活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

神田川大曲塾と印刷インキの話

2012-02-05 11:48:13 | 活版印刷のふるさと紀行
 先週末、神田川大曲塾の「番頭(ばんがしら)会議」がありました。

 神田川大曲塾はおもしろいところで、樺山紘一先生の「塾長」というネーミングは
当たり前ですが、塾活動の内容を企画したり、実行してゆく運営委員役をユニークな
「番頭」のネーミングで呼んでいます。そのほか塾の会計は「勘定方」だったりしま
すが、これは脇道の話。

 その会議で今年度の研究課題の一つに東洋インキ川口工場で最近の多様化する印刷
インクについて勉強する提案がありました。
「近頃、用途がますますひろがっているシルク印刷に限ってもスゴイんだ」という説
明が付け加えられると、なるほど、さもあらんと思えました。

 いつものことですが、会議が終わってみんなで一杯やっての帰り道、私が思ったこと
は、私自身が印刷インキにはあまりにもウトイことでした。東洋インキやDICやザ・
インクテックの色見本の短冊カードにはさんざんお世話になってきたのに、ほとんど、
印刷インキについての知識の持ち合わせはありません。

 しかし、情緒的になりすぎですが、活版印刷の美しさをきわだたせるのがインクだと
私は思っています。もちろん、活版印刷の出来を左右する要素には、活字の良さや版の
出来を左右する紙型やいろいろあるはずですが、私はインクむらがなく、それでいて一
字一字の活字に艶のある活版印刷本に出会うと「これだ」と思いますし、オフセットや
グラビアやフレキソインキより活版インキに関心があります。

 たしか活版印刷のインクは主原料が植物油でした。、オフセット印刷のようにインク
の油と水の反撥作用をつかってインクを転写するのと違い活版印刷の場合は油性のイン
クをそのまま使うので艶が出ます。香りも残ります。印刷面の手触りを楽しみ、インク
クの艶や匂いを感じる出来立てホヤホヤの活版本にはもう出会えないのは残念です。
 それに、かつて枚葉インキの調合に携わった人やムラとりの名人だった人の話も聞き
たいものです。こんど、番方会議で提案してみようかしらん。



コメント
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