NHK-BSで「近代中国で君臨した女」シリーズの第4回「マダム毛沢東・江青」をみた。
彼女に対しては、これまで文化大革命の指導者という印象しかなく、その文化大革命にしてもそれまでの文化をことごとく否定する運動で、自分達に反逆する人たちに対しても粛清を繰り返し、その結果何万人もの犠牲者が出たというくらいしか知識はなかった。
ジョンレノンがビートルズ時代に「レボリューション」という歌の中で、その運動の暴力的なところを批判的に歌っていたんで、昔から興味があったということもあった。
その番組でも、やはり彼女の「権力志向」、「出世欲」、「女優的な生き方や振る舞い」等々いろいろ批判的にコメントされていた。
が、ボクの印象に残ったのは裁判中に発した彼女の「私は毛沢東の犬だった」という言葉だった。
彼女は毛沢東が亡くなった9日後に逮捕されたらしいんだが、
それってつまり周囲の連中は、実は毛沢東が怖かったんじゃないのかなって思ったんだよね。
「血の粛清」は実際は毛沢東の意を汲んだものだっていうことをうすうす感じてたんじゃないのかな。
んで妻である彼女のことは「トラの威を借るキツネ」ぐらいにしか感じてなかったんだろうと思う。
毛沢東は中国建国の父でもあるし、批判しづらかったこともあるんだろう。
きっと、彼女の「毛沢東の犬」発言も文化大革命は毛沢東の意を汲んだものということをあらわしてるんだと思う。
毛沢東はそれができるくらいカリスマ性のある人だったんだろうね。
ボクには、江青という人がその毛沢東に殉じて自分から矢面にたった人のような気がした。
周りのライバル達も毛沢東への批判を「江青」に押し付けるのにちょうどいいと思ったに違いない。そうすることによって毛沢東シンパからの批判を反らすこともできるしね。
もちろん、それまでの人生で名前を次々に変えていき、その場面場面で様々な顔を見せた彼女の中にもエキセントリックな面があったんだろうけど、
毛沢東が主席として行った農業政策で何千万人という餓死者を出して失敗し、主席の座を追われたところから
彼女は頭角を現し、毛沢東復権を目指していったらしいから
江青という名前になってからは毛沢東に殉じる人として生きてきたんだろうと思う。
死刑判決(後に無期懲役に変更された)を受けた10年後に首吊り自殺で亡くなった(このことにもちょっとビックリした)が、
そのとき新聞の切れ端に遺書のような走り書きが残されてたとのこと。
その内容は
「毛主席、あなたの生徒、あなたの同志が、いまそちらに行きます。」
スタジオのコメンテイターは、これも彼女の周囲の耳目を引くための演出だという解釈をしてたし、大方その見方でまちがってないんだろうけど
ボクはまったく違う印象を持ったなあ。
愛した男性が権力志向のカリスマだったから、彼女もそれに巻き込まれてしまったんじゃないか、
その男性に喜んで欲しかっただけの、実は愛情に飢えた一人の女性だったんじゃないかってね。
パア~っと節目節目の内容を取り上げ、大急ぎで人生を振り返っていくという番組だったけど
彼女の思ったこと、感じたことに思いを馳せることができて
なかなかおもしろい番組だった。
まるで、ひとつの感動映画を観終わったときのような虚脱感を味わった。
やっぱりNHKには、変なバラエティ番組じゃなく
こういう番組作りをやっていって欲しいね。