はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

もやい結び ~ロープにもやい結び~

2019年03月05日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 昨日に続き、過去の記事のおさらい。

 木を伐採するときに使えるロープに結ぶもやい結び。

 

 木を伐採するとき、木上にロープを引っかけますよね?

 高い位置にロープを引っかけて、その手元で、もやい結びをしてしまうと、ロープを掛けた高さ分、ロープに無駄な部分が出来ます。

 必要以上に大きく、無駄な輪っかが出来てしまいます。

 そこで、登場するのが、ロープに結ぶもやい結び。

 もやい結びの方法は前回と同じですが、木に結ぶのではなく、ロープに結びます。

 このまま引っ張ると、結び目がスルスルスルッと上まであがって、締まるので、ロープを無駄なく使うことが出来ます。

 って、文章だけでは、分かりにくいので、一度、動画をご覧ください。

 

 

 ん~・・これで、分かっていただければいいのですが・・・。

 ただし、この方法は、一度かけてしまうと、木を伐倒するまで、ロープを回収できないので、注意してください。

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もやい結び

2019年03月04日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 以前にもご紹介したんですが、再び掲載。

 更新数を稼ぐつもりじゃないんですけど、何年も前の過去の記事って、読まれないだろうなと思うので。

 もやい結びは覚えておくと、ホント、便利です。

 立木の伐採時にも使えますし、自動車の牽引にも使えます。

 そして、ブランコを作るときにも使えます!

 

1.まず。輪っかaを作ります。

 写真左は「輪っか内側Ver」、写真右は「輪っか外側Ver」です。

 お使いの端末によっては、左の写真が上に、右の写真が下になっているかもしれません。


 この時、木側に掛けているロープが上になるように輪っかを作ります。

 

 

2.ロープAを下から、輪っかaに入れます。

 

 

3.次は、ロープAをロープBの下へ通します。

 

 

4.ロープAを上から、輪っかaに入れます。

 

 

5.最後に、ロープBを引っ張って、完成。

 

 

 結び目はこんな感じ。

 

 

 最後に、もやい結びの動画も載せますので、ご参考ください。

 (カメラをアゴで挟んで撮影したので、少し醜いですが、ご容赦下さい

 

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作業道 クラックと崩壊

2019年01月31日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 10年くらい前のお話で、どこの現場とは言えませんが、以前、僕が担当していた搬出間伐の現場であったお話です。

 ヒノキ林に設けられた作業道。

 上司に対し、つけ過ぎなので、これ以上の延長の中止を求めたものの、出材量が目標に届かず、聞き入れてもらえず、若さゆえに、怒り心頭、怒髪天を衝く!みたいな時がありました(笑)。

 

 で、そこの作業道が崩壊する!と気になって、搬出間伐の事業終了後も、定期的に観察をしてきました。

 事業終了から半年後、作業道の路面にクラックが発生。

←ラインはクラックが発生した部分

 

 嫌な予感が的中・・・と思った、その1年後に崩壊・・・。

 ヒノキ林で1伐2残という強度な間伐を行った上で、作業道を付け過ぎたので、崩壊しない方がおかしいです。

 かなり下の谷まで崩壊・・・

 崩壊したとき、ここの職場を辞めていたんですけど、受け持った現場には愛着があるので、気になって足を運び、この光景を目の当たりに・・・

 山が生み出す恩恵も弊害も、その山に、その地域に住む方たちに影響を与えます。

 だから、こんな無茶な施業をしてはいけないのになー

 

 ちなみに!

 出材量が目標に到達した途端、作業道を付け過ぎだ!どんな指導をしてたんだ!と怒られました。。。(*_*;

 いや~、現場監督の自分を通り越して、上司が業者に直接指導してたんでね・・・指導のしようが無かったんですけど・・・

 と言うわけで、辞めさせていただいた次第ですm(_ _)m

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間伐 選木

2018年01月09日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 実際に間伐する場合、形状の悪い木、被圧木、劣勢木、衰弱木、虫害木を対象に行うことが主流で、マニュアルでは、間伐木を選定する基準として、寺崎式樹型級区分の図が一番有名ではないかと思います。

 今回は、師匠から教わった、あまりマニュアルには記載されていない間伐の選木について。

 決して、これが1番だとか、最高だとか言うつもりではなく、あくまで、教えていただいたことをお伝えしたいだけですので、ご理解ください。

 

 間伐の選木とは、「間伐する木を選ぶ」のではなく、「価値のある残すべき木を選ぶ」。
 そして、価値のある木とは、必ずしも成長の良い木や形状の良い木ではないということです。

 師匠から教わった価値のある木とは・・・

 1.年輪が均一で緻密
 2.元口と末口の中心部がズレていない
 3.タケノコ杢

 主にこの3点を外見から見極めて、残していくと・・・。

 選木の際、価値のある木に眼を向けることで、木材の価値を見極める眼が養われる・・・ということで、悪い木を主眼に置いてはいけないとのこと。

 ただ、言うのは簡単ですが、実践するのは本当に困難・・・。

 上記3点を意味するところは、丸太を乾燥させ、製材したときに、曲りや反りなどが発生しにくいということです。
 丸太の中心から柱を取って、側で板を取ったり、カスケード利用する場合、柱も板も曲りや反りが発生しにくい木は、製材所からすると魅力的な木材だということです。

 丸太の径級や長さは、その時の市場で判断しないといけないため、間伐の時点で、どの径級が好まれるか、予測することは出来ません。

 木は生き物で、乾燥という工程がある以上、上記3点の条件は、径級や長さと違い、常に好まれるということです。

 成長の良い木を中心に残すような選木をすると、自ずと伐採する本数が多くなったり、間伐コストが上がったり、ha当たりの蓄積量が低下する場合もあります。

 

 また、成長が良いということは、年輪幅が荒いということでもあり、強度や乾燥時の反りなどにも影響があるということです。

 立木が商品である以上、成長が良い・悪いよりも、価値が高い・低いで判断する必要があるということです。

1.年輪が均一で緻密
 年輪は、緻密な方が強度が高く、均一であると乾燥時の曲りや反りが発生しにくいです。

2.元口と末口の中心部がズレていない
 元口の中心と末口の中心に大きなずれがあると、乾燥時に反りが発生しやすくなります。
 特に、5m、6mなど長材になると、その影響は顕著に表れます。
 木が真っ直ぐに成長しないと、元口と末口の中心部にズレがでてきます。

これを立木の状態で見極める・・らしい。

明らかに曲がっている立木は間伐の対象。

 下の写真は、あくまでイメージです。

 

