はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

紀州備長炭の伝統技術 炭窯

2016年09月10日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 良い炭は、炭焼きの腕半分、窯半分と言われるほど、炭窯はとても重要です。

 今回、重要な炭窯を構築する研修会に参加してきました。

 昔の炭焼きさんは、「自分の体を使って、炭窯を作った」そうです。

 「ここは指2本半や!」

 「ここは手の甲がすっぽり入るくらいや!」

 といったもの。

 なので、その人よりも体が大きいと、

 指2本半が2本になり、手の甲がすっぽり入ると大きすぎたり、人の体格によってサイズの表現が変ります。

 言われたとおりに作ったのに、全然、良い窯ができないなんてことも・・・。

 まさに職人の世界。

 こういう技術を広めるべく、一応の設計図はあるものの、設計図を作る際に聞いた人の規格なので、またまた地域や人によって、大なり小なりの誤差はあるんだろうな~と・・・思います。

 

 炭窯の口(入口)。ここから備長炭の原木を入れます。

 炭窯の中。瓦で積み上げ、形を整え、最後は表面を土で固めます。

 (←上から)

 今回の研修のキーポイントの「煙道」。

 

 炭焼きさんたちは、一生懸命、この煙道を見て、議論されていました。

 天井は、炭窯の中で図のような組木をしてから、土を重ね、固くなるまでひたすら叩き付けるとのことです。

 あくまで聞いた話をイメージし、図にしたものなので、正しいかは不明ですので・・・。

 天井は土で固めただけで、中に骨になるような部材は一切なし。

 というのも、炭窯の中は1000℃以上の高熱になるので、天井が盛り上がり、中の炭が見えるくらいヒビが入ることも。

 でも、炭窯の温度が落ち着くと、そのヒビも埋まり、再び炭が焼けるし、もちろん、人が乗っても大丈夫。

 コンクリートでガッチガチに固めると、逆に高熱に耐え切れず、ヒビが入るとそこから壊れる。

 炭窯は、高熱に耐えられるよう、まるで呼吸するかのような、生きているかのような作り方になっているというわけです。

 

 今回の研修会では、あまり炭窯の形に触れていませんが、形も地域によって色々あるようですが、基本は左右対称。

 というのも、良い炭を焼くためには、炭窯の熱が一定に原木へ伝わらないといけないとのこと。

 少しでも形が凹むと、そこに熱が集中し、炭窯に満遍なく熱が広がらず、結果、良い炭が焼けないとのこと。

 

 つまり、熱流が満遍なく伝わるような炭窯を作らないといけない、と、理解しているつもりです。

 だけど、人によっては、同時に炭が焼けると、窯出しの作業が大変だからと言って、炭窯の形をあえて左右対称にしないという炭焼きさんもいるとか・・・。

 一方向に熱を偏らせ、少しずつ炭を窯から出すんだとか・・・きっと、炭を出しながら残りの炭の焼け具合も調整するんでしょうね・・・。

 炭窯の形状、煙道の傾き、目穴の開け方などなど、炭焼きさんや地域によって、色々ですが、共通して言っていたことは「」。

 そのためには、きちっとした炭窯を作らないと、上手く熱をコントロールできない。

 ただし、炭窯の調子(?)もあるらしく、それは出来た炭や目穴から見える熱流から、、その対処方法を検討するようです。

 だから、「炭焼きの腕半分、窯半分」と言われるんでしょうね。

 

 現代社会は、誰でも使える技術とか、誰が作っても同じ物が出来る技術を重宝されたり、追及されたりします。

 でも、この人にしかできないっていう職人の技術もやはり大切。

 木材も炭も、野菜やお米やパンなど、この人しか生み出せないモノ、この人しか生み出せない味というものがあります。

 個人的には、そうして作られたものを、手にして、使ったり、食べたりするとき、作り手の顔が思い浮かび、「あぁ~また、使いたい!食べたい!」って思えるし、何より心が満たされます

 大量生産されたものは、便利だし安いけど、最後の余韻がなく、物足りない

 手作りされたものは、それなりの値段だったり、一般的なものより高いけど、満足感がある。

 なので、その満足感を得るために奮発します。

 

