帰ってきた特派員報告

2004年に沖縄移住しteacupブログ開設→gooブログへ引越し

北陸へ

2020-12-03 15:08:00 | 金継ぎ/漆
割れてしまった高麗茶碗を金で繕い、ご飯茶碗として長いこと使ってきた


掌にすっぽりと収まる丁度いいサイズと、ザリザリとした肌の感触が気に入っていたのだが、経年で金が剥がれはじめた

電子レンジが使えないという不便を感じていたので、そろそろ買い替えようと思っていたそんな折、北陸行きの用事ができた

当地の九谷焼はご飯茶碗にはいささか華やかだろうか



鉛色の空とぐちゃぐちゃの海 冬の日本海はこうでなくっちゃ

富山・石川・福井の3県をひたすら走る

車窓からこの夏に縦走した北アルプスが見えた

かなり無理をしたので、いまだに膝が痛む 

登山はしばらくおあずけだ


途中、永平寺に寄った 

せっかくなので座禅を組ませてもらった
コロナ対策で座蒲の間隔がスカスカ 

久しぶりの結跏趺坐で足がつってしまい困ったが、本場の座禅は普段やっているマインドフルネスと一味違い、頭がすっきりシャープになった

もっと高みへ行きたくて呼吸を指先まで行きわたらせたが、ふと例のマンガの「全集中!」とか「水の呼吸」などを思い出してしまい、心が波立って終わった



              (輪島ナビより)
同行者が揚げ浜式塩田の塩を買った

江戸の頃から変わらない方法で作った塩はほんのり甘い

江戸の塩といえば思い出すのは阿茶局のエピソード

家康に「この世で一番うまいものはなにか」と問われ

「塩にございます 山海の珍味も塩梅しだいにて」

「では、一番まずいものは」

「それも塩でございます 勝れば食べることができませぬ」

武芸、馬術に優れていたスーパー未亡人、阿茶

家康は戦場にも連れて行き、駿府城に隠居したときも側室の中で彼女だけを呼び寄せた

大河ドラマにしてほしい



通りがかった港で酒肴を求め、今夜の宿へ

地元の品々で一杯

日本酒の神様といわれる、農口尚彦研究所の酒を入手できたのは幸運だった

それは甘海老のネットリとした甘みや、香箱カニの濃厚な味噌に負けない素晴らしい酒だった

こんなすごい酒は自分史上NO.1!とかいうと世田谷自然食品のCMみたいだが、本当に米の香り・ちから強さ・キレが抜群で、杯が止まらずに2時間たらずで失神したから間違いはない


翌朝、ぼーっと窓の外を眺めると朝日の中に静かな海が見えた
でもよく見ると、それはソーラーパネルだった

座禅の効果は一晩で消えてしまった


帰りがけ、瀬戸物屋に寄ってもらい茶碗を物色した

九谷焼には珍しいシンプルな水墨画の絵付けを見つけた

田中正人さんという作家の品で、ふわりと軽く、よく手に馴染む

家に帰り、米の研ぎ汁で30分ほど炊いて目止めをした
肌合いはざりっとしながらもどこかしっとりして良い感じ

ユーモラスな鯛の眼が、肥えていく俺の腹を睨んでいる






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金継ぎ完了

2010-11-03 10:32:00 | 金継ぎ/漆


ようやく蕎麦猪口の金継ぎが完了した。

この数カ月で、うるしの奥深さを知ることができた。

うるしの語源は「うるわしい」であり、そして英語のJAPANは「漆器」の意味もある。
陶器がCHINAであるなら、日本人としては漆を学ぶ意義は大きい。

実体験ができたので、今度は文献で研究をすすめてみることにしよう。

さっそくアマゾンで探してみたら、なんだかすごい本がでてきた。



                ・・・なんだこれ。


現役の漆職人がマンガを描いたらしいんだけど、線がとにかくひどい。

蒔絵でこれほど繊細に筆を走らせることができる職人さんにマンガを描かせてみる、というのはいいアイデアだが、どうしたらこんなんなっちゃうのだろうか。(笑)



       「描いてるうちにどんどん首が太くなってしまいました」(作者談)


ガロ系の漫画がお好きな人なら楽しめるとおもいます。

好き嫌いは分かれるだろうが、こんな作品が二度と出ないだろうこともまた事実! 手に入るうちに買っておけッ!