3.タケノコ杢
 製材した時に表れる木目がタケノコ杢ということは、木の肥大成長と伸長成長ともに素直であるということです。
 銘木級のタケノコ杢まで求めるものではありませんが、それに近いものを残す・・・と教わりましたが、はっきり言って、僕は外見から見極めることが出来ません。
 おそらくですが、1と2を満たせば、自ずと3に近づくんじゃないのかな~と思います。


 あと、残した木に対して、特に支障と与えない木も残します。
 伐る必要のない木は伐らないのも、コスト縮減の1つ。

形状が悪くても、残存木に影響がなければ残す。

 

 また、伐らずに残すことで、その木に価値を見出す人が現れる可能性もあります。
 形状の悪い木が必ずしも価値がないというわけではないということです。
 ただ、確実性が高いものではないので、あくまで、伐らなくてもいいのであれば伐らないという感じで残す。
 形状の悪い木は必ず伐るものではないということです。

少し極端な写真ですが・・・

 

 ただし、損傷した立木や虫害を受けた立木は、真っ先に間伐の対象木となる。

 


 間伐の選木とは、「間伐する木を選ぶ」のではなく、「価値のある残す木を選ぶ」ということ。
 価値のある木を主眼に置くことで、木材の価値を見極める眼を養うことが可能になります。

 しかしながら、伐ることに主眼を置かず、将来に残したい価値のある木に主眼を置いて、選木することはとても困難です。

 ここ十数年、間伐の選木を実践していないので、この勘を取り戻していきたいですね。

 現場で叩きあげられてきた師匠の教えやマニュアルに書かれていない現場の知識など、いわゆる「現場での口頭伝承」というものを次の世代に繋げていきたいと考えています。

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2008~2013年における農林家の再生産過程の変化ー2013年「林業経営統計調査報告」分析ー

2017年08月13日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 2016年11月発行の林業経済学会誌「林業経済研究」で発表された論文の紹介です。
 もっと前にご紹介するはずが、冊子が行方不明になり、最近、見つかったので、ご紹介が遅くなりました。

 専門的かつ経済学分野の複雑な内容で、久しぶりに読み返しましたが、やはり頭はパンク状態。
 特にわかりやすい部分を抜粋して、簡単にご紹介したいと思います。

 以下、論文から一部を抜粋しながら・・・かなり雑な紹介となりますが、ご容赦下さい。

「2008~2013年における農林家の再生産過程の変化-2013年「林業経営統計調査報告」分析-(根津基和 東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科)」

目的
 2013年「林業経営統計調査報告」を分析し、農家林家論の視点から考察を加えること。
 分析方法はマルクス経済学の労働価値説に基づき、上記報告書を中心に不変資本、可変資本、計算上の余剰価値に分割し、経時的・共時的に行った。

「階層別経営収支」について
 林業所得は所有山林20~50ha層で黒字。
 50~100ha層、100~500ha層、500ha以上層は赤字。
 特に500ha以上層は4,761千円の赤字。
 赤字の要因は請負代金、雇用労賃、機械修繕費。
 2013年の特徴は、大規模な森林所有者ほど赤字になりやすく、小規模な森林所有者の方が黒字になりやすい傾向に。

「保有山林規模別林業再生産過程の比較(2008年と2013年)」
 2013年の500ha以上層は雇用依存率89.9%、請け負わせ割合52.9%。
 素材生産割合は91.5%で他に収入源が見受けられない。
 2008年と比較すると大きく赤字に傾いている。
 2013年時点の大規模層は、中小規模層に対する優越の兆しがなく、薄利多売が招いた結果。

 20~50ha層は、家族労働賃金評価額と流動資本は高まっているが、林業利潤は圧迫していない。
 素材生産割合は61.6%と2008年より高まっている。

 一方、キノコ生産割合は4.5%と2008年の32.8%から後退し、素材生産に単純化している。

 家族労働賃金評価額が高いからこそ経営状況は良好であるとも考えられる。

 2013年の500ha以上層は経営状況が最悪。

 林業労働雇用賃金や請負代に頼り切った結果が招いた事実。

 中小規模林家層には、展望が残されているものと考えられる。

 これが自伐型林業論との接続になり得ないか。

以上。

 

 2013年当時の状況を思い出しながら読むと、「当然やろ!」って思いますが、データを分析して論文にされると一般論に加えて、学問的な視点でも同様だと言えるので、信憑性が高まります。

 現場では当たり前のことでも、論文でも同じことが指摘されているか否かの差はとても大きいと思っています。

 良い報告でしたので、本当は、全文を載せてご紹介できればいいのですが・・・。

 

 実際の論文は、当然ですが、この2点以外の点についても報告されています。

 今回は、簡単に上2点のみをご紹介しました。(筆者には大変申し訳ございませんが。)

 というのは、個人的な考えですが、「生産性の向上」、「コスト縮減」、「木材需要拡大」など林業の課題はたくさんありますが、特に重大な課題は「林業経営の改善」だということです。

 生産性の向上やコスト縮減という課題に対して、路網整備や高性能林業機械の普及、木材需要という課題に対して、集成材やCLTにバイオマスなどなど様々な対策を講じています。

 さらに、今、「スマート林業」ということでICTを活用した取り組みも注目されています

 とはいえ、外材の流通、木材価格の低迷、需要の低下など社会情勢や時代の流れから「変えられないもの」や「変えがたいもの」もあり、それらに対して、新たな技術・これまでの技術を駆使して、現状に対応出来る体制を整える必要があると思います。

 路網整備や高性能林業機械の普及で、事業コストは縮減できたかもしれませんが、林業経営は改善されたのでしょうか。

 ドローンで苗木を運搬すれば、造林コストは縮減できるかもしれませんが、林業経営上、改善する否かの検討はしているのでしょうか。

 森林GISなどシステムを登用したことで、森林管理に要するコストが縮減でき、導入コストに対して、林業経営上、改善した(向かっている)のでしょうか

 

 少し批判的な意見になりますが、国有林など公共事業では「事業コストが縮減できた」と評価されても、それは請負費用であって、実際に要したコストとは異なります。

 また、導入コストや維持・管理費、減価償却費なども含まれていないことが通常です。

 こうした公共事業ベースで縮減できた実績を基に民間に当てはめ、仮に事業費が縮減できても、経営上の良し悪しとは別問題です。

 事業体・所有者(法人・個人)・森林組合などそれぞれ組織の体制は異なりますが、効率が上がる・コストが縮減されるなどではなく「林業経営としてはどうなのか」という視点は、とても重要であると思います。

 

