この「バットマン」シリーズの第3作目も期待に違わず、すごい作品だった。
実を言うと3作目を作ると聞いて非常に心配した。
ホントに観るのが怖かった。
「コケるんじゃなかろうか・・・」ってね。
ガッカリはしたくなかったし・・・、
できれば続編じゃなくてまったく別の作品をつくってほしい・・・なんて思ったりもした。
シリーズのパート3までおもしろかった映画なんてこれまで皆無だったからね。
1作目の「バットマン・ビギンズ」も面白かったけど、特に2作目「ダークナイト」が傑作だったしホントに心配してたけど、それは杞憂に終わったよ。
ジョーカーとはまったく別の種類の敵。
個人的にはこの敵のキャラクターがいかにリアルに、しかも共感できるものになってるかが鍵だった。
それをクリストファー・ノーランは見事に表現して魅せてくれた。
「奈落」の底で絶望と痛みに苦しみながら、それに耐えることによって強くなっていった「ベイン」。
彼の印象的なセリフとして「希望というものがあるからこそ、それが叶わないとわかったときの絶望はとてつもなく深い・・・。」
確かに真理をついており、彼の生きてきた境遇からそう思い至っても無理はないと思わせるようなエピソードもしっかり表現されてた。
でもバットマンには最後の最後にこういう真逆のセリフを言わせる。
「大げさなことをする必要はない。ささいなことでいい。どんな絶望的な状況でも少しの希望を与えられるようなちょっとした声をかけてあげること。そういうことができればそれが真のヒーローなんだ。」
思わずウルルとなっちゃったよ。
この人の作る映画の根底にはこういう思想が流れてるから好きなんだな。
それはクリント・イーストウッド監督作品にも通ずる。
ラストは新しい「ダークナイト」ロビンが生まれることを示唆するようなエピソードも入れ、
「キャット・ウーマン」という言葉は使わないものの上手にそれとわかるようなキャラも登場させるし、
バットマンが最後はホントは生きてるのか死んでるのかすらもハッキリしない終わり方なのに
それでもまったくそんなことどうでもよいと思わせるほどの満足感があり、
この監督の力技はホントに素晴らしいものがある。
子どもの頃に見たTVシリーズのバットマンやティム・バートン監督のシリーズのバットマンはまったく面白いなんて思えないものばかりだったが、
「アメコミのヒーローもの」でこんなに深い映画が作れてしまう人ってそうそういないと思うよ。
しかもシリーズそれぞれ完結したお話なのに毎回違う楽しみを用意し、
なおかつ根底に流れる思想は変わらないなんて、
こんなにクオリティの高いシリーズ物には金輪際お目にかかれないんじゃないかと思う。
あと余談なんだけど
映画を観終わった後、
妻は「ブルース・ウェインは生きてるんじゃないか、執事のアルフレッドは現実に生きてるブルースにあったんだと思う。キャットウーマン役の女性と暮らしてるという設定なんじゃない?」という意見だったが
ボクの意見は、ブルースはもう死んでしまってて、最後にアルフレッドが見たのは幻であり彼の願望でもあったんじゃないかって思うんだけど
ホントのところどうなんだろうね。
核爆発から逃れるなんてそうそうムリだろうって勝手に決めつけちゃってるんだけど。
まあ、でもそんなのどっちでもいいか。(苦笑)
わかってることはこのシリーズはこれで完結するということで
不出来な作品になりはしないかという要らぬ心配をする必要はなくなったってコトは確かだ。(笑)