実際に間伐する場合、形状の悪い木、被圧木、劣勢木、衰弱木、虫害木を対象に行うことが主流で、マニュアルでは、間伐木を選定する基準として、寺崎式樹型級区分の図が一番有名ではないかと思います。
今回は、師匠から教わった、あまりマニュアルには記載されていない間伐の選木について。
決して、これが1番だとか、最高だとか言うつもりではなく、あくまで、教えていただいたことをお伝えしたいだけですので、ご理解ください。
間伐の選木とは、「間伐する木を選ぶ」のではなく、「価値のある残すべき木を選ぶ」。
そして、価値のある木とは、必ずしも成長の良い木や形状の良い木ではないということです。
師匠から教わった価値のある木とは・・・
1.年輪が均一で緻密
2.元口と末口の中心部がズレていない
3.タケノコ杢
主にこの3点を外見から見極めて、残していくと・・・。
選木の際、価値のある木に眼を向けることで、木材の価値を見極める眼が養われる・・・ということで、悪い木を主眼に置いてはいけないとのこと。
ただ、言うのは簡単ですが、実践するのは本当に困難・・・。
上記3点を意味するところは、丸太を乾燥させ、製材したときに、曲りや反りなどが発生しにくいということです。
丸太の中心から柱を取って、側で板を取ったり、カスケード利用する場合、柱も板も曲りや反りが発生しにくい木は、製材所からすると魅力的な木材だということです。
丸太の径級や長さは、その時の市場で判断しないといけないため、間伐の時点で、どの径級が好まれるか、予測することは出来ません。
木は生き物で、乾燥という工程がある以上、上記3点の条件は、径級や長さと違い、常に好まれるということです。
成長の良い木を中心に残すような選木をすると、自ずと伐採する本数が多くなったり、間伐コストが上がったり、ha当たりの蓄積量が低下する場合もあります。
また、成長が良いということは、年輪幅が荒いということでもあり、強度や乾燥時の反りなどにも影響があるということです。
立木が商品である以上、成長が良い・悪いよりも、価値が高い・低いで判断する必要があるということです。
1.年輪が均一で緻密
年輪は、緻密な方が強度が高く、均一であると乾燥時の曲りや反りが発生しにくいです。
2.元口と末口の中心部がズレていない
元口の中心と末口の中心に大きなずれがあると、乾燥時に反りが発生しやすくなります。
特に、5m、6mなど長材になると、その影響は顕著に表れます。
木が真っ直ぐに成長しないと、元口と末口の中心部にズレがでてきます。
これを立木の状態で見極める・・らしい。
明らかに曲がっている立木は間伐の対象。
下の写真は、あくまでイメージです。
3.タケノコ杢
製材した時に表れる木目がタケノコ杢ということは、木の肥大成長と伸長成長ともに素直であるということです。
銘木級のタケノコ杢まで求めるものではありませんが、それに近いものを残す・・・と教わりましたが、はっきり言って、僕は外見から見極めることが出来ません。
おそらくですが、1と2を満たせば、自ずと3に近づくんじゃないのかな~と思います。
あと、残した木に対して、特に支障と与えない木も残します。
伐る必要のない木は伐らないのも、コスト縮減の1つ。
また、伐らずに残すことで、その木に価値を見出す人が現れる可能性もあります。
形状の悪い木が必ずしも価値がないというわけではないということです。
ただ、確実性が高いものではないので、あくまで、伐らなくてもいいのであれば伐らないという感じで残す。
形状の悪い木は必ず伐るものではないということです。
少し極端な写真ですが・・・
ただし、損傷した立木や虫害を受けた立木は、真っ先に間伐の対象木となる。
間伐の選木とは、「間伐する木を選ぶ」のではなく、「価値のある残す木を選ぶ」ということ。
価値のある木を主眼に置くことで、木材の価値を見極める眼を養うことが可能になります。
しかしながら、伐ることに主眼を置かず、将来に残したい価値のある木に主眼を置いて、選木することはとても困難です。
ここ十数年、間伐の選木を実践していないので、この勘を取り戻していきたいですね。
現場で叩きあげられてきた師匠の教えやマニュアルに書かれていない現場の知識など、いわゆる「現場での口頭伝承」というものを次の世代に繋げていきたいと考えています。