 日本は人口減少に向かっているので、木材需要は下がります。

 そして、林業に限らず、あらゆる産業で国内市場の縮小という問題に当たります。

 当然、海外への輸出という答えに行きつき、生産拠点を海外に移す企業も出てきたら、国内での雇用の場も減少します。

 社会情勢や時代の流れから「変えられないもの」がありますが、その中で、「前向きに取り組む」ことはできます。

 何を取り組んだらいいのか、どうすればいいのか、マニュアルも教科書もないので、個々で見つけていくしかありません。

 だからこそ、「林業経営の改善」に向けて進むことが、一番重要な課題ではないかと考えています。

 例えば、

  自伐型林業を目指している方と大規模所有者を繋げる。

  その方に50haほど山林の管理を任せる。

  いわゆる「山番」とか「山守」を自伐型林業をしたい方に任せる。というもの

  大規模所有者が求める山づくりもあるので、一定の縛りを受けるかもしれませんが。

  こういう方が10人いれば、500haの管理をお願いできる。

  これまでの山番と異なり、金銭ではなく資源を提供する形で、任された山から採取したもので得た収益は、所有者ではなく、管理しているものへ。

  所有者は必要最低限の経費で山林を管理できる。(0円ということもあり得る)。

 自伐型林業が注目され、その実践者が増えている状況は、林業経営の改善につながる可能性があり、それを検討する価値は十分に高いと考えています。

 付き合いで続けてきた赤字の事業を止める、特殊伐採など新しい事業を始めるなども経営を改善するための1つですし、実際に、それを実現している方々もいらっしゃいます。

 

 今回ご紹介した論文を読んで、かなり自分勝手な解釈ですが、やはり「林業経営の改善」が重要であると再認識した次第です・・・が、少々、持論を押し付けるような論文紹介になってしまいました。

 申し訳ございません。ご容赦下さい。m(_ _)m

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林業の労働安全対策 

2017年06月24日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 林業関係では、低コスト化や生産性の向上、木材需要の拡大という動きが中心になっていますが、やはり労働安全の向上も喫緊の課題・・・当然、今に始まった事ではなく、昔から挙げられている課題ですが。

 そんな中、ここ数年の間に、WLC(世界伐木チャンピオンシップ)やJLC(日本伐木チャンピオンシップ)、チェーンソー防護服の改善など林業の労働安全に新たな動きが展開されています。

 どんな仕事でも「体が資本」ですが、特に危険な作業・危険な環境に身を置く割合が高い林業では、体調管理が本当に重要です。

 ちょっと、ボ~っとしている間に重大災害に・・・、油断ならない状況がある中、体調管理はとても重要な職種が林業だと思っています。

 

 僕自身、現場でバリバリ働く側ではなく、むしろ、発注側・現場監督という立場が多いです。

 休日の際、伐採・搬出などの作業を軽く行う程度ですが、昔、たった4年というわずかな間ですが、現場に携わる機会がありました。

 その時に、今では師匠と呼べる方たちから教わった安全対策を今も教訓にしています。(この頃に、一応、植栽・下刈り・つる切り・枝打ち・間伐までの作業を経験させていただきました。)

 今回は、師匠達から教えていただいた「安全対策」をご紹介したいと思います。

 その安全対策とは、大きく分けて2つ。

 1.危険を予測できる想像力を身に付けること。

 2.重大災害の報告を読み込むこと。

  でわ、1つずつ説明を。

 

 1.「危険を予測できる想像力を身に付ける」

  言われたのが、「これから行う一連の作業の中で、どこにどんな危険が潜んでいるか、想像できるか?」。

 

 例えば、つるが絡まっている立木を伐採しようとしたとき・・・

※写真はイメージで、実際のつるはこんなに太くなかったです。

 

 「これからの作業で、どんな危険を想像できる?」と聞かれました。

 で、「掛かり木になる」と回答。

 「掛かり木の処理は危険だが、掛かり木になること自体が危険じゃない。それは次の作業の話。伐採時の危険は?」

 とりあえず、周りを見ながら、危険予測が立つものを適当に回答しましたが、師匠の言わんとすることの的は得られず・・・。

 師匠の回答は

 「伐採後、つるでぶら下がった状態になる可能性があり、その瞬間が危険。」

 「パターンとして、

  1.伐採直後、ブランコのような振り子運動になる。梢端部のつるがちぎれて、梢端部が自分の方に落ちてくる。

  2.梢端部がちぎれず、元の部分が自分の方に戻ってきて、衝突する。

  3.元の部分が自分の方に戻ってきたとき、つるがちぎれて、自分の方に元が飛んできて、衝突する。

  4.梢端部がちぎれず、元の部分が自分の方に戻ってくる。それを避けた瞬間、梢端部のつるがちぎれて、自分の方に落ちてくる。

  5.戻ってきた伐採木を間一髪で避けても、再び、伐採木が戻って来て、元と自分が衝突する。

  ウソみたいに聞こえるが、いずれも実際にあった話。

  こういうことが起こるかもしれないと想像しておけば、退避場所や退避方法など伐採前の行動や伐採後の行動がイメージしやすい。

  想像できるかできないかで、初動動作に差ができる。

  掛かり木になるわって、ボ~っと見てたら、怪我するゾ。」

 とご指導いただきました。

 

 他にも、師匠が、高度な伐倒技術を要する立木を思案し、いよいよ伐採に係ろうとした瞬間、傍観していた僕に対し、

 「こういう難しい木を伐採しようとしている人がいたら、ボ~っと見てたらアカン。自分ならどういう方法で伐採するか、どういうことに気を付けなアカンか考えて、自分の答え(伐採方法)を持て。そして、その人が伐採しようと動き出したら、まずは自分が出した答え(伐採方法)を伐採する人に伝えて、答え合わせをしろ。ただし、お前の答えは、ほとんど一致しない。だけど、その考えに何が足りないのか、なぜ一致しないのか、教えてくれる。自分の考えを相手に伝えたり、質問していかないと、見ているだけじゃ、相手は教えてくれない。間違ってていいから、自分で考えて、答え合わせをしろ。話を聞いて、考えを聞いて、相手の経験値を少しでも吸収しろ。それを繰り返すと、答えのズレも小さくなる。」

 と、ありがたいご指導もいただきました。

 これ以来、邪魔にならない状況であれば、自分が想定する伐採方法と実際に伐採する人の伐採方法を対話して、比較するように。

 これをするだけで、伐採するときに何を見ないといけないのか、そのポイントを学ぶことが出来ます。これは本当に大切です。

 ただし、中には、科学的・力学的・論理的に説明できない方もいます。

 失礼な言い方ですが、経験則だけで語る方もいますので、大半が「これまでの経験から・・・」という感覚的な説明しかされない場合は、それを安易に吸収すると逆に危険につながる可能性もあります。

 

