このところ、実在の書物を扱った作品をいくつか読みました。
以前も紹介した片山ユキヲさんの朗読を取り上げたマンガ『花もて語れ』2巻~4巻(小学館)
池澤夏樹さんの書評、『嵐の夜の読書』(みすず書房)
そして玉川重機さんのこれまたマンガ『草子ブックガイド』1巻、2巻(講談社)
小学館
発売日 : 2012-03-30
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毎回その作品の解釈にハッとさせられる『花もて語れ』ですが、今回は斎藤隆介の『花咲き山』と芥川龍之介の『トロッコ』が取り上げられます。
不覚にもマンガの中の朗読(ヘンな表現ですが 笑)に感動して涙ぐんでしまいました。
自分がやりたいことをやらないで、
涙をいっぱいためてしんぼうすると、
そのやさしさと、けなげさが、こうして花になって咲き出すのだ。
家が貧乏だから、祭りの日の着物を妹にゆずり自分は我慢する・・
自分だって本当はキレイな着物が欲しい。涙をいっぱいためてお姉ちゃんだから我慢する。
そんな時、花咲き山でひとしれず一輪の花が咲く。
「しんぼう」とか「けなげさ」って、もう死語なんですかね?
合間に挿入された朗読作品が、宮澤賢治の『春と修羅』と、高村光太郎の『ぼろぼろな駝鳥』だったのもとってもよかった。
すごく個人的な思い入れなんですが、私が中学生の頃、熱を出して学校を休んだ時に「何でもいいから詩が読みたい」とねだって、親が本屋で買ってきたのが、たまたま宮澤賢治の『春と修羅』と『高村光太郎詩集』の2冊で、私の思い出の中では二人セットで大好きな作家さんなんですよね。(『ぼろぼろな駝鳥』もその詩集にちゃんと収録されていました)
偶然なんですが、ますます『花もて語れ』が好きになってしまった。
講談社
発売日 : 2011-09-23
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『草子ブックガイド』は、人見知りで口べたな中学生の女の子 ”草子” が主人公。
家が貧乏で本の買えない彼女は、古本屋からこっそり本を失敬しては本の世界に没頭します。
読んだ本は次の本と交換でいちおう古本屋の本棚にそっと戻すのですが、せめてものおわびに、読んだ本の感想(ブックガイド)を書いてはその本にはさんでおきます。
物語が進むとブックガイドを書く理由は様々に変化しますが、毎回この草子のブックガイドによる作品世界の紹介が魅力的なんです。
そしてそれに輪をかけて、草子のキャラクターがいい♪
芸術家の母は父と草子を捨てて家を出て行き、今は別の家庭を持っています。
かつて画家を志していた父はその夢があきらめきれず、今は酒におぼれ家は荒れています。
学校にもなじめず、どこにも居場所のない中学生の草子ですが、本を開けば世界のどんな場所へも、どんな時代へも羽ばたいて行ける・・・
う~ん、わたし、薄幸な主人公に弱いのかな?(笑)
貧乏ってところだけですごく共感できているのかも(苦笑)
ただ、紹介されている作品の選び方にもとっても共感できるところがあるんですよね。
これぞ本好き! って感じで。
1、2巻に登場するのはこんな感じ。(カッコ)内のコメントは作品とは直接関係ありません☆
ロビンソン・クルーソー三部作。
『ロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚くべき冒険』(←皆が良く知っている話はコレ)
『ロビンソン・クルーソーのその後の冒険』
『ロビンソン・クルーソー の生涯と不思議で驚くべき冒険における真面目な反省』
『ティファニーで朝食を』
『ダイヤのギター』
『山月記』(森見登美彦ファンなら絶対読むべき!)