 そういった満足感を与えてくれる職人さんたちの集まりに顔を出すのも、また楽しい。

 ときおり、意見がぶつかって、ケンカになりそう!って、ヒヤッとすることもあるけど・・・。

 でも、どんな分野であっても、職人さんはすげぇ~し、こだわりやプライドは素敵だと思う。

 

 炭窯と全く関係ない、まとめになったな~・・・


コウヤマキ 挿し木

2016年04月18日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 今日はコウヤマキの挿し木技術の研修会に参加しました。

 挿し木が難しいと言われるコウヤマキ。

 なんと、発根率100%という驚異の技術を確立した方がいます。

 その方は、昭和40年頃からコウヤマキの栽培に取り組み、昭和60年頃から挿し木に挑戦され、平成20年に発根率100%の独自技術を開発されました。

 その方法がとても気になるかと思いますが、研修会の趣旨を考え、この場での紹介は控えさせていただきます。

 この技術を開発された方は、90歳で今も現役の生産者です。

 そして、平成27年に、日本特用林産振興会の特用林産功労者賞を受賞されました。

 一応、現場の写真だけ掲載します。

 挿し木技術は、これまでの常識にとらわれない手法でした。

 しかし、樹木のもつ治癒力を考えると、非常に理に適っていると思いました。

 この方法はコウヤマキに限らず、マツでもできそう。

 スギやヒノキも可能なのか、そして広葉樹では・・・などと考えてしまいます。

 やってみねば!


タイニーハウス

2016年03月01日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 隠れ家的な雰囲気で、話題になっているタイニーハウス。

 アメリカ西海岸を中心にブームになっているとかで、BE-PALにも取り上げられました。

 国道424号沿いにある和歌山県田辺市龍神村の道の駅「龍遊の里」で、タイニーハウスが展示されています。

 もちろん、中に入ることもできます。ただし、中に入るときは靴を脱いでくださいね。

  

 ここには「G-WORKS」というお店があって、龍神材を使った家具をはじめ、染物、和紙、陶器、チェーンソーカービングの作品などが展示・販売されています。僕ら家族全員大好きなお店です。

 今、マイホームを建築中だけど、スペースあるから、マジで考えてしまう・・・。

 これなら、セルフビルドできるかも・・・と己惚れてしまう・・・。

 

 店舗バージョンもあります。

 

 こういうの見ると、前向きに考えてしまうな~

 地元に家立てるし、周りはすべて自分の畑と山やもんな~

 

 そう言えば、日本トレーラーハウス協会(こういう組織もあるんですよ)のHPによると、トレーラーハウスが旅館業法の営業許可がおりたとのことです。

 以下、HPの文面を引用します。

 日本で初めてトレーラーハウスによる旅館業法のホテル営業許可が取得されました。
 今まで、トレーラーハウスを利用したホテル開業のニュースが有りましたが、実態はトレーラーハウスとして建築行政に認められず、仮設建築物として2 年毎の更新をしなければならない建築物に認定されてしまいました。
 又、過去には開業後、トレーラーハウスは認めない、タイヤを取り外して基礎を作りなさい、との建築行政から指導を受けたことも有り、正式にトレーラーハウスを使用した旅館業法のホテル営業許可は今回が初めてになります。

 より詳しい内容を知りたい方は、下記URLへ

http://www.trailerhouse.or.jp/ 


紀州備長炭の伝統技術 きかたげまた

2016年02月19日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 今回は、搬出した原木を運搬する技術について。

 又になった部分の木を割って、写真のように組み合わせます。

 

 これを「きかたげまた」というそうです。

 又の間に原木を入れ、肩に担ぎます。

 前後ろの脚を左右の腕で掴みます。

 かなりの量を肩に担ぐことができるとのこと。

 原木を荷降ろす時は、「きかたげまた」を担いだまま、荒っぽく降ろしますが、このとき、「ひかたげまた」の脚を握ったままにしないと、原木と一緒に放り投げてしまい、壊れてしまうので注意とのこと。

 現場にある資源を活用して、原木を搬出する。

 炭焼きさんの搬出技術は、非常にローコストで工夫されていました。


紀州備長炭の伝統技術 野猿「つるべ」

2016年02月15日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 3回目になる今回は、備長炭原木の搬出技術「野猿(つるべ)」について。