 あと、師匠から、

 「現場監督はマニュアルに基づいて、安全作業を指導する。でも、マニュアルをそのまま現場に当てはめると、逆に、それが危険要因となる可能性もある。マニュアルはあくまでマニュアルで、絶対安全ではないことを念頭にしないといけない。例えば、下刈り作業でヘルメットをしていないからヘルメットを着用しろと指導する。ヘルメットを着用したため熱中症になることもある。熱中症を予防するなら麦わら帽子の方が良い。下刈り作業で”転倒による頭部損傷を予防するヘルメット”か”熱中症を予防する麦わら帽子”か、どちらの方が作業の安全性が確保されるか、そういうことも想像できないといけない。だからといって、マニュアルを無視しろというわけではない。監督という立場上、マニュアル通りに指導しないといけないが、それが絶対に正しいと思わず、自分が行うマニュアル指導の裏に危険要因が潜むということを理解すること。それが根本にあるか否かで、現場作業員の受け取り方が違う。」

 という指導もいただきました。

 実際、マニュアル指導で終わらせず、現場目線でそれぞれの状況を理解しようとする姿勢を見せると、現場作業員の方々も、監督員に迷惑をかけないように・・・という雰囲気で仕事をしてくれました。こちらの立場としては、本当にありがたいことです。

 

 さらに、もう1つ、師匠は、

 「現場作業員もマニュアルを無視してはいけない。基本動作としてマニュアルは正しい。しかし、現場の状況に応じて、マニュアル動作が出来ない場合は、なぜ、マニュアル動作ができないのか、マニュアル動作が逆に危険になるのか、科学的、論理的に説明できないといけない。マニュアル通りに行うとこういう危険に繋がるから、そこはマニュアルから逸れるが、この状態から見ると、おそらくこういう状況だから、こういう方法にしないといけない、と、自分の考えを伝えられないといけない。今までこの方法で問題なかったなどと、単に経験則だけで語るのはダメ。なぜダメなのか、その理由を説明できないといけない。」

 とも。

 「要は、その方法を採用した根拠があるはず。”これまで大丈夫だったから”とか、”今までこれで問題なかったから”というのは、安全作業でも何でもない。単に、運が良かっただけ。」

 「この世に全く同じ成長する木はない。だから、この木材は世界に1つしかない。というが、山作業も同じ。全く同じ条件で作業できる場はない。1つ隣の木に移れば、それは別物。重心も枝葉の広がり方も違う。土場で作業していても、運ばれる原木は全て異なる。工場の生産ルートで働いているのと全く違う。細かいけど、そういう認識を持つことが大切。踏み出した一歩のその先が絶対に安全という保障はないゾ。」

 それくらい、気を引き締めて行けよ・・・ということを、教えていただきました。

 だから、ちょっと、危険な目で”ヒヤッ”とすると、師匠に「ほらな。」と言われました。

 あれは、結構、頭にくる。師匠にではなく、自分自身に。

 ”ヒヤッ”とすると、そうっと師匠に視線を送ると、目が合ってしまい、その目が「ほらな。」と訴えている。

 今、思えば、僕がヒヤッとするのを先読みしていたのではないかと思います。何かあれば、すぐに動けるように。

 

 師匠の教えその1が、とても長くなりましたが、ひとまず、以上です。 

 

 次に、

2.重大災害報告の読み込むこと

 これは単純です。

 林業・木材製造業労働災害防止協会などで災害発生に関する報告資料がありますが、それを読むことです。

 単に読むのではなく、「災害が起こった状況を自分の頭の中でシミュレーションしながら読む」です。

 頭の中で疑似体験を作りだし、その体験を自分の経験として蓄積させます。

 師匠は、僕に、

 「重大災害の報告はとても重要。林業の労働安全の基準は、過去の犠牲者や被災者の経験をベースにされている。こうした尊い犠牲がマニュアルにも生かされている。だから、マニュアルは安易に無視していいものではない。自分が被災したら、過去の犠牲者や被災者の経験を生かせていない、失礼にあたると思えよ。だから、災害報告は頭の中でシミュレーションしながら、きちんと読め。そのためには、現場経験がないとシミュレーションできやんぞ。木を伐らなくてもいいから、伐るつもりで木を観察しろ。」と言われました。

 

 なので、今でも、時々ですが、林業・木材製造業労働災害防止協会のHPで報告を読んでいます。 

 http://www.rinsaibou.or.jp/cont03/03_frm.html

 林業・木材製造業労働災害防止協会の「林材安全」などもオススメです。

 過去の報告も読んでみると、やはり「掛かり木処理」の災害が多いです。

 あと、高性能林業機械がらみの事故も増えているのが分かります(統計処理としていないので、感覚的な話ですが。)。

 こういう傾向も見えてきますし、報告を読んでいれば、初めての作業でも、報告内容に近い場面であれば、気を引き締めるきっかけにもなります。

 

 冒頭でも書きましたが、WLCやJLC、防護服など「林業の労働安全」では新たな動きが展開されています。

 林業の労働災害の発生率は、過去からほぼ横ばいで、しかも、他の産業よりも高い数値を示しています。

 労災保険料率も林業は高い部類(60/1000)に入ります。

 林業では、低コストや生産性の向上が重要視されていますが、やはり労働安全の対策も重要です。

 安全対策は、低コストや生産性の向上に結びつかないと考えがちになるかもしれませんが、それは逆だと思っています。

 安全対策は事業計画・作業計画にも結びつくもので、全体から今日1日の計画、事業の進捗を共有することにも繋がります。

 しかし、1度でも事故が起これば、事業の進捗に影響を及ぼし、生産性が低下し、コストも嵩みます。

 さらに、林業界全体で、安全対策が高まり、林業の労働災害発生率が低下すると、労災保険料率も下がり、結果、人件費を抑えられることにも繋がってきます。

 

 全国的に林業大学校が開校され、人材育成・後継者育成に力が入れられています。

 WLCやJLC、新たな防護服という動きも展開されています。

 こうした全国的な動きと新たな動きを取り入れて、林業界全体で労働安全対策の向上に向けた動きを展開すべきではないかと思います。

 林業をより魅力のある産業にするためには、これまで以上に高い安全対策の実現は不可欠で、特にこれから林業という職業に飛び込もうとする人たちに対して、重要な課題だと思います。

 労働安全対策は雇用側の責務に限らず、業界関係全体で取り組むべきとも思っています。

 労災保険料率の低下→人件費の軽減→低コストとに繋がる可能性も十分に考えられるので、業界関係全体で取り組むメリットもあると思うのですが・・・。

 

 個人的には、まず、

「危険を予測できる想像力を身に付ける」

「重大災害の報告を読み込む」

 この2つから、取り組むことをオススメします。

 重大災害の報告は、雨の日に読み込めます。

 休憩の合間に、何か1つ、報告事例をイメージしながら、立木を観察するだけでも、想像力が身につきます。

 

