涙で目が曇って文字が読めない。
テッシュ、テッシュ。
鼻もかんで。
あぁ、読みにくいと思ったらいつの間にかこんなに日が傾いてる。
窓辺に寄りそうようにして残った太陽の光で文字を追ってた。
電気つけなくっちゃ。
…って、何やってんだオレ!?
お昼過ぎから読み始めた小説。
ページをめくる手が止められなくって、日が落ちるのもかまわず涙をポロポロ流しながら最後まで読んでしまいました。
夏川草介
『神様のカルテ2』(小学館)
綺麗なイラストの表紙でわかりにくいかも知れませんが、医療現場をあつかった小説で、厳しい日本の地域医療の現場を描写しつつ、ファンタジーのような読後感を与えてくれる、いうなれば医療ファンタジー♪
前作『神様のカルテ』は2010年本屋大賞の第2位に選ばれ、2011年公開予定で現在映画化の話も出ています。
夏目漱石に影響されて、ちょっと古風で難しいしゃべり方をする内科医と、その奥さんとなった世界を飛び回る写真家ハルちゃんが主人公☆
主人公なのに一方が「内科医」でもう一方が「ハルちゃん」という紹介の仕方からしてカンのいい方はもうお気づきなように、私はこの「ハルちゃん」のファンです♪
舞台が信州で、「木曽節」や「御嶽山(おんたけさん)」が登場するのも良かった!
私の住んでいるところからも「御嶽山」が見えるんですよね。
岐阜県と長野県の県境が近いから!!
24時間365日、病と戦い明かりを灯し続けるとある地方病院。
夜間も救急患者を受け入れ、ようやく朝を迎えたと思うと、もう2時間後には外来患者の診察にあたる。
医者は患者のため、寝ないで働けというのがこの国の医療の現状…
そんな現実の中、文句を言いながらも働く医療関係者たちの姿が、時にユーモラスに、時に皮肉をまじえながら描かれます。
恋愛もあるし、家庭問題もあるし、そしてもちろん「死」も…
共に90歳を越えた老夫婦の姿が胸を打ちます。
酸素マスクをつけられ、ベットに横たわる妻の横で見守る夫。
看護師が大丈夫だから家に帰るようにうながすと、夫は、妻のいない家に帰ってもすることがないからなぁと、たんたんとつぶやきます。
「トヨさんは、もういかんかね」
…70年来連れ添ってきた夫婦。
医師も看護師もかける言葉がみつかりません。
雪がとけ、遅い桜が咲き、季節が移り変わっていく信州の町を舞台に、優しい人々が、厳しい現実に立ち向かって行く。
「良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬である」
重いテーマを内に秘めながら、奇妙な絵描きの隣人や、粋な酒場のマスター、主人公が偏愛する夏目漱石や、何より明るく前向きなハルちゃんのおかげで、とっても勇気がわいてくる物語になっています♪
主人公が学生時代に失恋して、スタンダールの『恋愛論』を燃やしたってところが私的にはツボでした!
何を隠そう、うちの本棚にもありますからね、スタンダールの『恋愛論』☆
笑えて、悩ましくって、悲しく、爽快で、それでいて温かい、心にストンと落ちる物語。
最後数ページは涙がポロポロ落ちて困りました。
とってもよかった。
御嶽山(おんたけさん)に登りたくなりました♪
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