午前11時のあずさに乗ると夕方前には燕岳登山口にある中房温泉に着くことができる。
穂高駅に着いた時には雨も降っておらず、あれっ?と思ったが、乗合バスで山奥に入るに従い雨模様。手前の有明温泉に着くと雪になっていた。
雪化粧の山肌が幻想的です。
中房温泉は登山客だけでなく一般の方も泊まるので、登山者は正面玄関からではなく脇の出入り口を使うように言われます。
部屋も古くきれいではないのですが、まぁ安いから良し。
しかし驚いたことに、部屋にはこたつとファンヒーター、テレビまであり、お茶とお菓子、浴衣と歯ブラシ、タオルの用意もありました。
とっても寒かったのでさっそくこたつを入れ、ファンヒーターもつけました。
そしてほかに女性客がなかったので私一人の個室でラッキーでした。
こうして夜行ではなく麓の温泉に泊まって山に登る・・・この年になったら無理をせずそろそろこういうスタイルで山登りをしたいです。
北アルプス三大急登の一つの『合戦尾根』から燕岳へは16年前、家族で槍ヶ岳まで縦走した時に登り、その時私はひどい目にあったのです。そのころは年に一度の夏休みファミリー登山で、何の準備もなくいきなり登ったため、小屋に着いたら足が棒になり痛くて歩くことが出来なくなってしまった苦い経験があるのです。
年はとったけれど・・・ここ数年コンスタントに山に登っているし大分足も鍛えられてきた。
『ぺたんしっぷ』もたくさん持ち、少し心配ではありましたが、足の痛みも無く無事登ることができました。
翌29日、登り始めます。
夜更けまで降っていた雪も止み、予報どおりの快晴です。
昨日の雪がうっすら積もりました。
第一ベンチを過ぎると、雪もだんだん多くなり凍って滑るのでアイゼンを付けます。
第二ベンチを過ぎるといよいよ急勾配のジグザグの登り、呼吸を整えながらマイペースの登りです。
そのうち下山してくる人たちと出会い、『お天気でよかったですね~』と声を掛け合う。
ご夫婦連れの方の話では、やはり昨日の天候は、登り始めは雨だったが合戦小屋からは吹雪になり、燕山荘の手前まで来てホワイトアウトで山荘の入り口が分からず、30分ぐらい入口を探してうろうろしていたと言う。
私だったらきっと遭難していたかも、と言うと、
『遭難してましたよ、30分ぐらい。 今日にして大正解ですよ。』と言われました。
よく聞く遭難の話は、あと小屋まで50メートルのところだったということもあります。体力があれば運よく助かるかもしれないが、力尽きてしまえばお終いです。
吹雪かれて道に迷い体温を奪われれば、遭難は時間の問題。
単独でこの季節は絶対にお天気の悪い時は歩かないと決めています。
合戦小屋の横は明るく開けテーブルとベンチが置かれています。
トイレも雪を掘り起こして使えるようになっていて助かりました。
山荘のお兄ちゃんが飲み物など売っておりました。
合戦小屋から先は森林限界を過ぎ、見晴らしも良くなってきます。
稜線の向うに槍ヶ岳の頭も見えるようになってきました。
妙高、戸隠方面。
南アルプス、中央アルプス、遠く東の方には薄く富士山も見えました。
が、まだまだ山荘には着きません。
ひと山、ふた山越え三つ目の尖った所にある山荘まではまだまだです。
ようやく6時間かかって山荘に無事到着。
快晴の空のもと、素晴らしい景色です。
まずは昼を食べ、宿泊手続きをして今度は空身で燕岳を往復します。
山頂からの眺めは360度。
南に槍穂高、笠が岳。北には鹿島槍、白馬岳。
手前から爺ヶ岳(低い方の双耳峰)、鹿島槍が岳(高い方の双耳峰)、白馬岳、朝日岳。
立山と憧れの剱岳も見えます。
高瀬川をはさんで裏銀座から黒部源流の山々。
中央に鷲羽岳、右へワリモ岳、水晶岳、野口五郎岳。
左へ三俣蓮華岳、双六岳、樅沢岳。
鷲羽岳と三俣蓮華の間から覗いているのが黒部五郎岳。(だと思います。)
こちらは大天井岳に向かう表銀座の縦走路。大天荘が見えます。
何時まで見ていても飽きない景色です。
西風が強く、30分近く山頂にいたら身体が冷え切ってしまいました。
稜線を歩いていても風で飛ばされそうでした。
夕方の気温はマイナス4度だということでした。
山荘の中にいてもとっても寒く、風邪をひきそうでした。ズボンも二枚重ねシャツも重ねて着ました。
この季節にもかかわらず、山荘は登山者でいっぱいでした。
30日も快晴。
ほとんどの登山者は朝のうち下山し、温泉に入ってから帰るというパターンが多かったようです。
私はその日のうちに帰れればよいと思っていたので、もう一度燕岳を往復することにしました。
西日を浴びる午後より朝のうちの方が、写真もよく写ります。
この日は風もなく暖かで山頂に1時間も長居をしてしまいました。
いわひばり?
チッチッとさえずる声がして2羽の小鳥がすぐそばの岩をあっちへ行ったりこっちにきたり。
こちらがじっとしていれば、すぐそばに来ても平気なようでした。
いるか岩と燕山荘。
山荘前で早昼を食べ、お名残り惜しいが下山です。
この時間に下山はほんとに少なく、第3ベンチから下は登ってくる人とも会わず、一人旅。
滑って怪我などしないように慎重に下りました。
登山口に去年できたばかりの中房温泉の立ち寄り湯に入り、さっぱりと汗を流し帰ってきました。
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