早生樹(そうせいじゅ)。
読んで字のごとく、生長が早い樹木。
林業界では、この早生樹、特に「外国産の早生樹」を取り入れようという動きがあります。(というか、動いているところもあります。)
樹種はセンダン(帰化植物?)、コウヨウザン、チャンチモドキ、テーダマツ、ヤシャブシなどなど。
僕個人の意見としては、「慎重に進めるべき」です。
川上側と川下側の両面から、いくつか理由があります。
(その前に、今回、長文になるので、ここから先は、お時間があるときに、お付き合いください。)
1.過去の試験結果から、風や積雪の被害を受けて成林しなかった・・・というデータがあること。
昭和30年代に木材の増産を目的に、外国産の早生樹に注目し、テーダマツなど外国産樹木が造林樹種として適合するか・・・といった試験が、テーダマツ、ストローブマツ、オウシュウアカマツなどで行われていました。
こうした外国産樹木の造林は、失敗事例が多く、造林目的に合わないとされ、結果的に考えられる様々な条件に適合した樹種を選ぶこと・・的な表現でまとめられているものが多いような気がします。
林業にとって、気象害は悩みの1つ。
台風が近づいたり、豪雨が続いたりすると、山が気になります。
スギやヒノキであっても、気象害は受けますが、外国産樹木はそれ以上に被害を受けやすいというリスクがあることを理解する必要があると思います。
現在も、当時植栽したと思われる外国産早生樹の森林が残っていますが、幹折れの残骸と一緒に、わずかな木が残っていたりと、ほとんどが成林していないものが多い気がします。
中には、成林し、外国産樹木の純林と呼べそうなものもありますが、それは稀な成功事例ではないかと思います。
(むしろ、なぜ成林したのか、過去の気象条件や地形条件などを基に検証すると、成林の秘訣が見つかるかもしれない・・・。)
2.需要先を確保できるのか。
今の流れから考えると、主にバイオマス発電やCLT向けを想定し、外国産の早生樹の導入が言われているのではないかと思います。
さて、仮に、今、植栽したとして、20~30年後の収穫期を迎えた時、流通に乗せることができるのか?
そもそも、バイオマス発電所はどの程度残っているのか?(問題発言かもしれません。不快に思われた方、申し訳ございません。)
CLTもバイオマス発電も外材の影が・・・というか、その姿を見せつつあります。
近いうちに、外材の流通ルートができるでしょう。きっと。
20~30年後、外国産の早生樹たちをその流通ルートに乗せられるのか?、乗っ取ることができるのか?
今ある森林資源で需要先を確保しつつ、20~30年後、早生樹にシフトできるマーケットを、今、構築しておかないと、それをクリアすることは難しい気がします。
一度、出来上がったマーケットを変えることは、とても大変な気がします。
そして、スギやヒノキが外国産の早生樹に変わっても、伐採や搬出のコスト、運搬コストが大きく下がることはないでしょう。
結果、今の建築用材同様、外材との競争になりそうな気がします。
そして、手入れされず、放置されたスギやヒノキと同じ道を歩まないか・・・・
それが、次の理由に続きます。
3.放置された外国産の早生樹が山に蔓延る・・・おそれがある。
実際、和歌山県ではパルプ用に植栽されたユーカリが放置されています。
当時、外国産の早生樹であるユーカリに注目し、植栽したものの、安い外材が参入した結果。
「テーダマツ」も、稚樹が実生で生えてくるので、マツ枯れ被害に遭うクロマツやアカマツの生育場所を奪わないか、危惧します。
今、注目されるコウヨウザン。
短伐期で収穫が得られ、強度はスギ以上、萌芽更新するので再造林不要・・・と言われています。
スギやヒノキなら、伐採すれば天然更新で樹種転換が可能です。
萌芽更新するコウヨウザンは、樹種転換がとても困難。
小笠原で蔓延った「アカギ」という外国産樹木の問題を考えると、ことの重大さをお分かりいただけるかと思います。
和歌山県も熊野古道という世界文化遺産もあるので、そういう意味では、他人事ではないと思っています。
それに、生物多様性、郷土樹種、遺伝子や固有種の保存、生態系の維持などが重要視される中、外国産の早生樹は、逆の道を歩んでいるような気がします。
外国産の草本類は、すぐに蔓延するため、生態系への影響は大きく、外国産の樹木が与える生態系の影響は小さいと言われていますが、外来生物法に指定される樹木も僅かにあるので、軽視できないなと思っています。
ちなみに、外国産の早生樹の1つ「ヤシャブシ」も花粉症の原因になります。
ここまで、外国産の早生樹に対して、ネガティブな意見を並べました。
しかし、反対しているわけではなく、あくまで、「慎重に進めるべき」です。
こうした外国産の早生樹が林業界を支える1つの柱になるなら、進めてもいいと思います。
ただし、先の3点をクリアしないといけないと思っています。
1.風や雪の被害を考えた上で、被害が遭いにくい適した場所に適した外国産の早生樹を植える。まさに「適地適木」。そして、過去に行った失敗事例を整理した上で、同じ過ちを繰り返さないこと。
2.現時点で、需要先を確保しつつ、樹種が外国産の早生樹に変わっても問題ないマーケットであること。「定めた材積量を守れば、樹種も品質も関係ないよ」といった需要先の確保が一番妥当?
