剣恩仇録』は金庸の処女作であり、彼を有名にした作品でもある。乾隆帝が実は漢族であるという伝承は、彼以後のすべての清朝皇帝が漢族であることをも示しており、本当は満州族に漢族の江山が奪われていないと、漢族が自らを騙すことに繋がる。これは魯迅が『阿Q正伝』で批判した精神的勝利法である。主人公の陳家洛は伝統的な文人・才子の長所と欠点を併せ持っており、金庸は陳家洛の描写を通じて伝統的な文人のあり方を批判している。小説を通じて中国人の国民性を批判するという手法は、金庸が学校で教育を受けた1930~40年代の頃の気風によるもので、魯迅による国民性批判を継承している。

金庸小説が一面で魯迅の小説のあり方を継承しているという指摘は、昨今中国の国語教科書で魯迅の作品が外されて金庸の『雪山飛狐』が新たに加えられたことが物議を醸していることからすると、何やら感慨深いものがあります(^^;) しかしとなると、中国人の国民性を主人公の韋小宝を通じて明るく肯定的に描き出した『鹿鼎記』をどう評価するかという問題が出て来るわけですが……

新派武侠小説三大家の中で金庸が筆頭とされるのは、新しいものを取り入れつつもきっちり中国通俗小説の伝統を踏まえているからなんでしょうね。この辺り、梁羽生は伝統の方に寄りすぎる観があり、古龍は新しい手法に寄りすぎていていまいち落ち着かないということなのかもしれません。

以上で孔慶東先生の講義は終了ですが、取り扱われる作品にだいぶ偏りがありましたね。『射英雄伝』・『天龍八部』などについて頻繁に言及される一方、『碧血剣』・『笑傲江湖』・『倚天屠龍記』についてはあまり言及されず、『侠客行』に至っては記憶の限り全く扱われませんでした。

このシリーズ、正直面白い・面白くないで評価すると、かなり微妙な評価にならざるを得ません(^^;)  もっとも内容が初心者向けなのは『百家講壇』シリーズ全体の方針で、致し方のないところでしょうけど。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『七侠五義』

2007年10月08日 | 映画
『七侠五義』(徐増宏監督、1967年香港)

南侠展昭は包拯や皇帝の妹の永安公主を刺客から守ったことによって四品御前侍衛に任じられ、「御猫」の称号が与えられるが、それが気に食わない白玉堂ら五鼠は宮廷に忍び込み、皇帝が永安公主に与えた宝物を盗み出し、展昭に挑戦する。その頃、同じく宮廷で宮女三名が殺されるという事件が起こっていた。実はその犯人は淫賊として名高い花蝴蝶の花沖であったが、展昭は五鼠が宝物を盗むとともに宮女らも殺害したと思い込み、罪を糾すべく陥空島へと乗り込む。

要するにショウブラ版『三侠五義』です。同じく『三侠五義』を題材にした『御猫三戯錦毛鼠』がドリフのコントみたいな展開であったのに対し、こちらはきっちり活劇に仕上がっています。悪役の花沖を演じているのはショウブラ映画ではお馴染みの羅烈(ロー・リエ)でありますが、いやあ、若い、若い(^^;) ただ、展昭らが軽功で飛び上がるたんびに妙な効果音が鳴るのはどうにかならなかったもんでしょうか……
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『百家講壇 孔慶東看武侠小説』その3

2007年10月07日 | TVドキュメンタリー
国際クロスメディアシンポジウムも終わってテンションが下がり気味ですが、『孔慶東看武侠小説』第9~11集まで鑑賞。今回は『射英雄伝』シリーズです。当然のごとく李亜鵬版ドラマ『射英雄伝』の映像が流れまくりです。

第9集「『射英雄伝』中的愛情(上)」
武侠小説に最早不可欠の要素となった恋愛。ここでは黄蓉と郭靖のほか、脇役の程瑶迦の恋愛を扱う。程瑶迦の初恋の相手は郭靖であったが、初恋は恋愛学校とでも言うべきもので、恋愛の練習のようなものである。彼女の本当の恋愛相手となったのは陸冠英であった。彼女は黄薬師、そして郭靖と黄蓉が密かに見守る中、彼への愛を確認する。

