私的図書館

本好き人の365日

松田奈緒子 『重版出来!』

2014-01-20 21:18:41 | 日本人作家

最近読んだ本です。

 

松田奈緒子さんの、『重版出来!』1巻(小学館)

 

「重版出来」と書いて、「じゅうはんしゅったい」と読むそうです。

マンガの単行本など、出版物の売れ行きがよくて版を重ねることを重版っていいますよね。

出版社ではこの重版が決まることを、「重版出来」といって喜ぶそうです♪

 

主人公は大学で柔道一筋に頑張ってきた女子。

就活で選んだ職場は出版社。

運よく(♪)社会人としての一歩を踏み出した彼女は、マンガ雑誌編集部に配属され、個性豊かな編集部員にマンガ家さんに、営業さん、書店員さんと出会いながら、出版の、本を作る仕事にどんどん頑張っていきます!

 

はっきりいって絵はヘタです(笑)

目の描き方一つにしても統一感がなくて、同じ作品の登場人物とは思えないほど。

でも、それがとっても味がある!

 

年老いたベテランまんが家。

ネットでの誹謗中傷。

やる気のない営業マン。

出版社の内部事情、本屋さんとの関係、編集部と営業部の闘いとか(笑)、そういった内輪ネタも充分面白いのですが、なんといっても本に携わっている人たちの、「こんないい作品もっとみんなに知って欲しい!!」という情熱が伝わってくるのがイイ!

 

「雑誌が失(な)くなるってことは多くの人の人生が変わるってことだ。」

 

作品を描く人。

それを載せる雑誌を作る人。

その雑誌を売り込む人。

そしてその雑誌をお店で売る人。

自分の才能をしぼり出し、徹夜して原稿が出来るのを待ち、靴の底をすり減らして書店を回る。 

いい作品が売れるとは限らない。

たくさんの人がつながって、応援してくれる人に喜んでもらえるように、本気で本気で考えて考えて工夫して工夫して、行動する。

どんなに有望な作品でも、出版数が少ないと平台に置けないから棚差し(背表紙しか見えない)になって気付かれることもなく返品されてしまう。

発売日が有名な何万部も売れるタイトルとかぶったりしたら、書店も商売だから大量に売れる作品を優先して、小さな部数の新人の作品は木っ端微塵に吹き飛んでしまう。

 

何が売れるかなんてわからない。人知をこえた、もうそれは運みたいなものなのかも。

 

こんな絵なのに(失礼!)、読んでいて何回も感動で涙ぐみました!

本好きの人のみならず、このマンガはきっとたくさんの人が面白いと思うはず!

いいなぁ、こんな仲間に入りたいよ♪

 

著者 : 松田奈緒子
小学館
発売日 : 2013-03-29

『言の葉の庭』

2014-01-20 00:34:28 | 映画

新海誠監督の最新作、2013年公開の作品『言の葉の庭』を観ました。

『ほしのこえ』という、ほとんど一人で全部作ったという作品を観てからずっと追いかけている監督さんですが、代表作『秒速5センチメートル』は今でもトラウマになっているくらい印象的な作品。

大成建設のTVCMも作っているので、名前は知らなくてもその作品は見たことがあるかも知れません(ボスポラス海峡トンネル篇とかです)。

 

劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD 劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2013-06-21

 

雨に濡れる新宿御苑。

そこの東屋で偶然出会った高校生の男の子と、OLらしき女性。



新海監督の特徴は、その緻密な描写と、独特の青春を背負いきれていない内向的なストーリー。

今回、特に「雨」の描写が素晴らしかったです!

リアルを追求していながら、リアル以上の色彩と動きで画面に映し出される自然描写は、アニメーションでしか描けない、どこにもないけれどリアルな世界!

高感度カメラで撮ったような雨が、リアルタイムで降り続くんです!

いやぁ、面白いもの見せてもらった♪

 

技術的な挑戦も見ていてすごく面白かったのですが、物語も新海節が出ていて心に残りました。

特に男の子が、勝ち負けじゃなくて、向かっていかなきゃいけないものにちゃんと向かっていくシーンが好きです。

それも息を整えて!

人間なんてそんなに強くなくて、迷ったり不安になったり、そんな揺れ動くもので、しっかり向かっていく男の子を描いているからこそ、次の場面で不安に揺れ動く様が観客の心をつかむんだと思います。

この共感性はすごい。

 

新海監督の作品って、どこか「決心」のドラマなんですよね。

登場人物が心の内で何かを決める。

それを中心に物語が描かれる。

だからこんなに心に響くのかな?

 

雨や虫の声を雑音ととらえるか、そこに音以外の何かを感じるか。

それはもう感性の問題。

46分という劇場用作品としては短い作品ですが、短さを感じさせない充実の内容でした。

よかった~

次回作も期待です。