梅雨明け間近、山をほっつき歩いてきました。
山小屋は密状態が怖いし、予約も厳重で行動に制限が出るからテントを背負って行くことにしました。
衣食住を背負って山を歩くのは、学生の頃に中国パキスタン国境へ釣りに出かけて以来、実に30数年ぶりです。
登山を始めてからこの一年間、46座の山を登ってそこそこ体力と技術がついてきたので、その集大成として北アルプスを選びました。
初日からガスと強風のお出迎え。朝は気温8度くらいで泣きそうでした。
山頂に立って展望したときに、次はあの山へ行ってみるか、という感じで歩を進めていきます。
特にルートは決めてないので、登山計画は変更があるたびに長野と岐阜県警にネットで申請しました。 便利ですね。
テント場に着いたら荷をほどき、重い登山靴を脱ぎ、沖縄のホテルでもらった島ぞうりに履き替えて散歩にでかけます。
高山植物と島ぞうりがまさかのご対面。花崗岩の白砂はビーチにいるみたいで、標高3000メートル近いのに登山感ゼロ。
3000羽ほど生息する雷鳥。近づいても逃げない。ふっくらして美味しそう
毎日朝5時ころに出発して次のテント場に昼過ぎに着いて、一杯飲み始める、という健康なのか不健康なのかよくわからない生活です
かっこ悪いアマガエル色のエスパーステントですが、強風雨にはめっぽう強くてほんとうに頼もしかった。隣のニーモのテントはひしゃげていたからね。
窓を開けると絶景が広がっていて、したがって酒が進みます。
山小屋には(缶800円くらいするけれど)冷えたビールがあるのでほんとうにありがたいです。
山で飲む酒はどうしてこうも格別なのでしょう。
今回はトランジスタラジオを持ってきたので、地元ローカル局を聴きながらまったり飲みました。
テレビのように過度に不安を煽る報道は無く、視聴者に寄り添う姿勢を感じます。
NHKFM 音楽遊覧飛行でワールドミュージックを聴きながら杯を傾けるのも最高でしたね。
山の酒器はサーモス真空タンブラー280ml一択です。他のメーカーの二重構造タンブラーとは一線を画します。
家で使うときは氷が溶けないので重宝します。
カップラーメンのリフィルがシンデレラフィットします。
缶ビールをカポッと落とし込むと保冷ホルダーになります。
いつまでも温かいラーメン、そしていつでも冷たいビール。
780円で毎夜、幸せになれますよ。
最初の3日間はガスが濃くて難儀しました。道標がよく見えないのです。
☓のほうに行くと5秒で死ねます
さりとて
不用意に○を選ぶと、それは地衣類の模様だったりするから山のトラップには気が抜けない
4日めにようやく梅雨が明けました。
やっと展望が開けて、子どものようにはしゃぎましたが、ここから槍を越えるまでが辛かった
常念岳をこえて横道岳にさしかかるとき、クマの糞を発見
10分後、谷筋にツキノワグマの親子を見た。
高山の柔らかい草を親子共々、一心不乱に食んでいる姿は微笑ましかった。
次の日にはニュースになっていた。
対応を誤らなければ、それほど怖い存在ではありませんが、テントを引っかかれるのはちょっとイヤ
縦走登山は気分がいいけど、ザックが重くて辛いです。
一日10時間超えて歩いたときは、あまりにもつらすぎて3回吐きました。
つらすぎて登山が嫌になるのもあれなので、骨休めに立山に向かいました。
ここのテント場は抜群の眺望&付近に温泉が3つも!