第10集「『射英雄伝』中的愛情(下)」
周伯通は若い頃の過ちに対する悔恨を武功の鍛錬に転嫁しているが、武芸者や好漢が女色を近づけないこと自体は『水滸伝』以来の伝統である。黄蓉は郭靖とコジンとの婚約が判明した際に、恋愛と結婚を区別して考えるという現代的な考え方を示した。このような考え方を1950年代に示した金庸はやはり凄い。

第11集「『射英雄伝』的文化魅力」
『射英雄伝』は1957年に最初に発表されたが、金庸をベストセラー作家に押し上げ、画期となった作品であった。この小説が完結するや、前伝・後伝・別伝・外伝の類が作られた。(映画の『楽園の瑕』もその中に含まれる。)また、この作品は武侠小説の良き入門書ともなった。『射英雄伝』は他の武侠小説とは違って徒に暴力を煽る作品ではなく、むしろ人道主義をテーマとしている。小学生でも読めるストーリーなのに、テーマが奥深いというのが大人の鑑賞に堪える理由である。また、この作品は人々の生活や文化など森羅万象を映し出すという中国通俗小説の伝統・長所を継承している。

第11集での孔慶東と『射英雄伝』との出会いの話が面白かったですね。孔氏は北京大学中文系の学生だった時に(氏は1964年生まれとのことなので、1980年代初めの頃のことと思われますが)学生幹部を務めており、同級生が読み耽っていた『射英雄伝』を、低俗な武侠小説なんぞを読んでいるとは怪しからんと取り上げて試しに読んでみたところ、逆に金庸小説の魅力に取り憑かれてしまい、こんな面白い作品がどうして中国文学の講義で取り上げられないのか疑問に思うようになったそうです(^^;)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

な、なんだってーーー!!?

2007年10月05日 | ニュース
例によって2ちゃんねるの武侠・古装劇関係スレを見てましたら、恐るべき情報を発見……

それはBSジャパンで10/7からドラマ『関羽』の放映が始まる……ことではなく、コニービデオからトニー・レオン、アンディ・ラウ版の『鹿鼎記』のDVDがリリースされることです。しかもノーカット版……↓
http://www.chinasoft.co.jp/catalog/1-dorama/roku/main.html

このメーカー、いつもは『三国志』とか安全パイの作品しか手を出さないくせに、突然大清帝国シリーズと銘打って『康熙王朝』・『雍正王朝』をリリースしたりと、たまにこういう冒険をしますね。

80年代TVB金庸ドラマシリーズの中で、『射英雄伝』や『神雕侠侶』ではなくこの作品に手を出したのは、トニー・レオン、アンディ・ラウの二大スターが共演しているから(更に言えば、それに加えてレスリー・チャンが主題歌を歌っているから)でしょうけど、日本の武侠ファンには『鹿鼎記』のウケが悪いというような事情は全く把握していないんでしょうなあ…… 個人的にはフェリックス・ウォン主演の『射英雄伝』をリリースしてほしいところですが。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『興亡の世界史04 地中海世界とローマ帝国』

2007年10月04日 | 世界史書籍
本村凌二『興亡の世界史04 地中海世界とローマ帝国』(講談社、2007年8月)

正直、塩野七生『ローマ人の物語』のダイジェストといった感じの本です(^^;) 著者もこのシリーズを愛読しているようですが、特にユダヤ教・キリスト教に対するスタンスが似通っていますね。同じテーマを扱っていても、キリスト教に対して肯定的な見方をしている河出文庫版『世界の歴史』の弓削達『ローマ帝国とキリスト教』なんかを読むと、そう言う見方が妥当であるのかどうかは別としても、古代ローマ史について随分違った印象を受けます。

強いて本書の特徴をピックアップしてみると、共和政期のローマの状況を「共和政ファシズム」と表現していること、ユダヤ人と同様にローマ人も宗教生活の面では特異であったとしていることなどが挙げられますが、残念ながらそれらもそれほどインパクトが強い主張にはなっていません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする