ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

風呂

2007-02-25 11:45:13 | 日記・エッセイ・コラム

我が家の風呂は母屋を十歩ほど外に出たところに在るが、
昨夜は電燈が切れたためローソクを点しての入浴となった。

ローソクのおぼろに揺れる炎の中で、
時間がゆるやかになっていくのを感じた。
そして始めて気が付いた。
蛍光灯の下では人は気ぜわしくなってしまうのだ・・・と。

暗がりの中でぼんやり炎に照らされながら
昔、農家に泊めてもらった日のことを想い出していた。
やはり手探り状態の暗い風呂場で、
あれは五右衛門風呂であったが
風呂のヘリには触れないよう、スノコ板の上にそっと沈んだ。
そして夕食に食べた山鳥のことを考えていた。
そこの主人は鉄砲撃ち。
縄で首をくくられた山鳥やコジュケイやキジなどが
黒くすすけた天井からぶら下がっている。
その一つを眼の前でさばいてくれた。
ナタのような刃物でぶつ切り。
血のかたまりや砕けた骨の破片が
ぼくの顔にも飛び散ってくる。
いろりでは鉄鍋がぐらぐら煮えたぎり
生乾きの薪のけむりがひどく眼にしみた。

外の深い闇ではふくろうが鳴いている。
長い時間湯に浸りながら
泊まりに来たのをずっと後悔していた。

あの十三歳の夜から、
ぼくは鳥や獣の剥製がきらいになった。



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2 コメント

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べんべぇ さま (大根の月)
2007-02-27 21:23:01
べんべぇ さま
初めて、お便りいたします。
少し前から・・ステキな詩、拝見してグッと来てました・・・。


お風呂
「母屋から十歩ばかり外に出たところ」って、うちとまったくおんなじです。
かなり変人のマイターリンは、「山が有って、たち枯れができるのでもったいない」と言って、せっせと薪わりをします。オカゲデ、今だ薪のおふろ。


幼い日の体験は、はっきり覚えている事が多く、時に思い出すと嬉しくなったり、悲しくなったり・・・。


完成度のたかい文章、参考になる内容にも興味いっぱい・・!です。
更に、愉快なエキスペリエンス、お願いします。
UPを楽しみにしています。









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大根の月さん、コメントありがとう! (ベンベエ)
2007-02-27 22:35:10
大根の月さん、コメントありがとう!
toraさんのグログであなたのことは存じています。表現に詩情があってあなたのコメントは楽しいです。

それにしても、未だに薪のお風呂とは・・・見事です!
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