久々にお風呂に浸かり、雄山を眺めながら美味しいビールを飲みました。
夜、隣のテントでカップルがいちゃいちゃし始めます。
「ねぇ、マクラぁ、もっとこっちにちょうだい」
「フフ、、これ枕ちがうがな」
・・・なんなんだ、枕ちがうマクラって。
気になってよく眠れませんでした。
まんじりともしない朝、テントを出ると、同じくよく眠れなかったとおぼしきおっさんが一人酒を飲んでいた。
ダイソーのシールが貼られたままのシャンプー容器にウイスキーを詰めて飲んでいた。
ふと眼があってしまった。
こっちへおいで、と手をクイクイしている。。。
この数日、景色や植物など、きれいなものばかりを見てきたが、清らかすぎて少し居心地が悪く、どこへ行っても何かがもの足りない気がしていた。
非日常を楽しむのが旅、とは思うが、なんとなく落ち着かないのはなぜか。
それはこのような朝っぱらからウイスキーを飲んでいるおっさんとの邂逅、いうなればコク味のようなものではなかったか。
甘いお汁粉にひとつまみの塩を入れるように、優れた料理には必ず雑味が入るという。
雑味によって旅の味わいはふくらみ、ようやく「俺の旅」は完成に近づいてきた。
さてこのおっさん、もうすぐ70なるんだけど、兄弟で山に来ているとのこと。
兄はトイレに行ったまま1時間帰ってこないらしい。大丈夫だろうか。
お互いにウイスキーを飲みつつ兄を待つ。
おっさんの前職は結核の予防を世界に啓蒙する仕事で50カ国以上まわった、とのことだった。
BCGがコロナウイルスの予防に役立つという説は本当か、と尋ねると眉間にシワを寄せ「ウイルスのスパイクの型によっては、あるいは」と言った。
さっきまで、読売新聞の販促からビール券を余計に引き出す法とか、トリスとニッカのブレンド黄金比、みたいなことを喋っていたのにあれは別人か。
そんなこんなで、兄、登場。
兄は柔術の達人だった。
鍼灸あんまの免許を持つ同業者だった
俺の持つ「懐柔術」を使ってみたらものすごく気に入られ、朝からウイスキーがとまらない。
兄の興が乗り、大東流柔術デモンストレーションが始まった。
標高2400メートル、朝8時。
なに整体を教えてるだぁ? そんなやつはあん摩の敵じゃ! イデデデ!
後ろの二人がいちゃいちゃカップルなわけですが、山のカップルは死ね。二度死ね。
この後、おっさんどもは剱岳に向かい、俺は天気悪いので剱岳やめて立山三山を縦走して黒部へ。
さくっと言ったが、剱岳は日本の登山最難関、立山三山は全て3000メートル峰。
酔っ払ってやるものではないです。
山はお腹いっぱいになったので、鍼灸学校の同級生が経営しているキャンプ場へお邪魔した
悪い社長どもが湖畔のキャンプ場に集結し、黒い酒を飲みました
せっかく浄化された魂がみるみる濁っていきましたが、一週間の山旅はここに完成しました。
キャンプ場のオーナーが持ってきてくれたヒメマスに舌鼓を打ちながら、昔話に花を咲かせていたらいつの間にか失神してしまいました。相当、疲れていたのでしょう。
翌朝、隣の湖で湯に浸かり、山品で絶品の蕎麦を手繰り、下界に降りてきた今、あまりの暑さに脳が溶け、何もする気が起きません。
コロナ禍でポッカリと仕事に穴があき、山へ行ってきた報告でした。
追記
この湖にも熊がうろついている様子。 今年は多いらしい。
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山小屋は密状態が怖いし、予約も厳重で行動に制限が出るからテントを背負って行くことにしました。
衣食住を背負って山を歩くのは、学生の頃に中国パキスタン国境へ釣りに出かけて以来、実に30数年ぶりです。
登山を始めてからこの一年間、46座の山を登ってそこそこ体力と技術がついてきたので、その集大成として北アルプスを選びました。
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山頂に立って展望したときに、次はあの山へ行ってみるか、という感じで歩を進めていきます。
特にルートは決めてないので、登山計画は変更があるたびに長野と岐阜県警にネットで申請しました。 便利ですね。
テント場に着いたら荷をほどき、重い登山靴を脱ぎ、沖縄のホテルでもらった島ぞうりに履き替えて散歩にでかけます。
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毎日朝5時ころに出発して次のテント場に昼過ぎに着いて、一杯飲み始める、という健康なのか不健康なのかよくわからない生活です
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窓を開けると絶景が広がっていて、したがって酒が進みます。
山小屋には(缶800円くらいするけれど)冷えたビールがあるのでほんとうにありがたいです。
山で飲む酒はどうしてこうも格別なのでしょう。
今回はトランジスタラジオを持ってきたので、地元ローカル局を聴きながらまったり飲みました。
テレビのように過度に不安を煽る報道は無く、視聴者に寄り添う姿勢を感じます。
NHKFM 音楽遊覧飛行でワールドミュージックを聴きながら杯を傾けるのも最高でしたね。