 これをするだけで、技術が備わると、申し分ないんですが・・・・。

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ヨキ 刃沓の編み方

2017年05月07日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 ヨキの刃をカバーする「刃沓(はぐつ)」。

 このブログで、何度か編み方を紹介していますが、改めて、編み方を紹介したいと思います。

 編み方は色々あるのかもしれませんが、奈良県の吉野にいた頃、師匠に教えていただいた方法です。

 その後、和歌山県に戻ってきたら、現場の大先輩(70~80代)の方が、僕の刃沓を見て、「編む人も少なくなったな~」と言っていましたので、これも後生に継ぎたい林業技術の1つだと思っています。

 

 用意するものは、直径4ミリのナイロンロープ1本と直径3ミリのナイロンロープ1本です。

 今回は、直径4ミリの方は、長さ100cm程度、直径3ミリの方は、長さ120cm程度にして、編みました。

 ヨキのサイズにもよると思いますので、長さは余分に調整してもいいと思います。

 途中で足りなくなると、継ぎ足さないといけないので、出来具合が悪くなります。

 

 ①始点を決めて、4ミリロープを写真のように結びます。

 

4ミリロープが交差する部分を3ミリロープで固定します。

 外れたり、ズレたりしなければいいので、自由に(適当に・・・)結んでいます。

4ミリロープに3ミリロープを写真のように編みます。

 3ミリロープは、ほどほどに固く締め上げます。

 ただし、固く締めすぎると、刃が入りにくくなりますので、ほどほどの力で。

 逆に、締める力が弱いと、スカスカの刃靴になっちゃいます。

 

反対方向も同じ要領で、編みます。

 

これを左右、繰り返します。

 繰り返し編んでいくと、写真右上のようになります。

 裏返すと透き間が出来ており、ここに刃を収めます。

 

⑦完成

 なるべく丁寧に編んだ方が、出来上がりも美しくなります。

 この刃沓の出来具合・・・実はイマイチです。

 余った3ミリロープを繋ぎ合わせて、作ったものなので。。

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架線集材 エンドレスタイラー 操作

2017年04月26日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 前回、架線集材(エンドレスタイラー)の仕組みについて説明しましたので、それに関連し、今回は、架線集材(エンドレスタイラー)の操作について説明したいと思います。(前回の記事はこちら→架線集材 エンドレスタイラー 仕組み

 僕自身、集材機を操作した経験はないので、説明できる立場ではありませんが、架線集材や集材機の操作等について、全くご存知ない方にも分かっていただければと思います。

 あくまで、「どのように操作しているの?」についての説明ですので、「この方法が安全で1番」ということを言っているわけではありませんので、ご理解ください。

 

 説明にあたってのイメージ図の状況です。

 赤い線は主索。

 青い線はエンドレスライン(以下ELL)。

 黄色い線はリフティングライン(以下LFL)。

 紫の線はホールバックライン(以下HBL)。

 四角い灰色の図に3つの丸い物がついている図が「集材機」。

 3つの赤い丸いものが連結している図が「搬器」。

 台形の下にぶら下がっている輪っかみたいな図が「荷掛滑車」。

 

 イメージ図の設定は、「土場から荷掛場所へ移動し、集材した後、再び、土場へ」というものです。

 実際の現地では、必ずしも集材機の運転手が荷掛場所などの現場を確認できるわけではありません。

 つまり、荷掛場所などの現場が一切見えない状況の中荷掛場所で待機している作業員からの無線による指示のみで、集材機を運転しないといけないので、集材機の運転・操作は駆け出しの人間が、簡単に操作できるようなものではありません。 

 まして、「現場で何かあった時」、パニックにならず、冷静に正しい操作を行える技術が求められます。

 目隠しした状態で、助手席の指示で、車を運転するような感じです。

 「もう少し進んだら、右。」

 「はい、ストップ。そこを右。」

 「少し左に切り替えして。」

 「OK。そのまま右にハンドルを思いっきり回して」みたいに・・・。

 そして、何かあっても、目隠しした状態で、その「何か」を、運転テクニックで、解決しないといけません。

 

 では、機械の操作説明を。 

 

1.搬器を土場から荷掛場所へ移動する

 ・LFLはブレーキをかける。(荷掛滑車は降ろさない)

 ・HBLを巻く。(搬器を動かす)

 ・ELLはフリーの状態にする。(搬器が動く)

  

 HBLを巻くことで、フリー状態のELLに沿って、そのまま搬器が移動します。

 LFLはブレーキをかけておかないと、荷掛滑車が降りてきてしまいます。

 荷掛場所の作業員(以下、荷掛手)は、

 「HBLを巻いて。」、搬器が荷掛場所に近づくと、「ストップ」。と指示していると思います。

 

2.荷掛場所に荷掛滑車を引き込む

 ・荷掛手はHBLの内側に入らない。(鉄則!)

 ・ELLはフリーの状態のまま。(搬器動く)

 ・LFLは操作しながら緩める。(荷掛滑車が降りてくる)

 ・HBLを巻く。(降ろした荷掛滑車を荷掛場所付近へ近づける)

 

 LFLを緩めることで、荷掛滑車が降りてきます。

 HBLを巻くことで、降ろした荷掛滑車を荷掛場所へ少しずつ近づけます。

 荷掛手は「LFL緩めて、HBLを巻いて・・・(荷掛滑車が降りてきたら)、ストップ」と指示していると思います。

 

 荷掛場所に荷掛滑車が近づいたら、搬器を止めます、

 ・ELLにブレーキをかける。(搬器を止める)

 ・HBLを巻いた後、ブレーキをかける。(荷掛滑車を荷掛場所に降ろした後、止める)

 ・LFLを操作する。(荷掛滑車の位置を調整しながら、荷掛場所に降ろす)

 ・荷掛手はHBLの内側に入らない。(鉄則!)