3.植えた外国産の早生樹はきちんと循環利用。循環利用ができなくなれば、樹種転換すること。
と、思う限りの条件を並べてみましたが、それだけ、外国産の早生樹はリスクがあると考えています。
というか、現代人の森林・林業に対するニーズを考えると、そう考えざるを得ないと思っています。
当時、必要と求められ、拡大造林されたスギやヒノキが、現代では花粉症の原因や公益的機能の低下を招いているといった意見が出されたり、対策を求められたりしているわけです。
実際は、何を植栽するかは所有者の意思ですが、林業という産業は、様々な環境問題と直結して考えられるため、世間から厳しい意見が出ることも多々あります。
でも、早生樹は導入したい。
そこで、注目すべきは、国産の早生樹
バイオマス発電なら、樹種なんて、なんでもいいでしょう。
アカメガシワ、カラスザンショウなど先駆性樹種(パイオニア)も使えます。
伐っても、伐っても生えてくるし、どこにでも生えるし。
しいたけ原木の価格も侮れない。
このブログで何度も書いていますが、単価でみれば、ヒノキと差がないし、下手すれば、ヒノキよりも高い場合も。
もちろん、スギやカラマツよりも高い場合も。
コナラやクヌギも生長が早いし、萌芽更新ができるので、軌道に乗れば、20年サイクルで収穫できる。
和歌山県の場合、紀州備長炭があるので、ウバメガシやアラカシも可能。
これも、このブログで何度も書いていますが、択伐施業をすれば、20年サイクルで循環利用できます。
ウバメガシ林の経済評価も、補助金込みのスギ林やヒノキ林よりも高いという試算もあります。
ウルシも早生樹。
材としてではなく、漆塗りに。
家具なら、キリも。
育林技術が必要という課題もありますが、昔のような一級品ではなく、一般向けの育林技術を検討する余地もあるかも。
他にも、シイノキやクスノキも早生樹。
自生種を見ても、広葉樹の中では、通直性が高い・・・と思う。
特に、シイノキは用途開発の研究が進められたり、新たな木材利用として今後注目されるかも・・・?
クスノキは、天板などで流通していますし・・・。
あと、アカマツも早生樹。
マツ枯れの問題がありますが・・・。
仮に、国産の早生樹は放置されても、悪影響が低い。
実際、今、放置されて、代表的に問題となっているのは、ナラ枯れ。
昔も外国産の早生樹は植えられました。
昭和30年代にダグラスファーやオウシュウアカマツなどの植栽試験をしたものの、失敗事例が多く、造林樹種として不適とされました。
そして、外材としてダグラスファーやオウシュウアカマツが輸入されるようになりました。
全国的にも、試験に失敗した外国産の早生樹の放置林が残っている現場もあるようです。
過去の過ちや失敗の原因を理解した上で、同じ過ちを繰り返さないよう外国産の早生樹を取り入れるべきかと思います。
そう、事前対策は重要・必要だと思います。
そして、国産の早生樹にも注目し、その地域にあった用途が眠っているはず。
後継者がいないという問題もありますが、一方で、Iターンの方たちが、そういう道に進んでいる事例もあります。
和歌山県でも、炭焼きや桶職人などの道に進んでいる人もいます。
そういう人たちに向けた資源を提供するといったマーケット作りも必要だと思います。
国産の早生樹や広葉樹が、林業業界から影を薄めたのは、木材価格の高騰という当時の背景があったからだと思います。
それでも、今もその市場(?)で生き残っているという現実があります。
木材価格が下がる中、国産の早生樹や広葉樹の需要先を再び築くことも、林業ビジネスの1つだと思います。
という考えから、「外国産の早生樹は慎重に進めるべき」に至ったわけです。
僕自身は、所有者でもなければ、林業経営者でもないので、世間の勝手な意見の1つ捉えてください。
でも、一人で考えている・・・というか、妄想しているので、皆さんは、どのような考えをお持ちなのか、非常に興味があります。
以上、最後まで、こんな妄想長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。。。m(_ _)m
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