この岳に生きる

「この岳に生きる」とは僕の所属する山岳救助隊の記念誌の題名です。 北アルプス飛騨側で山と共に生きている僕の見た風景です。

60周年式典

2019年12月02日 | 山岳救助

このたび僕の所属する山岳救助隊が発足60周年を迎えた。前回50周年のときも盛大に式典を開催したがあれからはや10年経った。

僕も入隊させてもらって23年。10年前のこともこのブログに書いてあった。

あのころから比べると遭難現場に僕ら民間人が出動することはめっきり減った。警察の山岳警備隊が地道に訓練を重ね実力がかなり付いたのでほとんど警察だけで対応している。

しかし僕らも登山者に安全登山の啓蒙活動や山岳パトロールなどやることはたくさんあり地元の山を守るという役割はまだまだある。

この度、表彰をいただいたが、もちろんそのためなんかにやっている訳ではなく大好きな地元の山に来て登っている登山者が困っていることがあったときなど力になれればと思って頑張ってきた。

その頑張りが認められたことは素直に嬉しい。今後も登山者がいるかぎり遭難は必ず起きる。この救助隊を無くすことはならない。これからも悲惨な遭難を少しでも減らせるよう隊員一同頑張ってやっていく気概を再確認した日になった。

 


学校登山

2019年07月25日 | 山岳救助

霞むピラミッドピーク

毎年恒例、地元の小学生の親子登山のサポートで西穂独標まで行ってきた。

少子化でこの学年の子供達は6人しかいなかった。なんとも寂しい限りだが人数に関係なくこちらは全力でサポートするのみである。

やはり体力が子もいて一人は丸山までとした。

独標ではガスも晴れ穂高の姿を見ることができた。子供達の良い思い出つくりに協力できてよかった。



山岳救助訓練

2019年06月29日 | 山岳救助

下山は背負い搬送を兼ねて。

先日僕の所属する山岳救助隊の訓練がおこなわれた。

今回の参加者は救助隊、警察の山岳警備隊合わせて20名ほどである。出発地でいろんな装備を大量に皆で分けて持っていく。

ロープ、ストレッチャー、カラビナ、スリング、プーリー、AD等々。まずは地元の山を2時間ほど掛けて山頂目指して登った。

ロープなどを駆使してレスキュー。

下山しながら途中の斜面で懸垂下降や遭難者の引き上げ訓練を開始。警備隊員からの指導のもと皆真剣に取り組んでいた。

状況にあわせて支点の構築などは頻繁に訓練を重ねて経験を積まないと中々スムーズにできない。いかに日頃からの救助隊員としての意識や訓練が大事か改めて気付かされた。

訓練を頻繁に行なっている警察はさすがに頼りに成る。自分たちも日頃仕事を持っている民間人の集まりだがレスキューの現場に行けばそんなことは関係ない。

少なくとも足だけは引っ張らずあてにされる存在とならなければならない。

引き上げ訓練を終えてあっと言う間に時間が過ぎて下山開始。遭難者を背負っての下山である。

僕も久しぶりに人を背負って歩いたが中々沢山歩けるものでもない。皆で交代で背負うが仲間の存在は本当に有り難いものである。

訓練後はこれも久しぶりに懇親会を行なった。日頃顔を合わせることがあまり無い人とも親睦を図ることが出来た。

少しでも顔見知りになっていれば現場でもスムーズに行くと言うものである。楽しく飲んだりすることも必要で大事なことである。

定期的に訓練は行なって行きたい。



道徳の教科書に

2018年06月02日 | 山岳救助

近所に住む日頃から大変お世話になり僕の所属する山岳救助隊の元隊長で大先輩が書かれた手記が来年の中学校の道徳の教科書に採用された。
内容は読んで戴ければ解るが遭難者を助けた救助隊員が後日非礼を受けたと言う内容である。

僕も同じ現場にレスキューに行ったことがあるがそこは秋まで雪渓の残る日本でも屈指の険しい谷で助けるほうも命がけである。

しかし遭難があれば誰かが行かなければならない。

助ける側にも家族があり背負って行かなければならないモノがたくさん有る。

感謝して欲しいとまでは言わないが非礼で返すなんて事は無くなって欲しい。

道徳教科書に飛騨の救助隊 山岳遭難者の非礼テーマ | 岐阜新聞Web

 