 

**追記**

 上記のイメージ図では、荷掛場所の真横で搬器を止めていますが、図のような操作を行うと、実際は、HBLに主索が引っ張られます。

 なので、荷掛手は、HBLの外側に立って、主索が引っ張られないよう搬器を止める位置を、運転手に指示を出します。

 イメージ的には、こんな感じになるかと思います。

 

**  **

 

 また、荷掛滑車は、立木など障害物を回避するように動かす必要があるので、荷掛手の指示に従いながらLFLを操作します。

 このイメージ図では分かりにくいですが、

  斜面上側なら、荷掛滑車を上げながらHBLを巻く。荷掛滑車を上げないと地面に当たる。

  斜面下側なら、荷掛滑車を降ろしながらHBLを巻く。荷掛滑車を降ろさないと地面からほど遠い。

 みたいな感じです・・・。

 

 荷掛滑車の止める位置は、平地か斜面、傾斜の角度によって、調整する必要があります。

 例えば、平地なら荷掛場所の真上に、斜面なら荷掛場所より前(傾斜で荷掛滑車が滑るから)に荷掛滑車を止める・・といった具合に。

 こういう調整も、運転手は見えないので、荷掛手の指示で行います。

 

3.荷掛作業を行う。

 ・ELL、LFL、HBLにブレーキをかける。(全ての機械を停止する)

 ・荷掛手が荷掛作業を行う。(機械に近づくので、ブレーキは必須)

 

 荷掛滑車が停止して、安定してから荷掛滑車を行います。

 もちろん、運転手には、この作業の様子は見えていません。

 なので、もし、ブレーキをかけ忘れ、搬器が動き、荷掛手がケガしても、すぐに察知することはできません。

 

4.荷掛をした後、横取りを行う

 ・荷掛手は安全な場所へ退避する。(退避後、運転手に指示を出す。)

 ・ELLは、そのままブレーキをかける(搬器を停止)

 ・HBLを操作しながら、LFLを巻く(荷掛滑車が吊り上がる)

 

 荷掛作業が終わったら、荷掛手は安全な場所へ退避し、運転手にLFLを巻くように指示します。

 このとき、例えば、HBLにブレーキをかけたままLFLを巻くと、当然ですが、危険なので、誤操作に注意する必要があります。

 子ども(HBL)が、お母さん(LFL)の服の袖を引っ張ったまま、そこから一切動かないのに、お母さん(LFL)が無理矢理、服の袖ごと子ども(HBL)を引っ張ると、袖が破れる・・・みたいな感じ・・・でしょうか。

 

 荷掛滑車が主索の真下まで引き寄せられると、

 ・ELLは引き続きブレーキ(搬器を止める)

 ・LFLにブレーキをかける(荷掛滑車を止める)

 ・HBLは緩めておく

 LFLのブレーキも荷掛手が指示します。

 運転手には、LFLがどの位置まで吊り上げられているのか、全くわからないので。

 

5.搬器を土場まで移動させる

 ・ELLはブレーキを解除し、動かす。(搬器を動かす)

 ・LFLはブレーキをかける。(荷掛滑車を止める)

 ・HBLは操作しながら緩める。

 

 

 さらっと、まとめると・・・

 空搬器を土場から荷掛場所へ送る場合は、「ELLはフリー、LFLはブレーキ、HBLは巻き」ます。

 荷掛滑車を荷掛場所へ引き込む場合は、「ELLはフリー、LFLは緩め、HBLは巻き」、その後、搬器を停止させるため、「ELLはブレーキ」、調整しながら荷掛滑車を荷掛場所に引き込むため、「LFLは緩め、HBLは巻いた後、停止」して、荷掛滑車を安定させます。

 荷掛作業を行う場合は、「ELLとLFLとHBLにブレーキをかける」。

 荷掛後の横取りは、「ELLはブレーキ、LFLは巻く、HBLは緩め」、荷掛滑車が主索の真下まで引き寄せられると「ELL、LFLはブレーキ、HBLは緩め」ておきます。

 木材を吊り上げた搬器を土場へ移動する場合は、「ELLのブレーキを解除して動かす、LFLはブレーキ、HBLは緩め」ます。

 このほか、ドラムのワイヤーが乱巻きしないように操作もしないといけませんし、誤動作があっても、安全装置がないので、自動でブレーキがかかるわけでもありません。

 

 操作について、一応、文書化したものの、ここに挙げた操作方法は、マニュアル通りではないと思います。

 僕も現場での機械の動きを見たり、運転手に操作方法を聞いたり、本を読んだりしたものをまとめてみただけですので、現場の方から見ると「ん?」と思う部分があると思いますので、ここに記載した方法が一般的というわけではありませんので、ご容赦下さい。

 

 こうした一連の作業を無線の指示で、集材機を操作しています。

 しかも、操作レバーは、ELL・LFL・HBLとそれぞれ3本に分かれています。

 一応、イメージ図で分かりやすく説明をしたかったのですが、やはり集材機の操作そのものが複雑なので・・・。

 そして、安全装置もないので、これら一連の作業の中で、1つでも操作を誤ると事故に繋がります。

 運転手は荷掛手の状況を目視で把握することはできません。

 荷掛手も運転手の状況を目視で把握することができません。

 お互いに無線を使って、それぞれの状況をやりとりしているので、そのやりとりが途絶えたとき、何かがあったと気づくことになると思います。

 

 様々な分野でICT技術が開発されるこの時代において、集材機の技術は「時代遅れ」と言わざるを得ません・・・。

 

 そうした中で、くどいようですが、油圧式集材機の開発は画期的です。

 3本レバーによる複雑な操作も、2本レバーで操作も容易になり、インターロックも搭載され、安全性も向上。

 さらに遠隔操作も可能に。

 液晶付きで、これで乱巻きの有無が確認できます。

 荷掛手が搬器・荷掛滑車を操作することで、作業の安全性も向上します。

 運転手も不要になり、グラップルに乗りながら集材機を操作できるので、作業の向上性も向上します。

 それぞれが、状況を目視しながら操作できるという利点もあります。

 

 集材機の操作は本当に煩雑であり、複雑であり、安全性が担保されていません。

 何より操作できる人材の育成期間が5年以上とも10年以上とも言われており、集材機を扱う人材は、簡単に育成することはできません。

 

 今回、集材機の操作をについて説明しましたが、これがオーソドックスではないと思います。

 抜け落ちている説明もあったり、不要な説明もあろうかと思います。

 一応、全く存知ない方に分かっていただければと思い、文書化してみました。

 連続で、集材機に関する記事を書きましたが、少しでも架線集材や集材機に関する知識を身につけていただけたり、興味をもっていただければ、幸いです。

 僕の中では、架線集材は林業で最も難しい技術なので、林業技術の花形だと思っています。

 

 以下、関連記事です。

架線集材 エンドレスタイラー 仕組み

油圧式集材機

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架線集材 エンドレスタイラー 仕組み

2017年04月23日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 前回、油圧式集材機についてご紹介しました。

 そもそも、架線集材が分からない方やどういう動きなのか理解できていない方もおられるかと思いますので、今回は、架線集材の中でも、一般的な「エンドレスタイラー」について、簡単にご説明を。

 前置きで「どういう動きなのか理解できていない方」と言いつつも、正直、僕も、自信をもって、理解しているわけではありませんが、少なくとも間違ってはいないと思っていますので、ご容赦下さい。プロの方々から見て、修正等ございましたら、是非、ご指摘ください。)

