お囃子の練習がはじまった。
二週間後の天王祭に向けて
夕方になると近くの子どもたちが集まってくる。
子どもは覚えが早く
たどたどしい響きも十日ほどの練習で
心地よいリズムに変わってくる。
そのころには梅雨も明ける。
夏祭りは子どもたちを中心にやるのがいい。
ふるさとの想い出は
ふるさとを愛する心を育ててくれて
やがては母国を愛する心に深まっていく。
大人たちは子どもたちの思い出づくりのために
いろいろ環境を整えてやることが大切。
子どもたちだけで環境を作ることはできない。
それは大人たちの役割である。
大人が祭りに興じられるのは
かつて少年の思い出があるからである。
自分にも子ども時代があったことを忘れてはいけない。
祭りの夜は浴衣の子どもたちに
ふっと、大人の匂いを感じることがある。
お囃子の笛や太鼓の響きは
人間の奥にある原始の血に連動して
大人も子どもも純粋に浮かれてくる。
国道を越えねば逢へず恋蛙