今回は新井素子さんの1980年の作品。
『グリーン・レクイエム』をご紹介します☆
内容はズバリ!
人間と植物の恋。
はてさて、どんな物語だと思います?
新井素子さんの本を読み始めたのは高校生の時から。
最初に立ち読みした『二分割幽霊綺譚』という作品が面白くて、それまでに書かれた作品をさかのぼって探し、それ以降は作品が発表されるたびに買い求めてきました♪
今でも本屋さんに行くと、新しい作品が出ていないか、真っ先に探しています☆
…人間なんてたいしたことない。
…他の生き物を食べなくちゃ、生きていけない生物のくせして。
「自然を守ろう」「地球を大切にしよう」なんて言う人がいるけれど、確かにそれは大事なことなのかもしれない、だけどそれはあくまで自分達人間の立場を確保した上での話し。
ほんとなら、人間が地球からいなくなってくれた方がどれだけ地球に優しいか。
だけど誰も、「自然を守るために自殺しましょう」とは言わない。
それは生き物として言ってはいけないことだから。
だからほんとうなら、「自然を守ろう」なんて上から物を言わないで、「生きていくためには生き物も殺すし、木も切ったり燃やしたりもする。でもそれだとそのうち我々も困ることになるからこれからは考えて自然破壊をしましょう」と言えばいい。
「人間なんて、地球の上にたくさん生きている生物のひとつじゃない!なによ、えらそうに~」
新井素子さんの作品に、こんなことが書いてあるわけじゃありませんが、ところどころで感じるのは、この「人間だからって何をえらそうに~ もっと生物としての自分を自覚しなさい!」という立場。
好きです、こういう考え方☆
だからって、人間が「悪」と言っているわけじゃありません。
では、ナンだというのか?
それは生き物としてしょうがない。
生きるために他の生物を殺し、食べることはしょうがない。
そこに善も悪もなくて、人間ってそういう生き物だから。
ただ、他の生物を食べたり、水や空気を毎日消費していることを忘れて、自分たちが生きていることを当たり前だなんて思って欲しくない。
ようはスーパーで売っている、魚や肉のパック、あの姿を世界だなんて思って欲しくない。
泣き叫ぶ牛を殺し、皮や骨をとり、赤い血をたくさん流して、肉を切り刻んでパックにする。
それは残酷かもしれないけれど、それが生きるってこと、それがこの世界。
心の痛みを知らない人は、他人に優しくなんてなれません。
もし、スーパーに並んだ魚や肉、野菜なんかが、言葉をしゃべったらどうします?
「私を食べるの? そう、しかたないわね。それが私たち生き物のさだめですものね」
なんてさめざめと泣かれたら?
少しは食べるということ、生きていることを実感しやすくはないですか?
もっとも、うるさくてしかたないかも知れませんが。
何度も言いますが、こんなことは新井素子さんの作品には書かれていませんよ(笑)
ただ、そういった意味じゃないかと思うだけ。
多くの作品は特徴でもある彼女独特の文体で、時にシリアスに、時に面白くストーリーが進みます♪
SF、異世界、宇宙旅行に超能力、吸血鬼にぬいぐるみまで☆
もし、植物に意思があったとしたら?
森の木々や、草花にそれぞれ意思があり、その思いを我々人間に伝えてきたとしたら、その内容はどんなものでしょう?
『グリーン・レクイエム』は恋愛物語です。
腰まで伸びた長い髪の少女と、彼女を守ろうとする青年の物語。
公園のベンチ。
木々のこずえから木漏れ日が少女の髪に落ちる。
その、長く美しく輝く「緑色」の髪に…
十数年前、山奥の洋館から聞こえてきたピアノの音。
そこでまだ少年だった頃の青年が出会った緑の髪の幼い少女。
たくさんの植物に囲まれて、その少女は立っていた。
響くピアノの音。
あれは幻影?
それとも幻?
光合成に宇宙船。
狩る者と狩られる者。
赤く燃える炎と崩れさる建物。
全編を包むショパンのノクターン。
美しく奏でられる感情という旋律。
ファンタジーとSFの要素を盛り込んで、ありえないけれど、だからこそ面白く、悲しいストーリー。
続編となる『緑幻想~グリーン・レクイエムⅡ~』という作品もあるので、気に入った方、もしくは「こんなラストじゃあんまりだ」と気に入らなかった方、どうぞ探してみて下さい♪
ただそばにいたかった。
しかし、それさえかなわない…
果たして二人を待つ運命は?
作者の初期の作品ですが、いつまでも心に残る不思議な作品です。
密かに代表作だと思っています☆
新井 素子 著
講談社文庫