永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(95)

2008年07月01日 | Weblog
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【明石】の巻  その(7)

 入道は、勤行を途中で投げ出して参じてきて、感激の涙にくれるのでした。

源氏は源氏で
「わが御こころにも折々の御遊び、その人かの人の琴笛、……思し出でられて、夢の心地し給ふままに、掻き鳴らし給へる声も、心すごく聞ゆ」
――源氏は、御自分でも折りにつけての管弦のお遊び、誰々の琴笛の音、歌声、華やかな御自分のあのときの評判、帝をはじめ人々にも敬われておりましたことなど、思い出されて、掻き鳴らされる琴の音も、心すごく冴え勝って聞えます――

 入道は涙が止まらないほどで、

 岡辺のお住いから琵琶と箏の琴を持ってこさせ、琵琶法師となって一、二曲弾きます。源氏にも箏の御琴を差し出されます。源氏もさすがな音色です。
入道が見事に鳴る箏の琴をいくつも持たせて来て、弾き鳴らしますのに、源氏はお心をとめられて、
「これは、女のなつかしきさまにてしどけなう弾きたるこそをかしけれ」
――箏の琴は、女がなつかしい風情で無造作に弾くのがよいものですね――

この何気ない源氏のお言葉に、入道はむやみに笑顔をつくって言いますのは、

 あなた様以上になつかしい風情は、どこにございましょうか。私は延喜の帝の御直伝を弾き伝えまして、三代目に至っておりますが、このようなつたなき身で、世を捨てましたのに、心がふさぎ込みますときは、ときどき掻き鳴らしておりました。
それを不思議にまねる者がおりまして、かの前大王のお弾きになるのに似ているのでございます。是非ともお聞きいただきたいとおもいます、と声をわなわなさせて、今にも涙が落ちそうです。

源氏は、ことばを受けられて、

「あやしう昔より箏は女なむ弾きとるものなりける。……ここにかう弾き込める給へりける、いと興ありけることかな。いかでかは聞くべき」
――不思議に昔から箏は女子が奏法を伝え取るものですね。(峨帝の御伝授で、女五の宮が当時たいした名手でいらっしゃいましたが、その御系統では取り立ててお伝えしている方はおりません。総じて今の世に名声を得て居る人は優れているとは思えません。)ここにこう密かに弾き伝えておられたというのは、誠に興味あること、是非お聞きしたいものですね。――

ではまた。



源氏物語を読んできて(箏)

2008年07月01日 | Weblog
箏(そう)

 現在の十三弦の「お琴」と基本的に同じであるが、特に雅楽の箏を楽箏とよぶ。細長い胴に水平に糸を張り、柱を立てて調律する。古くは左手を使って音を高くしたり、装飾したりしたが、現在では右手のみで、爪をはめて弾く。

◆写真 風俗博物館より
    「箏の琴」と同じかどうか分かりません。どなたか教えてください。

源氏物語を読んできて(琵琶)

2008年07月01日 | Weblog
琵琶

 くだものの枇杷を半分に割ったような4弦の楽器で、腕に抱えて撥で弾く。
王朝貴族の最も愛した楽器のひとつで、古来より名器に名前がつけられ、皇室や各家に伝来した。演奏は秘伝化されるようにもなった。

◆写真 風俗博物館より