けさ6時、
昔の友人が西瓜を届けてくれた。
と言うことは、彼は5時半に家を出ている。
自分で育てたものらしいが、
これほど巨大な西瓜は見たことが無い。
ぼくの細腕ではとても抱えていられない。
彼は35・6年前、
ぼくのレストランに夜ごと集まってきては
暖炉の火をかこみ
人生論、恋愛論、政治論など熱っぽく語り合った
仲間たちのひとりである。
ベトナム戦争が終結し
テロリスト日本赤軍に世界が震撼し
小松左京の「日本沈没」がベストセラーとなり
ラジオからはカーペンターズのイエスタディ・ワンスモアが流れ
だれもが悶々とした青春の焦燥感を抱いていた時代であった。
かれの結婚を堺に交流は無くなったが
突然、こうして訪ねてきてくれた。
互いに髪も白くなったが
彼はぼくをマスターと呼び
ぼくはケンチャンと呼び
たちまち、あの若きウェルテルに還っていく。
男はいくつになっても
少年のままだ。
鳴きまねをして老鶯を惑はせり やす