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金継ぎに挑戦! その4

2010-09-06 13:53:00 | 金継ぎ/漆
調べてみると、漆を乾燥させるには70%ほどの湿度が必要らしい。
湿らせながら乾燥させる、とはこれいかに。
水分によって漆の酵素が活性化し硬化するので、漆職人は梅雨時には仕事をしないとのことである。

湿度が高いと塗ったそばから固まってしまうので作業ができないらしい。

って、連日の台風でジメジメ高湿度の沖縄はどうなのよ。
家の湿度計をみてみると、ほぼ100%。
あわてて金継ぎの蕎麦猪口をあけてみました。

          わお、キンキンに固まっている

一か月も寝かせてたらカビが生えるところだった。
沖縄の夏は漆の乾燥には最適なようだ。

ならばどんどん進めよう。次なる作業「漆上げ&研ぎ」

継いだ場所の凸凹にベンガラ漆(朱色)を盛り、ペーパー(800番)で水研ぎして面をツルツルにします。
再び乾燥した後、金粉をつけるための漆を薄くかける。
今度は朱合漆とベンガラを半々にしてトロリとさせます。

          ピンボケではない。手がふるえているのだ。

            いまのところは順調な仕上がり


いよいよ金粉を蒔く時がきたが、あせって蒔くと漆の中に金が沈んでしまうというので、小一時間休憩しましょう。

            残った漆を使ってマイ箸を塗ってみた


生乾きになったところで、金粉を「ケボ」という筆ですくいとり



           そーっと払うように蒔きます


お次は「粉固め」(ふんがため)という作業。
かろうじてくっついている金粉の上へ、希釈した生うるしを塗りつけて固着させます。



せっかくの輝く金粉がわらびもちのきなこみたいになってしまうのは、ちょっとさびしいことです。

次回の磨き作業で、いよいよ最終回です。

マニアックなネタばかりですいません。
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金継ぎに挑戦! その3

2010-08-31 01:17:00 | 金継ぎ/漆
よしざる老人は、繕っている陶器の漆の乗り具合はどうだろうか、などと気になって仕方がないらしく、寝かしつけた器の寝顔をそっと覗いているようだ。

ふたを開けてみると、やや、目にみえなかった傷さえもが勝手に修復されてきているではないか。
ウルシって、すげぇな。。
        「いい景色ですねぇ・・」とか独りごとを言ってみたくなる




で、その老人の親も那覇港でサヨリを釣ってご満悦の様子らしい。

 
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金継ぎに挑戦! その2

2010-08-25 16:57:00 | 金継ぎ/漆
おはようございます!

昨日に引き続き、割れた蕎麦猪口の修復作業にかかります。

           じいちゃんは何にでも触るから、念のために警告


さてこれからの作業が難関だ。
「ホツ」という縁の欠けた部分の修復作業。

          破片は掃除機で吸ってしまった・・・

エポキシがあればわけはないのだが、江戸のスタイルにこだわって「錆漆」というものを作ってパテ埋めします。
口に触れるものなので、自然の素材を使いたいという理由もあります。

           砥の粉を微量な水でねりねり1時間
 

            同量の生うるしを混ぜ合わせ再びねりねり1時間


             気分はもう左官屋さんだ


なんか昨日から練ってばかりで飽きたので、途中で錆漆の盛りつけ用に割りばしで筆を作ったりします。

           刃物を使って気分転換


練り続けること3時間、いよいよ盛り付けタイムです。



           よく見えない眼と、震える手。俺は老人か。


          左、江戸職人の修復痕。   右、ダメだこりゃ。


かぶれるのが怖くて手が震えるし、老眼で近くのものがよく見えないから難儀しましたが、苦労して作った錆漆を欠けた縁に盛っていく作業は、なんともいえない愉しさがありました。
そしてエコ観念ゼロだった俺が、モノを大切に使うことの意味を身体をもって知ることになりましたですよ。
100均一はこれからも使いたおしますけどね。

修復はまだ半ば。このまま湿度を80%に保った衣装ボックスで冷暗所に1カ月間寝かせた後、(うまく乾燥できたとしたら)いよいよお楽しみの金粉ショー。

リスじゃないけど、どこに埋めたか忘れちゃいそうな予感もします。

     以上、夏休み自由研究でした。おやすみ、蕎麦猪口たちよ。
 

             来月にはこんな風にしてやるからな





・・・なんてことやってたら、もう夏休みは終わり?!
うん、そうね。楽しかったよ、海にも行けたし。
明日からお仕事がんばります!

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