 それと、今回は、エンドレスタイラーの仕組みを説明することが目的ですので、架線の張り方などの技術面や安全面についての話は省略していますので、この点もご容赦下さいm(_ _)m。

 

 エンドレスタラーは簡単に言うと、集材機を操作して、林内に張り巡らせたワーヤーロープを循環的に回しながら、木材を集める方法です。

Kasensyuzai05(←集材機)

 図にするとこんなイメージ。

 ただし、実際はこんなにシンプルではありません。

 仕組みを分かりやすくするため、あくまでイメージ図をシンプルに表現しているだけですので、実物はもっと複雑ですよ。


 このイメージ図を基に、それぞれの役割を。

 

 まず、木材を搬出するための搬器を乗せる「主索」。「スカイライン」とも言います。

 主索は、両端とも木に固定しているので、集材機と直接は繋がっていません。

 この状態は、「主索の上に搬器が乗っているだけ」で、当然、動かすことが出来ません。

 今回、主索の張り方は省略します。また、本来は、主索を固定した樹木の倒木などを防ぐ処置もしますが、今回はイメージ図からも省略しています。

 

 搬器を動かすために必要なのが「エンドレスライン」。

 

 エンドレスラインは、集材機-搬器-先柱を通じて、グルッと1周しているイメージ。(大抵は、ワイヤーを搬器のところで繋げています。)

 集材機にあるエンドレスライン用のドラム(糸巻きみたいな物)を操作して、搬出したい木材の場所まで、搬器を送ります。

 搬器は主索に乗っているだけですので、エンドレスラインの操作1つで、搬器を山に送ったり、林道に引き戻したりすることができます。

 エンドレスラインを単純に考えると・・・

 (←ちいさい円は集材機のドラム。)

 このようにグルグルと循環しているので、集材機のドラムを操作して、搬器を移動させます。

 下の写真で言うと、エンドレスドラムは右側の小さいヤツです。

 

 ただし、搬器を木の真上に動かしてきても、搬器そのものは、空高くぶら下がっています。

 そこで、荷掛滑車を吊り上げる・吊り下げるための「リフティングライン」を設けます。

 リフティングラインは、片方は集材機のドラムに繋がっており、もう片方は木に固定されています。

 

 集材機のドラムを操作して、リフティングラインを張ったり、緩めたりすることで、木を吊り上げたり、下ろしたりすることができます。

 これに、もう1つ重要なものが「ロージングブロック」。

 このロージングブロックにリフティングラインを通します。

 加えて、このロージングブロックを狙ったところに下ろすための重りをつけます。

 上の写真は、専用に作った鉄製の物ですが、木の丸太を利用する場合もいます。

Kasensyuzai09(←ロージングブロックに木をつけた事例。)

 その重りに荷掛滑車が取り付けられています。

 

 しかし、搬器やロージングブロックは、あくまで主索の線下でしか、木材を上げ下げすることしかできません。

  

 そこで、主索の線下から離れたところの木を集めて、搬出するために、「ホールバックライン」というものを設けます。(アウトラインとかアウト線とも言います。)

 ホールバックラインは、ロージングブロックの重りに固定し、集材機のドラムと繋がっています。

 集材機のドラムを操作して、ホールバックラインを引いたり、緩めたりすることで、荷掛滑車を木材のある場所へと動かすことができます。

 

 子供に袖を引っ張られて、おもちゃ売り場に連れていかれる・・・そんな感じです。

 この場合、「子供」がホールバックラインですね・・・。

 

 まとめます。

 ①搬器を乗せる主索(スカイライン)。

 ②搬器を動かすエンドレスライン。

 ③荷掛滑車を下ろしたり、上げたりするリフティングライン。

 ④荷掛滑車を主索から離れた場所へ移動させるホールバックライン。

  で、こうなります。

 集材機が関係するのは、②~④の操作です。

 

 集材機を正面から見ると、

 3つのドラムがあります。

 それぞれのドラムを操作することで、搬器や荷掛滑車を動かすことができます。

 要は、ワイヤーロープを緩める・張るという動きが、吊り下げる・吊り上げるという働きになると考えてください。

 

Kasensyuzai04

 この架線集材ができる職人・技術者が高齢化・減少しています。

 林業全体にも言えることですが、特に架線集材は後継者がいないんです。

 

 特に、集材距離1,000mを超える架線の設置ができる技術者は、さらに限られています。

 主に高知県で行われている「H型架線」という架線集材が注目されて以降、再び、架線集材も注目されるようになり、前回ご紹介した油圧式集材機も、架線集材を必要とする地域では期待される機械だと思います。

 林業はその地域地域によって、作業システムや技術が異なり、全国一律・全国統一というわけにはいきません。

 車輌系機械だけでなく、やはり架線系機械の技術向上や後継者の育成も大切です。

 もし、ここで、架線集材の技術が途絶えたら、再び、その技術を取り戻すことは、本当に困難です。

 特に、今ある技術は先人たちの知恵や経験、そして、犠牲の上に積み上がってきたもの。

 先人たちの犠牲があったからこそ、何が危険なのか、今を働く人たちに伝わっていると思っています。

 この技術が途絶えたら、先人たちの犠牲が無駄になってしまい、これは、大変無礼なことだと思います。

 誰かが犠牲になってきた経験から、二の舞にならないよう、引き継いできた方々が安全に努め、今に至ったはず。

 「こういう事故が多いから、気を付けよう。」

 「これは絶対にしてはいけない。」

 「ここには絶対に入ってはいけない。」

 誰かの犠牲が、今、技術として活きていると思います。

 地域や現場、地形、伐採量などによって、最良な作業方法が異なる林業。

 

 新たな技術が注目されがちですが、これまで積み上げてきた技術・機械も改めて注目して頂きたい。

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油圧式集材機

2017年04月14日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 以前にもご紹介させていただきましたが、油圧式集材機が和歌山県で開発されました。

 

 この開発に成功した背景には、集材機に詳しく、かつ架線集材の技術・危険性・安全性に長けた方がおられたから。

 この方がいなくては、短期間の間で、これほど完成度の高い機械は出来なかった。

 僕は、集材機による架線集材が大好きですが、正直、あまり詳しくありません。

 ただ、個人的には林業の中でも、高度な技術を要するので、「林業施業の花形」だと思っています。

 下の写真が従来の集材機で、写真左側に運転席があります。

 そこに4本のレバーがあり、それを使って、集材機を操作します。

 運転席から現場が一望できる位置に集材機が設置できれば、状況を見ながら操作できますが、一望できない場合は、無線の指示に従って、運転手は集材機を操作することになります。

