博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

絵本楊家将 第15章 六郎破遼(後編)

2012年03月06日 | 絵本楊家将
第15章 六郎破遼(後編)

次の日、二人は三関に赴いて部将を招集し、魏州に救援に駆けつけました。二人は黄河の渡し口でまた楊継宗という好漢を帰順させました。楊継宗は以前から楊六郎の名声を慕っていたので、部下を引き連れて楊六郎に着いて行きたいと願い出ます。六郎はまた一人良将を得て大変に喜びました。三人は連れ立って太行山へ岳勝と孟良を訪ねに行きました。岳勝と孟良の二人は六郎が生きていたのを見て、驚きかつ喜びました。六郎は皆と挨拶を交わすのもそこそこに、銅台で包囲されている皇帝を救い出すことを告げねばなりませんでした。

岳勝はこれを聞くと、大変不満そうに罵ります。「あの暗君め、物の役に立つなら万々歳だが、役に立たないならいっそ殺してしまった方がいい。天の神のご加護があって、将軍を我らのもとに帰されたというのに、更に救援に赴けとは。我らが都に進撃してご自分が皇帝になられた方がよろしいのでは。我ら兄弟が君臣となったら、どんなに愉快でしょうか。」

皆が話せば話すほど、言うことが過激になっていきます。六郎は怒って一喝しました。「バカなことを言うな!ものの数ヵ月会わないうちに、どうして心が変わってしまったのだ?我らは忠義を尽くして国家に報い、百世まで名声を残そうというのに、どうして一時の快楽を貪り、万世に悪名を留めるようなことを言うのか?」皆は六郎がこのように言うのを聞き、二度と口を挟もうとはせず、救援に行くことに同意したのでした。

それから六郎は兵馬を整えて八賢王と合流し、十二万の大軍を率いて勢いよく魏州へと進撃します。六郎と八賢王は相談のうえ、岳勝を先鋒に任じ、まず敵兵の鋭気を挫かせることにしました。それから孟良と焦賛を左右両翼に分けて敵陣に攻め入らせます。六郎は陳林と柴幹を率いて遊撃隊となりました。

次の日、岳勝がまず兵馬を率いて魏州城下に進撃します。遼将の蕭天佐と耶律慶は馬に乗って出陣し、耶律慶が叫びました。「宋の皇帝の死期はそう遠くはないぞ、お前達はわざわざ殉葬されに来たのか?」岳勝は返事をせず、刀を振るって耶律慶に斬りかかります。二人が激戦になっている間に、孟良と焦賛が左右両翼から攻め込んで来て、ひとしきり遼軍を滅多打ちにして潰滅させました。

六郎がこの時にまた兵を率いて突撃してきます。混戦の中、蕭天佐は楊継宗に矢を射られて落馬しましたが、土金秀が間一髪で助けに入ったお陰で命拾いをしました。耶律慶はこの情景を見て、馬首を巡らせて逃げ出します。岳勝がどうしてそれを見逃しましょうか、追撃して耶律慶を一刀両断に斬り捨ててしまいました。蕭天佐と土金秀は大勢が既に決したのを目の当たりにし、敗残兵と敗将を取りまとめて、夜を徹して幽州へと逃げ戻ります。

楊六郎が城に入って真宗に謁見すると、真宗は誠意を込めて言いました。「そなたは今日朕を救うという功績を建てた。朕はこれからは決してそなたをないがしろにはしまいぞ。」そして彼を加増して三関都巡節度使にしたのでした。六郎は皆に別れを告げ、大軍を率いてまた佳山寨に戻って行きました。

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絵本楊家将 第15章 六郎破遼(前編)

2012年03月04日 | 絵本楊家将
第15章 六郎破遼(前編)

この日、真宗は文武の大臣を引き連れて魏州の銅台まで物見遊山にやって来たところ、はからずも蕭太后の詭計にかかってしまいました。蕭太后は蕭天左と土金秀を派遣し、魏州城を水も漏らさぬほど厳重に包囲させます。

真宗は大変に驚き、慌てて八賢王にどうしたら良いのか尋ねました。八賢王は機が熟したと見て、真宗が六郎を許して無罪にしてやれば、六郎が救援に駆けつけるかもしれないとほのめかします。真宗はその意を悟り、大将の王全節に命令書を持たせ、魏州城の包囲を突破して汝州に行くよう命じました。王全節は命令書を持って汝州に赴きましたが、六郎を見つけることができず、今度は天波府に赴きましたが、何の手がかりも得られません。王全節はどうしようもなく銅台へと引き返します。八賢王はその様子を見て、自ら伴を引き連れて包囲網を突破し、天波府に赴いて六郎を訪ねることにしました。