『山家集』(松山ケンイチの大河ドラマ「平清盛」にも出てきた西行の作品)
『老人と海』
『山椒魚』(井伏鱒二の「山椒魚」には一般的な「山椒魚」と児童向けに直された「山椒魚」、ラストをバッサリ切った最晩年の「山椒魚」の三種類に、もっとも初期に書かれ、「山椒魚」の原型となった『幽閉』という作品があります)
『バベルの図書館(ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』より)』
『銀河鉄道の夜』
『夏への扉』(SF界の巨匠、ハインラインの代表作!「お掃除ガール」【文化女中器(ハイヤード・ガール)】という機械が登場するんだけれど、「人工知能学会誌」の表紙が女性型アンドロイドで問題になったことを思い出します。SFの世界にも確かに男性優位の考え方が根強い。それに対抗するようなル・グィンの一連の作品もあるけど)
『月と六ペンス』(画家ゴーギャンをモデルにした作品)
『飛ぶ教室』(児童文学作家として有名なケストナーの作品。ヒトラーのナチスが台頭してきた時代、ケストナーはナチスに批判的でした。言論弾圧は児童文学にもおよび、多くの作品が焚書の対象になりましたが、当時すでにドイツ国民に愛されていたケストナーにはさすがのナチスも手が出せず、彼は最後までドイツに留まりました)
名作揃いで有名なものばかりですが、ボルヘスの『バベルの図書館』は読んだことがなくって、さっそく図書館で探してみようと思っています。
無限数の六角形の回廊が積み重なり広がる図書館。
無我の境地に達すると、円形の部屋の壁をぐるり囲む切れ目のない背を持った一冊の大きな本が現れる・・・
「図書館は永遠を超えて存在する」って何のこと!?
古本屋の老主人と猫、そしてそこのアルバイトの男性がサブキャラで登場するので、手をのばせばその場面にぴったりの本がすぐ取り出せるのが、とってもうらやましい!
主人公、草子の人生や父親との関係も気になります(中学生の育ち盛りなのにお昼ご飯が買えないとか、もう読んでいて応援したくなってしまう~)
こういう本を紹介する本ってやっかいですね。
次々と読みたい本が増えてしまいます(苦笑)
そして私も何回か紹介したことのある、吉野弘さんの詩も作中で取り上げられていました。
吉野弘 「風が吹くと」より
ー生命はー
生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
すべてその中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
私も他者からたくさんたくさん満たしてもらってきました。
自分の行いも、めぐりめぐって誰かの欠如を満たす助けになっていればよいのですが、こんな考えはちょっと傲慢かも知れませんね。
人知れず咲く花に美しさがあるように、咲いている花は懸命に生きているだけで、それを「美しい」と思うのは、その花を見ている人だけですからね。
それは人じゃない存在かも知れないし、言葉にしたら「良心」とか「善意」とか人によって色々な言い方になるのかも知れないけれど。
こうしてマンガや本からもたくさん満たされます。
作者や編集者には伝わらないかも知れないけれど、。
いい読書ができました。
さあ、次はどの本を読もうかな?
なかなか思い通りに本を読む時間がとれません。読もうと思って本を片手に横になるとすぐ眠ってしまう、寝付きのよいタチで。。。
図書館が出てくるお話って、大好きです。「バベルの図書館」の紹介、たのしみにしています。
私も図書館の登場する作品大好きです。
チョロチョロとしか流れない清水のようなブログですが、これからもよろしくお願いします(笑)
ホークさんがこちらで紹介してくれなかったら、読まなかったと思います
講談社のHPで1話だけ読むことが出来て、iBookで購入しましたが、胸を打つコミックでした。ちょっと泣きそうです。
②、③も大切に読みたいと思います
そして、ホークさん同様、紹介される本も読みたくなって仕方がないですね
紹介してくれて、ありがとうございます
本好きの香さんに気に入っていただけて、私としてもとても嬉しいです♪
ホントに大切に読みたくなる物語ですよね~
本好きの主人公というだけでもすごく共感できるのに、エピソードがとても良くて、本の魅力もさることながら、ドラマとしてもとても引きつけられてしまいました。
紹介されている本、読みたくなります(笑)
次はどんな本が紹介されるのか、草子自身の物語の続きもとっても楽しみです。
ホークさんの紹介してくださるのはどれも面白くって参考にさせてもらっています。
本の紹介の本、好きですけど、またたくさん読まなくちゃと同感です。
椿大神社、こちらもおもしろそうですね。
行ってみたいな、と思います^^
あまり更新していなくって申し訳ないくらいです(苦笑)
読みたい本ばかりがたまっていきます(汗)
神社も趣味で回っています。
三重県は伊勢神宮が有名ですが、この椿大神社も雰囲気があってよかったです。少し山の中ですが、おかげでムササビにも会えました。元旦には大勢の人で賑わうそうです。