7/16
【澪標(みおつくし】の巻 その(1)
源氏 28歳10月~29歳冬まで
藤壺 33歳~34歳
紫の上 20歳~21歳
六條御息所 35歳~36歳で死亡
斎宮(六條御息所の姫君)19歳~20歳
明石の方 19歳~20歳
明石の姫君誕生
源氏は、須磨で故桐壺帝がはっきりと夢に現れなされて以降は、是非ともその苦しんで居られるという罪をお救い申す仏事を営みたいと、10月に御八講を厳かになさいます。
人々が源氏に靡くこと、昔のようでございます。
大后は、とうとう源氏を追放しきれずに、病はなお重くなられておりますが、朱雀院は故院の遺言へのお悩みも、幾分軽くなられておいでです。
しかし、帝はこの先長命できそうにもなく、心細く思われて、度々源氏を召し出されては、ご相談され、ついに御譲位のお心を固められます。
朱雀院は御譲位が近づく頃、尚侍(朧月夜の君)に
「大臣亡せ給ひ、大宮もたのもしげなくのみなり給へるに、わが世の残り少なき心地するなむ、いといとほしう、名残なきさまにてとまり給はむとすらむ。……とてうち泣き給ひぬ」
――あなたの父君の右大臣は亡くなられ、大宮(姉の弘徴殿大后)もお具合が悪くてこれからお頼みになれません。私の余命もいくらもない気がしますので、あなたにお気の毒で、昔の面影もなくお残りになるのでしょうか。(昔からあなたは、私を源氏より軽んじておられましたが、私は一途にあなたのことを深く思いこんでいたのですよ。これからのことを思うさへ辛くて、と泣かれるのでした――
「女君、顔はいとあざやかににほいて、こぼるばかりの愛敬にて、涙もこぼれぬるを、よろずの罪忘れて、あはれにらうたしと御覧ぜらる」
――女君(尚侍)のご様子は、お顔を赤らめて、愛敬はこぼれるばかりに匂いたち、涙をこぼされています。帝は女君の過ちを忘れてあわれにいとしくご覧になるのでした――
「などか御子をだに持給へるまじき。口惜しうもあるかな。契り深き人の為には、今見出で給ひてむと思ふも口惜しや。」
――なぜ、ぜめても皇子が授からなかったのでしょう。残念でなりません。縁の深い源氏との間にはすぐにもお出来になるだろうと思うと、本当にくやしい――
◆元服の儀=元服(げんぶく、げんぷく)とは、平安時代以降、公家・武家の間で行われた男子の成人式という通過儀礼である。加冠(初冠)ともいわれる。江戸時代以降は行われなくなった。数え年13歳~15歳で、髪形、衣裳とも大人の仲間入りとなる。元服後は姉妹でも直接には逢うことができず、隔てられる。
婚儀に続くことが多い。
ではまた。
【澪標(みおつくし】の巻 その(1)
源氏 28歳10月~29歳冬まで
藤壺 33歳~34歳
紫の上 20歳~21歳
六條御息所 35歳~36歳で死亡
斎宮(六條御息所の姫君)19歳~20歳
明石の方 19歳~20歳
明石の姫君誕生
源氏は、須磨で故桐壺帝がはっきりと夢に現れなされて以降は、是非ともその苦しんで居られるという罪をお救い申す仏事を営みたいと、10月に御八講を厳かになさいます。
人々が源氏に靡くこと、昔のようでございます。
大后は、とうとう源氏を追放しきれずに、病はなお重くなられておりますが、朱雀院は故院の遺言へのお悩みも、幾分軽くなられておいでです。
しかし、帝はこの先長命できそうにもなく、心細く思われて、度々源氏を召し出されては、ご相談され、ついに御譲位のお心を固められます。
朱雀院は御譲位が近づく頃、尚侍(朧月夜の君)に
「大臣亡せ給ひ、大宮もたのもしげなくのみなり給へるに、わが世の残り少なき心地するなむ、いといとほしう、名残なきさまにてとまり給はむとすらむ。……とてうち泣き給ひぬ」
――あなたの父君の右大臣は亡くなられ、大宮(姉の弘徴殿大后)もお具合が悪くてこれからお頼みになれません。私の余命もいくらもない気がしますので、あなたにお気の毒で、昔の面影もなくお残りになるのでしょうか。(昔からあなたは、私を源氏より軽んじておられましたが、私は一途にあなたのことを深く思いこんでいたのですよ。これからのことを思うさへ辛くて、と泣かれるのでした――
「女君、顔はいとあざやかににほいて、こぼるばかりの愛敬にて、涙もこぼれぬるを、よろずの罪忘れて、あはれにらうたしと御覧ぜらる」
――女君(尚侍)のご様子は、お顔を赤らめて、愛敬はこぼれるばかりに匂いたち、涙をこぼされています。帝は女君の過ちを忘れてあわれにいとしくご覧になるのでした――
「などか御子をだに持給へるまじき。口惜しうもあるかな。契り深き人の為には、今見出で給ひてむと思ふも口惜しや。」
――なぜ、ぜめても皇子が授からなかったのでしょう。残念でなりません。縁の深い源氏との間にはすぐにもお出来になるだろうと思うと、本当にくやしい――
◆元服の儀=元服(げんぶく、げんぷく)とは、平安時代以降、公家・武家の間で行われた男子の成人式という通過儀礼である。加冠(初冠)ともいわれる。江戸時代以降は行われなくなった。数え年13歳~15歳で、髪形、衣裳とも大人の仲間入りとなる。元服後は姉妹でも直接には逢うことができず、隔てられる。
婚儀に続くことが多い。
ではまた。