本の表紙がその家の表玄関なら奥付けは雪隠?だと思います。(雪隠って若い人にわかるかな)。目立ってはいけないけれど、きれいにしておく大事な場所です。
いまはほとんどの本の割り付けはレイアウトマンの手になっています。字詰から行数、見出しの活字の大きさからノンブルの位置や書体まですべて彼らにお任せスタイル、編集者は校正マンで本作りが進行するケースが少なくありません。
以前は本の組体裁など、いわゆる設計・施工は担当編集者の領分でした。奥付けは校了間際に編集者が万感の思いを込めてレイアウトしたものです。罫をどう使うか、空白スペースをどう活かすか、編集作業にケジメをつける楽しい仕事でした。
もっと以前は、奥付けに著者の検印を貼るのが普通ですから、検印の貼り位置まで考えて割り付けをしたものです。
検印といえば、私も検印紙の束を持って著者のお宅にハンコを押していただきに行ったことがあります。ハンコの数がそのまま印税に結びつくのですから、大歓迎。押す手が疲れるとご家族でかわりがわりに押していただいて、ご飯までご馳走になって帰ることになりました。そして、社に戻ると増刷分の奥付けをつくるのです。第〇版とか第〇刷とか、自分が担当した本が増刷になるたびにうれしいものでした。
最近は単行本でありながら、雑誌風の横組みの奥付けが申し訳程度に添えられていたり、必要事項が並んでいるだけの無味乾燥の奥付けだったり、どうも奥付けの座り心地の悪い本を見かけます。これでは、奥付けデザインコンクールでもやりたい気分です。
冬入り近い護国寺