久しぶりに映画を観ました。っていっても、すでに3週間経過。
とってもよかったので、どう書こうかなあ・・・と考えているうちに、また後回しになってしまってました。
映画でも展覧会でも、公開終了間際に駆け込みが多い私ですが、これは封切り後すぐに見に行ったのだった。
たまたま数時間空いた日があったので、もしかしたら今行けってこと!?と、すぐネットでチケットを取って、車を飛ばして行ってきました。
映画って、昔はこうじゃなかったですよね。人気のロードショーなんか、前の回の最後のほうでもう中に入って、席を確保すべく後ろの方に立ってダッシュの用意。
だから、一番観たくないクライマックスはしっかり予習できてしまうという、がっかりな感じ。
・・・こんな話を子どもにしたら、いつの時代?って取り合ってもらえなかった。ふん。贅沢なやつらめ。
さて、「しあわせのパン」。
この映画を知ったのは、アフタヌーンティーのメルマガ。ティールームでこの映画のコラボパンを作るという記事があって、それでサイトを見に行って。
そしたら、主題歌が矢野顕子さんと忌野清志郎さんの「ひとつだけ」で、2週間だけ「幻のライブ」の限定配信がありました。
「ひとつだけ」。
この歌は私にとって、とっても大切な歌なのだ。その歌のライブ映像。あったかくてやさしくて、期間中、何回も何回も見に行きました。
映画のサイトもとてもあったかく、素敵。これは絶対観ないといけないんじゃない!?・・・そんな思いが私を包み、劇場に向かったのでした。
映画「しあわせのパン」公式サイト → こちら
映画の舞台は北海道・洞爺湖のほとりの小さなまち、月浦。この響きだけで惹かれてしまう。月が好きだから。
ここの湖が見渡せる丘の上に、東京から移り住んだ、りえさんと水縞くん夫婦が営むパンカフェ「マーニ」があります。
ここには宿泊設備もあって、日々いろんなお客さまがやってくる。そんなマーニの日々は全編あたたかさに包まれています。
そこには、私が好きな、日々の暮らしのエッセンスにしたいものがいっぱいです。
手作りの食事、かまどで焼かれた焼きたてのパン(めちゃくちゃおいしそう)、淹れたてのコーヒー、丁寧に煮込まれたポトフやスープ、採れたての野菜、きれいな景色に澄んだ空気、ナチュラルな木でできた家具、白い食器に木のカトラリー。そして、気のおけない友だちとの会話。
どれもこれも見ていてうれしくなるものばかり。でも、わぁっとあたたかさを感じつつも、なぜかさびしいのです。
パンの焼ける音、コーヒーを淹れる音、カトラリーのふれあう音、おりょうりの音、・・・好きなものばかり。でも、それもしあわせを感じるものなのに、なぜかかなしい。
かなしい音があるというのを初めて知った気がしました。いや、知っていたかもしれないけど、初めて気づいたというのかもしれません。
りえさん(原田知世さん)と水縞くん(大泉洋さん)は、とってもすてきな空気の漂うご夫婦。互いに深く思いやっている。ふたりにふれるひとはきっとしあわせな気持ちになる。でも、このふたりは少しさみしくてかなしい。
あたたかいのに、あたたかいと感じるほどさみしい。
笑顔がふんわりと包み込んでくれるのに、なぜかかなしい。そんな気がしました。
しあわせってなんだろう。観ながら、観てから、ぼんやり考えました。
しあわせそうに見えても、人は何かしらかなしみを抱えているように思います。
それは理由がわかるものもあれば、何かわからないけどそこはかとないかなしみもある。
かなしくて笑えない日もあれば、笑いたくなくても笑う日もある。そして、よけいにかなしくなることも。
十分しあわせで不足はないのに、でも澱のようにたまるかなしみを感じることを、罪悪のように感じていたことがありました。そして、そう感じる自分をさらによくないと思うことで、果てしないかなしみの中にいました。
でも、きっとしあわせとかなしみは隣り合わせ。
かなしみの気持ちを知っているからこそ、しあわせであること、今こうして生きていることの有り難さをより感じられるのかもしれない、観終わったあと、ぼんやり思ったのでした。
映画の中には、何度もパンをわって分け合うシーンが描かれています。焼きたてのパンを分け合って、口にほおばって、おいしさを分かち合う、心がつながる、とてもあたたかかったです。
そういえば、私もそういう風においしさを分け合う食事をしたことがあります。とてもしあわせな時間。一度きりでもその記憶はいつまでも私をしあわせにしてくれる。
そういうふうに人と関わっていきたい、ふとそう思いました。
とてもあたたかい映画です。
ていねいに、スタッフの方が愛情をもって創られたことがよく伝わってきました。涙腺弱い私は何度もうるうる。
映画のパンフが、またとてもいいです。小さいブックレットみたいで、パンやお料理、カフェマーニ、月浦の景色などの写真がとてもきれい。読み物もよくて、時々手にとりたくなる、そういう1冊です。
原田知世さんは美しくてかわいらしいし、大泉洋さんはおさえた演技で、寡黙でやさしさ漂う愛情深い男のひとで素敵。
もちろん、主題歌のすばらしさ。
思い切って観に行ってよかったです。