林業の夏の作業と言えば、下刈り。
基本的に植物は、春、根茎に蓄積された養分を消費して、新葉・新芽を展開します。
夏、新しい葉を展開した後は、根茎に蓄積された養分は大きく低下し、再生力も衰えるため、新しい葉で光合成を盛んに行います。
秋、来年の春に備えて、生産した養分を根茎に蓄積します。
感覚的な話になりますが、
梅雨明け後、盛んに光合成を行い、植物の生長が旺盛になる。
お盆明け以降は、光合成で得た養分を蓄積している。
と思います・・・、まぁ、あくまで、感覚的な話です。
夏に下刈りを行うことは、植物・樹木の生長を考えると、とても理にかなっています。
植えた木を成長させたい。
ならば、夏の生育環境を整えてあげれば、植えた木はグッと成長します。
植えた木以外の植物を抑制したい。
ならば、根茎などに蓄積された養分が大幅に低下し、再生力も低下した夏に、刈ってやれば、成長を十分に阻害できます。
夏になると、植物や樹木がぐんぐんと成長するため、一番活気盛んで元気!って感じるかもしれませんが、実は、養分のたくわえが最も少ない時期で、再生力も弱く、光合成を行う葉を一番失いたくない、ストレスを感じやすい季節が夏です。
さて、下刈りの目的は、
①植栽木の健全な成長
光環境の改善。
風通しを良くし、蒸れによる枯死を回避。
梢端部への被圧防止。
②植栽木の幹曲がり防止
寄りかかってくる他の植物を除去し、覆い被さることを防ぐ。
③つる類による巻きつきや被圧の防止
ざっくり言うと、
「植えた木が立派に成長するため、競争相手となる他の植物を除去する」
「良い木材を生産するため、材質や価値の低下を招く要因となる他の植物を除去する」
という感じです。
下刈りは、植栽木とそれ以外の樹木の生長との関係によって異なりますが、概ね植栽後5~6年間、毎年行います。
後半になると植栽木以外の植物を除去するというより、「つる」の駆除がメインになる場合が多いと思います。
下刈りの時期は、植栽樹種によって多少の差はありますが、概ね6月中旬~7月下旬が望ましく、8月中旬や下旬とあまり遅い時期に行うと、下刈り後の生長期間が短くなり、植栽木の成長促進効果は高いとは言えません。
前出した内容と重複しますが、秋になると、光合成で生産した養分は、成長のために使わず、蓄積に回すため、下刈りを8月中旬以降と遅い時期に行うと、植栽木の生長期間が短く、結果、成長促進効果が伸びないというわけです。
ちなみに、スギは6月中旬~7月下旬、ヒノキは7月上旬~7月下旬の期間が適しているといわれています。
そして、アシナガバチの活動が最も活発で、危険な時期は8月と言われています。
なので、アシナガバチの被害軽減と下刈り効果を考えると、7月末までに下刈りを完了させることが理想です。
林床に、直接、太陽の光があたる時期の森林は、様々な植物が繁茂するため、激しい生存競争が行われます。
その激しい生存競争の中で、植栽木を生き残らせるために、下刈りを行います。
これは、スギやヒノキに限らず、広葉樹であっても、人が植えた以上、無事に成長するまで、面倒を見ることが大切だと思います。
次に下刈りの方法です。
植栽地を全面的に刈る「全刈り」
植栽木の列に沿って、帯状に刈る「筋刈り」
さらに、縦方向(傾斜方向)に刈る「縦筋刈り」と横方向(水平方向)に刈る「横筋刈り」の2種類があります。
植栽木の周囲1m四方程度を方形または円形に刈る「坪刈り」
上述した3つの下刈りは、それぞれの特徴があります。
すみません、書くのが面倒なので、一覧表を貼り付けますね。
実は、下刈りそれぞれのメリットとデメリットは、昔から言われています。
近年は、コスト重視で全刈りか筋刈りかみたいに言われることもありますが、植栽樹種、雑草木の状況などの条件に応じて、どの方法を採用すべきか、検討する必要もあります。
植栽木の成長を優先するなら全刈りですが、獣害のことを考えると筋刈りの方が良いけど、ウサギが多いなら坪刈りが良い。
植栽(造林)コストの軽減と言うことで、haあたりの植栽本数も下がってきているので、自ずと、1本あたりの植栽間隔が広くなり、結果、全刈りだと無駄に刈り払う面積が増えるということも・・・。
が・・・、そう言いつつも、色んなことを考えると、結果的に全刈りが一番楽なんじゃないかな~と思います。
下刈りの動画Ver.はこちらです!↓ ↓
森の知識はぐくMOVIE「下刈り」