 自動車の運転で例えるなら、運転手が目隠しをして、助手席の指示で運転する・・・みたいな感じです。

 架線集材の仕組みに関する説明は省きます(仕組みについては架線集材 エンドレスタイラーにて。)

 

 集材機の操作について、雑な説明になりますが、一例としてお読みください・・・

 

 荷掛滑車を、木材を吊り上げる場所に誘導し、到着したら、エンドレスラインとホールバックライン(引戻索)にブレーキをかけ、リフティングラインを操作します。

 ホールバックラインをきちんと止めておかないと、荷掛滑車が動く恐れがあります。

 荷掛滑車を下まで降ろすと、リフティングラインにブレーキをかけます。

 エンドレス、ホールバックライン、リフテングラインのいずれかのブレーキをかけ忘れたり、かけ間違いをすると、荷掛滑車に近づく作業員が危険な目に合いかねません。

 木材を荷掛けた作業員(荷掛手)は退避し、運転手に無線で、リフティングラインを巻くように合図します。

 運転手はホールバックラインをコントロールしながら、リフティングラインを巻き、エンドレスラインはブレーキをかけたままです。

 荷掛手は、リフティングラインの停止を指示し、運転手はリフティンラインにブレーキをかけます。

 荷掛手は、荷掛滑車を走らせるよう指示し、運転手はエンドレスラインのブレーキを解除し、動かします。

 ホールバックラインはコントロールしながら、リフティングラインはブレーキをかけたまま、木材を降ろす場所まで荷掛滑車を動かします。

 

 と、架線集材を見たことがない方や集材機の操作を見たことがない方は、何を言っているのか、わからないと思います。

 よくご存知の方が読むと、間違いがあるかもしれませんので、その時はご指摘ください。

 正直、僕も書きながら、正しいのか、一抹の不安はあります。

 

 要は、荷掛滑車(搬器)を動かすエンドレスライン、荷掛滑車を上げたり、下したりするリフティングライン、荷掛滑車を特定の場所へ移動させるホールバックラインをそれぞれのレバーを使って、作業毎にブレーキ、コントロール(微調整を含む)、稼働という、それぞれの操作を行わないといけないので、集材機の操作はとても煩雑です。

 間近で見ていても、何がどうなっているか、全く分かりません。

 でも、ベテランの操縦者は、その難しい操作を難なくこなしますが、その技術習得に5~7年以上かかるとか、10年以上もかかるとも言われ、人材育成にとてつもない時間を要します。

 架線集材は、運転手は荷掛手の無線指示で慎重に操作し、荷掛主は自分の安全を確保しながら運転手に指示しないといけません。

 それだけ、集材という作業は危険が伴います。

 

 油圧式集材機の運転席は、

 なんと、レバーが2本。

 この2本で、上記で記した「訳の分からない操作」が簡単に行えるようになりました。

 集材機をそれほど扱ったことがないビギナー作業員でもベテラン並みに操作できるよう、操作性が確実に向上しました。

 

 さらに、遠隔操作も可能となり、これまで、木材を荷掛ける「荷掛手」、木材を荷降ろす「荷降手」、集材機を操作する「運転手」の最低3名の作業員が必要でした。

 遠隔操作が可能になったことで、荷掛手と荷降手が遠隔操作することで、運転手が不要となり、最低2名による作業が可能となりました。

 さらに、荷掛手が機械を操作することで、確実に退避してから、安全な位置で作業できるため、ここでも作業の安全性が向上しています。

 これで遠隔操作します。

 ゲーム機みたいで、操作も容易。

 これは液晶付き。

 この液晶で、ドラムの乱巻きを確認することができます。

 これが、カメラ。

 

 動いている所の動画です。

 運転席に誰もいないのに、ドラムが動く。

 こんな時代が来るとは・・・個人的には、とても感動してます。

 

 僕もそれほど、この機械を熟知しているわけではないので、詳しい説明を省きますが、僕なりに「油圧式集材機」のメリットをまとめたいと思います。

1.安全性の向上

 従来の集材機には安全装置がなく、操作を誤れば、そのまま事故に繋がりました。

 そのため、油圧式集材機には自動ブレーキ等の安全装置が組み込まれています。

2.コスト縮減

 遠隔操作が可能になったことで、必要な作業員の数が減り、コスト縮減に繋がります。

 ただし、生産性等については、これからの調査に期待。

3.人材育成期間の大幅な縮減

 集材機の操作技術習得に、これまで5~7年以上、10年以上も要すると言われていました。

 これが・・・たぶんですが、1~2年程度まで縮減できたのではないかと思います。

 

 まだまだ課題もあるようですが、それは改善に向けて動いているようなので、今後に期待!

 

 林業において、コスト縮減はとても重要です。

 ですが、作業安全の向上人材育成期間の縮減も、同様に重要なことです。

 近年の林業技術開発は、コスト縮減に重きをおかれているように思いますが、これからは安全人材育成も視野に入れた評価も必要ではないでしょうか。

 機械などの設備投資を、単にコスト縮減と比較するだけでなく、安全と人材育成という部分、いわゆる「プライスレス」的な部分も含めた評価も重要になってくると思います。

 油圧式集材機の開発を目の当たりにして、このような一面を考えるようになりました。 

 


 「架線集材は時代遅れ。」

 「これからは作業道と機械集材。」

と、言う方もおられるでしょう。

 「道の付けられない場所では林業はしないこと。」

 「道のない場所は経済性が低い。」

と、言う方もおられるでしょう。

 でも、やはり、林業は山村地域の基幹産業です。

 道が付けられなくても、良い木材が生産できる場所があるなら、林業してもいいと思います。

 道が付けられない場所でも、林業をしたいという人がいる限り、「道がないから、林業ダメ」って、言わず、それをできる方法を一緒に考えていくべきだと思います。

 

 僕が一番危惧しているのは、架線集材の技術が途絶えたら、これまで積み上げてきた先人たちの知恵・技術が無駄になります。

 また、事故などで犠牲になった先人達の経験が、今日の作業の安全性が高まってきたことも事実です。

 ここで、架線集材がなくなれば、犠牲になった先人たちに申し訳が立たないと思います。

 

 油圧式集材機は、林業に限らず、土木工事でも活躍できます!

 また、行政機関等が油圧式集材機を災害などの緊急時用に所有することで、道路が寸断された時の資材や機材の運搬にも使えます。

 そんな時、容易に操作できる油圧式集材機があると心強いと、僕は思います。

 

 この油圧式集材機は、林業現場に留まらず、土木工事や災害時でも活躍できる画期的な開発だと思います。

 というわけで、早くこの機械が、全国に広まることを強く望みます。

 

 以下、関連記事です。

架線集材 エンドレスタイラー

二段集材

架線集材 備長炭の皆伐地にて

コメント (3)
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