私的図書館

本好き人の365日

十二月の本棚 3 『王子と乞食』

2005-12-29 23:05:00 | 本と日常
あなたの代わりは利きますか?

2つ上の先輩に双子が2組もいて、まったく見分けがつきませんでした*(汗)*

もし、あなたと同じ容姿で、あなたと同じ能力を持つロボットが現れたら、どうやって見分けたらいいのでしょう?

あなたをあなたにしているのは、喋り方? ファッション? 顔の形? それとも性格?

さて、今回ご紹介するのは、そんなそっくりな相手が現れたことによって巻き起こる悲劇と喜劇を、たっぷりのユーモアと鋭い風刺で描いた名作*(音符)*

マーク・トウェーンの『王子と乞食』をご紹介します☆

主人公の一人、トム・カンティはロンドンの貧民街に住む少年。
父親はどろぼうで、おばあさんは乞食。無学でお人よしの母と双子の姉はボロをまとって食べる物にも事欠く毎日。
トムも乞食をしてわずかばかりの稼ぎがあるものの、本物の悪党の父と祖母にそれさえ奪われ、殴られてはムチで打たれる。

それでもそれが普通であたりまえだと思っているトムは、そんな生活の中でさえ楽しみを見つけていきます。

神父さんから聞く昔話や物語に魅了されたトムは、本を読むことを覚え、その中に登場する王侯貴族に憧れて、乞食仲間と「宮廷ごっこ」をしてみたり♪
格好だけじゃなく、言うことも貴公子みたいになってきたトムに、周りの学のない年寄りたちが意見を求めたりするようになります。

そんなトムの願いは本物の王子をその目で見ること*(ハート3つ)*

そして、その願いがついに叶う日が…*(星)*

時代は16世紀の英国。
貴族が支配し、過酷な国法がまかり通る当時の英国を舞台に、文豪マーク・トウェーンが乞食の少年と王子である少年を入れ替え、人間は外見さえ同じなら、どんな人間でも通用すると、痛烈に批判した本書。

本物の王子さまになったトムの姿も見物ですが、王子なのに乞食の少年となってしまったもう一人の主人公、エドワードに襲い掛かる数々の試練が読み所です*(音符)*

自分そっくりの王子に間違われ、いくら自分が「乞食のトム」であると主張しても信じてくれない側近や召使たち。
逆に王子の気がおかしくなったとひた隠しにされてしまう始末。

一方お城から追い出されたエドワード王子は、「自分は王子だ」とどこへ行っても高飛車な態度はそのまま。
さんざん笑われ、もちろん信じてもらえず、家畜小屋で眠ったり、牢屋に入れられたりする内に、自分の国の国民がどんな生活を強いられているのかを目の当たりにしていきます。

やがてエドワードの父、現国王が亡くなり、なんとトムが国王に*(びっくり2)*

果たして二人は元に戻ることが出来るのか?

マーク・トウェーンと言えば、『トム・ソーヤの冒険』が有名ですが、作者はこの『王子と乞食』をこよなく愛し、会心の作と言っています。

「万一、この書物が唯の一部も売れないようなことがあったとしても、自分がこれを書いていた間に味わった芸術的幸福はいささかも減じない」

この作者の言葉を裏付けるように、毎夜原稿が出来上がるのをもっとも楽しみにしていたのは、彼の夫人と二人の愛娘スウジイとクララでした。

二人の少年の数奇な運命に手に汗握る母親と二人の少女の姿が目に浮かんでくるようです*(音符)*
なんてうらやましい環境でしょう☆

立場を換えることで見えてくるもの…
相手を思いやり、その背負った重荷を少しでも理解できたなら、この世界はもう少し住みやすいところになるのかも知れません。

もし、自分が相手の立場だったら…

大切なのは相手を思いやる心と想像力。
いつくしみ、わかちあう心。



慈悲の本質には…二重の恩恵がある。
慈悲は、これを与える者をも受ける者をも幸福にする。

            ―ベニスの商人より―



百年以上昔の作品ですが、それを感じさせないくらいストーリーに力があって、トムとエドワードがこれから先どうなっていくのかとっても気になる作りになっています!
村岡花子さんの訳も読みやすい*(ハート3つ)*

今年も残すところあとわずか。
冬休みにも入ったことですし、この冬、『トム・ソーヤ』以外のマーク・トウェーン作品に挑戦してみるのはいかがでしょう?

こたつにみかんに岩波文庫ということで☆
(意味はありません、勢いで書いてます*(ウインク)*)







マーク・トウェーン  著
村岡 花子  訳
岩波文庫