 スギやヒノキの搬出で言う架線集材ですが、動力不要のシンプルな構造になっています。

 使用するワイヤーの直径は2ミリ程度で、主索が2本あり、その上に搬器がそれぞれ乗っており、2台の搬器は別のワイヤー(直径は1ミリ程度だったり、それぞれらしいです)で繋がっています。

  

 図にするとこんな感じ。(たぶん、合ってると思います・・・

 

 先柱は、鳥居のような櫓を組み立てて、ガイライン(控索)を設けています。

 ちなみに、真ん中のホイールに付いている棒がブレーキ。

 

 そして、何と言っても面白いのが元柱の仕組み。

 この板に搬器が当たると、搬器に乗せられた原木が自動的に落ちます。

 左下写真に注目。左端に「止め具」から突き出した金具が、上写真の板にあたると、右下写真のように「止め具」が解除され、原木が降ろされるという仕組みになっています。

 

 流れは、以下の通り。

 先柱から原木を乗せて、降ろします。

 元柱で搬器の止め具が解除され、原木が自動的に落とされます。

 一方の搬器を降ろすと、もう一方の搬器が昇ってきます。

 

 なので、下に降りたり、上に登ったり、人が行き来する必要はありません。

 また、原木も自動で落ちるので、荷降ろしの人もいりません。

 当然、これも択伐林で十分に活用できる搬出技術の1つです。

 

 と、文章で書いてもイメージが掴みにくいので、こちらも動画をご覧ください。

 見所は、「搬器が行き来する瞬間」と「原木が自動的に降ろされる瞬間」です。


紀州備長炭の伝統技術 束落とし

2016年02月14日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 今回は、備長炭の原木を搬出する技術について。

 まず、伐採した備長炭の原木を下の写真のように束ねます。

 これを「束(そく)」というそうです。

 カズラで輪を作り、そこへ原木を次々と差し込んでいきます。

 周辺にカズラがなければ、ツバキやカマツカなどしなりの強い木で輪を作ります。

 1つの束が出来たら、その後ろに新たな束を作り、2~3つ連結することも。

 そして、そのまま下まで落とします。

 これを「束おとし」というそうです。

 スギやヒノキを扱う林業でいう「修羅(しゅら)」みたいなものですね。

 

 「束おとし」で出来た道を「さで」というそうです。

 ワイヤーで「束」を作ると、最後に原木をバラすときに大変だから、カズラなどを使うそうです。

 カズラだと、ヨキでスパッ、原木がバラバラっと。

 色々飛び交う炭焼きさんの専門用語に、頭の中は「?」ですが、効率的で面白い技術がたくさんあります。

 

 写真と言葉で説明するより「束おとし」の動画を見たほうが分かりやすいと思いますので、ご覧ください。


紀州備長炭の伝統技術 択伐施業

2016年02月13日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 炭焼きさんの研修会に参加しました。

 ので、数回に分けて、簡単にご報告を。

 

 備長炭の原木と言えば、「ウバメガシ」ですが、「アラカシ」や「アカガシ」など他のカシ類も備長炭の原木として利用されています。

 ザックリ言うと、昔、原木伐採が進んだため、原木資源の枯渇を危惧し、択伐施業という技術が進められました。

 スギやヒノキの択伐とは少し異なります。

 どちらかというと、抜き伐りというか間伐に似ているかもしれません。

 これも簡単に説明すると、例えば、ウバメガシが5本株立ちしていたら、そのうち3本を伐って、2本を残すのが択伐施業。

 

 残された上層木が、株に養分を与えるので、勢い良く萌芽します。

 伐採で発生した枝条は、株元に積み上げます。

 これは、株の乾燥と土壌の乾燥を防ぐ効果があり、これを「ドヤ」というそうです。

 また、ツバキやネジキなども良質な炭ができるので、適宜、残します。

 それだけでなく、成長の早いシイの侵入を防ぐ役目も。

 皆伐の方が手間もかからず、効率的ですが、再生するスピードが違います。

 択伐施業だと15年くらいで、早いところだと10年で再生するそうです。

 