夏山パトロール

2017年07月26日 | 山岳救助

昨日は雨の降りしきる中、遭対協の夏山警備の活動で、西穂高へいってきた。朝からひどい雨だったので行ける所までと考えていた。

山荘に着いたときは土砂降りだったので丸山くらいで他の登山者もいないし引き返そうと思っていたが稜線にでると小降りになってきた。

さらに行けるところまでと、独標を目指したが風も弱くガスも少し取れてきたので山頂を目指した。

ロープ駅発から2時間50分で山頂に着いた。

これから夏山シーズン真っ盛り。安全登山を祈る。


重なる日

2015年07月30日 | 山岳救助

今日は、娘の学校登山で親として救助隊員として一緒に西穂高登山に行ってきた。
天気は小雨が降っていた。
あと少しで山荘という所で西穂高山頂から間ノ岳へ向かったところで怪我人が発生したと連絡が入った。
学校登山のサポートはここまでで、山岳警備隊員と2人で急遽現場へ向かった。
天気が悪いのでもしかしたら今日はヘリが飛べず遭難者とビバークする可能性もある。
僕はこのところの激務で体調があまり良くなく足が攣ったりペースが上がらない。
しかし、12時半頃遭難者とドッキングできた。足を強打していて風呂歩くことは出来ないがそのほかは元気だ。
天気の回復を待ってヘリでの救助しかないが辺りは真っ白で無理だ。
とにかくガスが取れるのを待つが雨が降ってきた。遭難者にツエルトを掛け、僕たちもツエルトに潜り込み何とか雨をしのぐ。
このまま晴れなければビバークである。午後4時を過ぎた頃ガスが取れてきた。しかし、ヘリが近づけるか微妙である。
ガスったり晴れたり一喜一憂しながら待った。ヘリも懸命に入ってきてくれようよしている。音は聞こえても姿が見えなかったりもどかしい。
何とかガスが取れた僅かチャンスで3人をピックアップしてくれた。
遭難者はそのまま病院へ行った。無事レスキュー完了である。
同じころ長野ではクライミング中の事故で宙吊りのレスキュー活動中であった。あれは大変だっただろう。
さらに穂高岳では2人が救助を待っていた。いずれも今日中に終わって良かった。

雨、雨、雨

2014年08月17日 | 山岳救助

8月に入ってから思い返してみても1日しか晴れていない。

全く夏らしくないがそれなりに登山者もいる。そんな中増水した滝谷で3人が流されてしまった。

今日は僕は行けなかったが仲間の山岳救助隊員が朝から捜索に行って二人は発見したようだ。呼びかけには反応していない。

残念だが現場はまだ水が多く明日も捜索は続く。

槍平からの下山ルートは今回のように増水すると渉れなくなるので奥丸山から左俣へ降りるルートが何年か前に作られているがあまり使われていないようだ。

奥丸ルートを使っていれば今回のようなことには成らなかったかもしれない。しかし、今回は渡渉に失敗したというよりも沢の様子が一変してしまったようである。確かにアノ時間このあたりでも激しい雨がいきなり降ってきた。

なんにしても山は怖い。


あとから思う

2014年05月13日 | 山岳救助

Img_20140510_225604610_2 力を合わせて。

先日の救助活動を終え、しばらくして思い返してみると、ああすれば良かったとか色々思いが出てくる。

最近は僕たちの山岳救助隊は現場に出る数は以前より減っているが、今回のようにいつ出番が出てくるか分からない。

その為にも日頃からの訓練は本当に大事だと改めて思った。

実際遭難者を目の前にすると精神的にイケイケ状態になり周りが見えず突っ込んで行きそうなって今回のように夜はとても危険だ。

訓練を積み重ねれば現場で心に余裕ができて落ち着いて冷静に行動できて安全に繋がると思う。

しかし、1人だけ飛びぬけて技術を持っていてもその場にいるみんなの力を合わせなければ安全にまた確実に救助できない。

遭難者を背負わなくてもライトで道を照らしてくれたり、足場を教えてくれたり、現場にいる人一人一人の力があって救助ができる。

救助隊、警備隊日頃からのコミュニケーションも図りたい。(たまには飲むことも大事?)

とにかく今回の経験は次に繋げたい。


夜のレスキュー

2014年05月11日 | 山岳救助

昨夜、近くの登山道で下山中怪我をして動けなくなってしまい助けて欲しいという救助要請が入った。

すでに外は真っ暗な時間だが行くしかない。山岳救助隊、山岳警備隊すぐに行ける者で、第一陣として出発。

通報者の説明も曖昧だが、感覚として遭難現場を目指した。

登り始めてしばらくして大声で呼びかけるとホイッスルの音が微かに聞こえた。登山道からはかなり外れている深い藪のほうから聞こえた。

どうやら上部の雪で登山道を見失い、急斜面でスリップして怪我をしたようだった。

しばらく藪の中を探すが夜は中々見つけられない。しかも急斜面で自分たちも滑り落ち危険だ。

なんとか遭難者を発見し救助に入る。そこからが大変だった。遭難者を背負って登山道まで引き上げなければならないが、藪が壁になって行く手を阻むし、なにしろ急斜面。交代で背負って上からロープで引き上げてもらう。

やっとのこさ登山道まで上がると後続の救助隊員が何人も応援にきてくれた。本当に心強かった。

あとは安全な登山道を交代で背負って降りるだけ。

救急車に引き継いだ。帰宅すると午前1時。

命に別状は無くしばらくすれば回復するだろう。

今回は新たな訓練の課題がみつかったレスキューだった。


西穂パト

2014年05月02日 | 山岳救助
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昨日は、西穂高独標までいってきた。
GW後半の平日で天気も悪く登山者は僅かだった。
すぐに帰ってももったいないので雪の斜面でロープワークなどの訓練をちょっとだけして帰ってきました。
稜線の雪はずいぶん融け夏道が出てきました。
連休中はかなりたくさんの登山者が登ると思いますが事故がおきませんように・・。