3月4日(日)の「大地を守る会のオーガニックフェスタ」。
昨日も書きましたが、参加した一番の目的は、料理研究家・随筆家の辰巳芳子さんのお話を聞くことでした。
這ってでも行こうと思ってました。絶対に。本当に行ってよかった。とても近い場所で、表情も声もすべて感じられるところで、拝聴することができました。
数年前、辰巳さんのスープ教室に行って学びたくて調べてみたら、満席で何年か待ちでした。同じ神奈川だし、いつか行けることはあるだろうか、それまで待ちたい・・・なんて思っていたら、いつの間にか入会受付終了になっていました。
残念だったけど、ご縁がなかったのだと思っていましたら、今回、こうして生でお話を伺うことができました。
おまけに、会場についてすぐトイレに行ったのですが、入口のところで、とても品のある御婦人とすれ違ったのです。あっ・・・、そうです、おそらく辰巳芳子さん。
夢まぼろしやろうか・・・。いや、きっとそうだと思う・・・。そう信じたい・・・。
お話は辰巳さんと大地を守る会代表の藤田和芳さんの対談形式でした。
詳しい内容は以下のユーストリームで見られます。私は特に心に残り、自分にとってどうなのか考えたことを中心に書きたいと思います。
もしかしたら、聞きたいように聞いて解釈しているかもしれません。そこは、私にとって・・・ということでご了承いただけたらと思います。
初めに司会の方からの問いかけに、今の日本の食の未来は「楽観は許されない」ということから始まりました。
そして、辰巳さんは「希望」ということばを口にされました。
「希望のよすが」・・・なんて美しい日本語だろう。このことばをさらりと使われる、そのことだけで、私は辰巳さんの命のスープの素晴らしさを感じた気がしました。
そして、「希望」。昨年からずっと大切に思い、希望とはなんだろうと考え続けていることばです。
なにかの手掛かりを今日のお話から見いだせるかもしれない。気持ちがより引き締まります。
辰巳さんは、「希望の根幹は個々の人々が生命観を確立し、深めることだ」とおっしゃっていました。
命とは何か、なぜ自分は生きているのか。それに対する問いかけが甘い。だから、至るべきところに至りにくいのがこの国の現実だと。
そして、「何ごとにも現象の向こうを見なければならない」と。
料理をすることは食材、作り方、どのように食べるか、その3つのことを日常としてこなしていくのだけれど、こなしていく日々の向こうをちゃんと捉えていかなければならない、・・・そういうことをおっしゃっていたと思います。
その日々の向こうというのは「いのちのめざすところ」であり、それを支えるのが「食」であると。
難しい、とても難しい。でも、何となくわかる気がしました。
料理も食べることも日々の営みの中であたりまえのようにしていることであるが、意識して自分がどう生きていきたいか、何を為し得たいのか、どういう世の中にしていきたいのか・・・、それを思うことで、ただ料理をし食べるという行為が「祈り」のようなものに変わるのではないでしょうか。
またさらに、いのち全体のことを考え、自分が世界の中にいるということを考える。「地球」ではなく「宇宙」の中に自分を位置づけて毎日考えることが大切だと。
毎日、朝起きてお布団の中で「自分は宇宙の中の一部だ」という意識を持ってみると、自分は失うものは何もないということに気づくだろうと。
ああ、そうだと思いました。ちょうど一年前まで心がとてつもなく弱っていたとき、朝を迎えるのが本当に怖かった。
でも、震災の後しばらく経ってから、それでも私は生きている、生かされている・・・と思った時から、徐々に朝目覚めるのが感謝の気持ちに変わりました。それだけで十分だと。
宇宙まで意識したことはなかったけれど、日本という国に今生かされている自分を思ったとき、前をむいて歩いていけると思いました。
これからは宇宙を意識してみよう、そうしたらもっともっと自分の中に湧き上がってくるものがあるような気がします。
本当の希望は「愛」だともおっしゃっていました。意志を持つ愛だと。意志的に愛することが大事なのだ、と。
「愛」の意味も最近よく考えていたことです。陳腐なようで、貴すぎるようで、使うには気恥ずかしい、・・・でもそうとしか表現できない思いが世の中にはそこここにあるではないか、そんなふうに思っていました。
またひとつ、自分の中で絡まっていたものがほどけていく、そんな気がしました。
日本が大変なことになって、自分にできることは何か、ずっと考えて過ごしてきました。
私にできることはわずかだけれど、ごはんをていねいに作ろう、気持ちをこめて意志を持ってひとつひとつやっていこう、そして、与えられる場があるならそこで私の意志を伝えていこう、ごはんにこめて。
4月はたくさんの場があります。その前にこうして辰巳さんのお話を聞けたことは本当によかったと思います。
その反面、こわくもなっています。基本から見直し、勉強し直さないといけないんじゃないか、そんな気持ちも湧き起こっているからです。
でも、やるしかない、今の自分のそのままで思いをこめてひとつひとつ。頑張ります。
トークステージは、会場の奥に設置されたオープンな舞台で、私のようにいすに座って聞けた人の他に、周りの食事をするスペースからも聞くことができ、たくさんの人が思い思いに辰巳さんのお話を聞いていたと思います。
辰巳さんは「ひとことでもふたことでもそれで家庭の日常が変わればいい」とおっしゃっていました。きっとそれぞれ心におみやげを持って帰ったことでしょう。
素晴らしい機会を作ってくださった、代表の藤田さんならびに「大地を守る会」の方々に、心から感謝申し上げます。
最後に、そういえば、「よすが」ということばをもっと知りたくて、家に帰ってから調べてみたら「縁」という字を書くのですね。そして、意味は「よりどころ」「頼りとなるもの(こと)」「手がかり」など。
私にとっての「希望のよすが」はなんだろう。
そう思うと、意外とたくさんある気がしてきます。それは、誰の周りにもきっとあると思います。意志をもって周りを見つめてみれば、感じることができるのではないでしょうか。そういうふうに日々を過ごしていきたいと思います。