佘太君は八賢王が自らやって来たのを見て、六郎を地下の穴蔵から出て来させました。八賢王は言葉巧みに説得し、六郎は遂に銅台に救援に赴くことを承諾したのでした。そこで二人は別行動をとることにし、八賢王は朝廷に戻って辺境の軍隊を徴集し、六郎は孟良や焦賛らの部将を招集します。

この日、六郎は州にやって来てあちこちで焦賛の消息を尋ねて回ります。そこへ突然僧侶たちが何やら話をしながら通りかかるのが目に入りました。六郎はそこで進み出て尋ねてみますと、僧侶たちが言いますには、「この州の泗川堂という所に一人の男が現れまして、出家人と見ると難癖をつけ、僧侶や道士を捕まえてはその人の主人のために経を読ませるのです。」

六郎はその男というのが焦賛であるに違いないと見当を付け、僧侶たちとともに泗川堂までやって来ました。六郎が中に入って見てみると、果たして焦賛が香が焚かれた祭壇の上で寝転んでいるのが見えました。六郎が体を揺さぶり、焦賛がカッと目を見開くと、六郎が目の前にいますので、驚きかつ喜んで言いました。「将軍はてっきり朝廷に処刑されたものと思っていましたのに、今日こうしてまたお会いすることができるとは、本当に嬉しくて涙が出そうです!」

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『鴻門宴』

2012年03月03日 | 映画
『鴻門宴』

劉邦を黎明(レオン・ライ)、項羽を『宮』でオラオラ系DQNの八阿哥を好演した馮紹峰、虞姫を劉亦菲が演じた豪華キャストによる楚漢戦争映画。山場となるのはタイトルにもなっている鴻門の会ですが、そこでなぜか張良と范増が囲碁で勝負をすることに……

張良役は『孫文の義士団』の孫文役やドラマの新版『水滸伝』の宋江役でお馴染み張涵予です。


范増役はこれまたいろんな作品でお馴染みの黄秋生(アンソニー・ウォン)。目が見えないという設定になってます。


本作の主役は項羽と劉邦ではなく、この2人であると言えましょう。

で、これまで囲碁の対局では負け無しだった張良ですが、劉邦陣営の運命を賭けた勝負で范増に敗れ、一党もろとも命を奪われる所を、劉邦を助命せよという懐王の勅書を持った韓信が到来してギリギリのタイミングで命拾い。劉邦はここで「オレたちの鴻門宴はこれからだ」(意訳)という捨て台詞を吐いて封地の漢中へと赴任していきます。

一方、劉邦と別れて項羽の配下となった張良ですが、劉邦のために范増の追い落としを謀り、見事に成功。項羽に隠居を迫られ、しかも余命幾何もない范増ですが、今際のきわで見舞いにやってきた張良に「お前は若い頃のオレ自身だ、オレたちは表裏一体なのだ」とか何とか言い残して息絶えるシーンには、なんとなくBL的なサムシングが感じられるのですが、こんな展開にして一体誰得なのかとツッコミたくなります(^^;)
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絵本楊家将 第14章 智救楊六郎(後編)

2012年03月03日 | 絵本楊家将
第14章 智救楊六郎(後編)

六郎が汝州に着くと、太守の張済が尋ねました。「将軍は佳山寨を守られていたそうですが、どうしてこんなことになってしまったのですか?」六郎はそこで起こったことの一切合切を張済に対して説明します。張済はひとしきりため息をついて言いました。「将軍、しばらくは我慢なさって街の西で官酒の製造の責任者をお務めください。半年か一年もすれば、朝廷はきっとまた将軍を起用されましょう。」

楊六郎が汝州に配流された後も、王欽はまだあきらめず、ひたすら六郎を死地に追い込もうとします。朝廷は酒税を非常に重視していましたので、王欽は六郎に無実の罪を着せようと真宗の面前に駆けつけ、六郎が汝州に着いて一月も経たないというのに、酒の密売によって金を稼ぎ、反逆をたくらんでいると弾劾しました。真宗はそれを聞くと怒りで顔色を変えて言いました。「朕は楊家に功績があることを考慮して死罪を免じてやったというのに、今またこんなことをしでかすとは、何というやつだ!」すぐさま命令を下し、呼延賛に汝州に行かせて楊六郎の首を持ち帰るように言いつけます。