 ウバメガシの大径化が進むと萌芽更新が遅れたり、失敗するリスクも上がりますし、皆伐するとシカも集まりやすいので、食害という問題も発生します。

 そうして、ウバメガシ林に戻らずシイ林になったりすることも・・・

 もちろん、リセットすることも大切なので、皆伐を否定しているわけではありません。

 林況によっては、皆伐の方が望ましい現場もあります。

 

 しかし、ウバメガシなど原木資源の安定的な確保を可能とする択伐施業という技術は、備長炭の安定的な生産にも繋がるため、この技術は、次世代に、後世に残す・繋げていく必要があります。

 原木資源が枯渇すると備長炭は作れません。

 和歌山県にしか伝わっていないという択伐施業を主流に、他の地域と差別化を図ってほしいと思います。


架線集材 備長炭の皆伐地にて

2015年07月12日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 備長炭の原木を伐採・搬出している現場に行って来ました。

 今回は、皆伐地です。

 

 炭焼きさんと話をしている内に、搬出の手伝いをすることに・・・

 架線集材では、操縦席から現場・搬器が目視できないので、山にいる人が無線で指示を出すのが一般的です。

 無線で指示・・・なんて、初心者だと、結構、危険な作業なので、ビビりながら・・・

 

 無線を使って、材を積む場所に、搬器を誘導します(言うは易し)。

 ここで、アウトラインを動かせば・・・って、思っても、上手くいかず

 (アウトライン=搬器を動かすワイヤー線・・・かな)

 あれ?じゃあ、リフティングラインをちょっと上げて・・・、も、離れる一方

 (リフティングライン=搬器を上げ下げするワイヤー線・・・かな)

 搬器をもう少し前へ・・・あれれ・・・

 

 何度も失敗して、結局、近くにいた作業員さんとバトンタッチしました。

 架線集材の理屈や各種ラインがどれか認識をしていても、やはり、実際に作業すると思うように指示できないことがわかりました。

 頭の中や机上でイメージしていても、やはり現場は違いますね

 

 で、ワイヤーで材をくくって、搬出。

 材が持ち上げられる時、搬器一式が暴れるので、避難する場所を間違えると、搬器で吹っ飛ばされたり、架線を張り巡らせたワイヤーに吹っ飛ばされたり、材がおちてきたり、と、命に係わる危険が降り注ぎます

 

 今回の経験で痛感したこと。

 無線で指示する作業員さん。

 見えないところで搬器を巧みに操る炭焼きさん。

 どちらもすっげぇ


紀州備長炭 窯出し

2015年07月10日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 (前回の続きです。)

 いよいよ、備長炭の窯出し

 

 窯の中で精錬される備長炭。

 窯の近くは、遠赤外線によって、とても暑い

 窯内の温度は1300℃以上

 そして、とても美しい

 炭を出すために、窯の口に少しずつ集めます。

 

 そして、窯から炭を出す

 

 なんとも言えない、美しさ

 飛び散る炭の破片も真っ赤で、星屑みたい

 その美しさは、写真では再現できないほど

 実際に、窯から出された炭は、もっと美しい

 

 そして、窯から出された炭は、灰(山の土と混合。水分を含む。)で消火されます(窯外消火法・・・だったかな)。

 かけられた灰で、炭が白く見えるので、「白炭」と言われています。

 ちなみに「黒炭」は窯の中で、自然に消火(冷却)します(窯内消火法・・・だったかな)。

 

 窯から出された備長炭。

 めっちゃキレイで、最高でした


紀州備長炭の窯出し

2015年07月07日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 知り合いの炭焼きさんにお願いして、紀州備長炭の窯出しを見せてもらいました

 今まで、備長炭関係に関わってきたものの、実は、窯出しを見るのは初めて

 窯出し前夜の備長炭。

 

 窯のすき間から様子を見させてもらいました。

 赤々と光り輝いています。

 よく見ると・・・ガスのようなものが。

 このガスがなくなると、不純なものが取り除かれた備長炭になるそうです。

 なので、備長炭を使うと煙が出ません。

 さぁ!明日はいよいよ窯出しです

 

 その様子はまた次回

 先に感想を述べますと、「めっちゃきれい」でした