活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

あんころ餅 いずこ

2012-12-07 10:02:04 | 活版印刷のふるさと紀行

 デパートの食品売り場をのぞくと、クリスマスケーキやチョコレートよりもはるかにおせち料理や正月餅の予約コーナーの方が大きな場所を占めています。

 昭和のかなりおそくまで餅は我が家で搗くもの、デパートや近所の米屋に予約するものではありませんでした。「もち搗き」はたいてい師走の28日ごろでした。「苦モチは搗くな」で29日は敬遠、31日は「一夜餅」で縁起が悪いというので選ばれた日でした。

 我が家ではお供え用の鏡餅からはじまって、お雑煮用ののしもち餅、そして最後に「あんころ餅」というのが餅つきの順序でした。こどものころの私はこの最後の「あん餅」バージョンが楽しみでした。臼の中で湯気をたてている搗きたてほやほやの餅を適当の大きさにちぎって掌の上で器用に薄くのばして、かたわらの大鍋から粒あんをひとかたまりとってまんじゅうふうに包んで丸餅に仕上げるという手順に見入っていたものです。、

 そうすると母親がモチ粉のついた真っ白な手でできたての「あんころ餅」をそっと差し出してくれたものです。その出来立ても旨かったのですが、もっと旨かったのは日の経ったあん餅を炭火で根気よく焼いて頬張るときでした。

 正月休みも終わり近くなると、あん餅も皮の部分がひび割れして固くなります。それを火鉢の炭の上に網をのせてゆっくり焼くのです。しばらくすると、ぽっんと皮の表面が泡状に隆起してそこからあんがのぞいたりします。我が家の場合、気長にあん餅を焼くのは父の特技でした。

 こうした「あんころ餅」そのものには東京ではめったにお目にかかれない。我が家近くでは岡埜栄泉小石川の大福がいちばん近い味です。ただし、焼く楽しみができないのが残念。

 

 

 

 

 

 

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