八賢王がまたもや情状酌量を頼みにやって来ましたが、真宗はまったく聞き入れずに言いました。「そなたは毎回やつを庇い立てするが、まさかやつの部将が謝副使を殺していないとでも申すつもりか?」八賢王は返す言葉も無く引き下がり、寇準のもとに出向いて善後策を話し合います。寇準が言いますには、「派遣されたのが呼延賛殿というのは不幸中の幸いです!呼延殿に汝州太守とともに六郎と容貌がよく似た囚人を捜させ、その者の首を代わりに差し出させるのです。その後六郎を逃亡させて匿っておき、いずれ国家に危機が訪れましたら彼を推挙すればよろしいでしょう。」八賢王は妙案だ妙案だと褒め称え、呼延賛のもとに赴きました。呼延賛は言いました。「殿下、ご安心ください。必ずそのように致します。」

呼延賛は汝州に到着すると、太守の張済に皇帝の命令書を見せました。張済が驚いて言いますには、「楊将軍が反逆を企んでいるなど、まったくの出鱈目です。陛下はどうして忠臣を殺そうとなさるのですか?」呼延賛はその様子を見て八賢王の計略を彼に話して聞かせます。張済は言いました。「私も同感です。国に楊将軍がおらずして、どうして辺境が平穏を保てましょう。」二人はすべてをうまく取り計らい、六郎に平民に扮装して逃亡するようにさせる一方で、死刑囚の中から六郎と顔つきが似た人を捜し出して首を刎ね、呼延賛はそれを汴梁へと持ち帰りました。

その日の早朝、呼延賛が六郎の首を差し出すと、真宗は自ら首実検をします。文武の大臣たちはそれを見ると一様に頭を下げてため息をつき、誰一人としてそれが偽物ではないかと疑問を抱きません。八賢王は見破られるのを恐れ、真宗に対して言いました。「楊延昭は既に罪に服しました。陛下におかれましては何卒首を楊府にお返しになり、埋葬を許されますよう。」

真宗はそれを聞き入れ、六郎の首を楊府に送り返すよう命じました。首が届けられると楊府では屋敷中の者が悲嘆に暮れます。後に六郎が楊府に戻ると、楊家の人々はようやく事情を知り、悲喜こもごもとなりました。そして彼を穴蔵に匿い、静かに時期を待つことにしたのでした。

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TVB96年版『笑傲江湖』その1

2012年03月01日 | 武侠ドラマ
香港TVBで1996年に放映されたドラマ版『笑傲江湖』を見始めました。実はこのドラマの存在をつい最近まで知らなかったのですが、熱いOPに惹かれて見てみることに。今回は第1~7話まで見ました。

このドラマでは、嵩山派掌門の左冷禅が五嶽剣派の盟主に就任する所から話が始まります。盟主の選出にいまひとつ乗り気でない岳不群ら各派の掌門ですが、そこへいきなり任我行ら日月神教教主の幹部連が乱入。各派の掌門が教主の任我行や光明左使の向問天に敗れ去る中、左冷禅が一人気を吐いて任我行と互角の勝負をしたことで、狙い通り五嶽剣派の盟主就任を果たします。

この場面で光明右使の曲洋と衡山派の劉正風が互いにアイコンタクトを交わしてますが、これはもちろん後に2人が知音という名のおホモだちになる伏線というわけですね。一方、黒木崖に戻った任我行は教団の運営を副教主の東方不敗に任せきりにして吸星大法の修練に専念しますが、東方不敗に裏切られて教主の座を奪われてしまいます。

で、それから12年後。秘伝の「辟邪剣譜」を狙う青城派によって福建は福州の福威鏢局が殲滅されてしまい、1人逃げ延びた鏢局の一人息子林平之が華山派に弟子入りし……と、原作冒頭のエピソードに続いていきます。

主人公の令狐冲は、原作では序盤でなかなか姿を現さないのですが、ドラマではあっさり第2話から登場。



演じているのは呂頌賢という香港の俳優さんですが、他のドラマ版や映画版で令狐冲を演じた俳優さんと比べると、だいぶ雰囲気が合ってるような感じがします。特に令狐冲の調子に乗ってる中高生男子っぽい所がうまく表現できているのではないかと(^^;)

他のバージョンでは女優さんが演じたりしていた東方不敗もこの通り……



ちゃんとおっさんが演じております。終盤で再登場する時にどんな風に様変わりしてるのか楽しみですねーw

ここまでは取り敢えず原作のエピソードを丁寧に再構成している感じが窺えるので、この調子で最後まで突き進んで欲しいものですが……
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