山の酒器はサーモス真空タンブラー280ml一択です。他のメーカーの二重構造タンブラーとは一線を画します。
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缶ビールをカポッと落とし込むと保冷ホルダーになります。
いつまでも温かいラーメン、そしていつでも冷たいビール。
780円で毎夜、幸せになれますよ。
最初の3日間はガスが濃くて難儀しました。道標がよく見えないのです。
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さりとて
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4日めにようやく梅雨が明けました。
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10分後、谷筋にツキノワグマの親子を見た。
高山の柔らかい草を親子共々、一心不乱に食んでいる姿は微笑ましかった。
次の日にはニュースになっていた。
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一日10時間超えて歩いたときは、あまりにもつらすぎて3回吐きました。
つらすぎて登山が嫌になるのもあれなので、骨休めに立山に向かいました。
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久々にお風呂に浸かり、雄山を眺めながら美味しいビールを飲みました。
夜、隣のテントでカップルがいちゃいちゃし始めます。
「ねぇ、マクラぁ、もっとこっちにちょうだい」
「フフ、、これ枕ちがうがな」
・・・なんなんだ、枕ちがうマクラって。
気になってよく眠れませんでした。
まんじりともしない朝、テントを出ると、同じくよく眠れなかったとおぼしきおっさんが一人酒を飲んでいた。
ダイソーのシールが貼られたままのシャンプー容器にウイスキーを詰めて飲んでいた。
ふと眼があってしまった。
こっちへおいで、と手をクイクイしている。。。
この数日、景色や植物など、きれいなものばかりを見てきたが、清らかすぎて少し居心地が悪く、どこへ行っても何かがもの足りない気がしていた。
非日常を楽しむのが旅、とは思うが、なんとなく落ち着かないのはなぜか。
それはこのような朝っぱらからウイスキーを飲んでいるおっさんとの邂逅、いうなればコク味のようなものではなかったか。
甘いお汁粉にひとつまみの塩を入れるように、優れた料理には必ず雑味が入るという。
雑味によって旅の味わいはふくらみ、ようやく「俺の旅」は完成に近づいてきた。
さてこのおっさん、もうすぐ70なるんだけど、兄弟で山に来ているとのこと。
兄はトイレに行ったまま1時間帰ってこないらしい。大丈夫だろうか。
お互いにウイスキーを飲みつつ兄を待つ。
おっさんの前職は結核の予防を世界に啓蒙する仕事で50カ国以上まわった、とのことだった。
BCGがコロナウイルスの予防に役立つという説は本当か、と尋ねると眉間にシワを寄せ「ウイルスのスパイクの型によっては、あるいは」と言った。
さっきまで、読売新聞の販促からビール券を余計に引き出す法とか、トリスとニッカのブレンド黄金比、みたいなことを喋っていたのにあれは別人か。
そんなこんなで、兄、登場。
兄は柔術の達人だった。
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俺の持つ「懐柔術」を使ってみたらものすごく気に入られ、朝からウイスキーがとまらない。
兄の興が乗り、大東流柔術デモンストレーションが始まった。
標高2400メートル、朝8時。
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後ろの二人がいちゃいちゃカップルなわけですが、山のカップルは死ね。二度死ね。
この後、おっさんどもは剱岳に向かい、俺は天気悪いので剱岳やめて立山三山を縦走して黒部へ。
さくっと言ったが、剱岳は日本の登山最難関、立山三山は全て3000メートル峰。
酔っ払ってやるものではないです。
山はお腹いっぱいになったので、鍼灸学校の同級生が経営しているキャンプ場へお邪魔した
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せっかく浄化された魂がみるみる濁っていきましたが、一週間の山旅はここに完成しました。
キャンプ場のオーナーが持ってきてくれたヒメマスに舌鼓を打ちながら、昔話に花を咲かせていたらいつの間にか失神してしまいました。相当、疲れていたのでしょう。
翌朝、隣の湖で湯に浸かり、山品で絶品の蕎麦を手繰り、下界に降りてきた今、あまりの暑さに脳が溶け、何もする気が起きません。
コロナ禍でポッカリと仕事に穴があき、山へ行ってきた報告でした。
追記
この湖にも熊がうろついている様子。 今年は多いらしい。
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