永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(女房の日常 昼寝)

2008年07月03日 | Weblog
女房の日常 昼寝

 女房の部屋は個室といっても、壁代や几帳、簾で仕切られた1カ所。渡殿に接する場所が多かったようです。 

 局の方では、2人の女房が横になって本を読んでいます。
この寝転び方といい、袿をすっかり脱いで掛け布団にしてしまっている様子といい、とり散らかった冊子の散乱具合といい、くつろいでいるときの様子が良く出ています。

 女房にも階級があり、女だけの職場で、なかなか気苦労も多かったようです。このように気のおけないお友達は大切でした。

◆写真は 風俗博物館より

源氏物語を読んできて(女房名)

2008年07月03日 | Weblog
女房名(にょうぼう-な)

女房名は女房が出仕にあたって名乗る名前のこと。主人や同輩が呼ぶために、実名とは別につける。また名前の形式そのものをも女房名と呼ぶ。
 
 特に平安期から鎌倉期にかけては女子の名を系図等に記すことが少なかったために、女房として活躍した人物であっても、女房名以外の実名がわかっている例はすくない。

 女房名は、本人の父または兄弟、夫など、帰属する家を代表する人物の官職名を用いることが多い。すなわち、紫式部の式部(父藤原為時が式部大丞であった)や清少納言の少納言(兄弟に少納言となった人物がいたといわれる)ただしこれのみでは同名の者が多くなって不便であるために、さらにその人の特性を示す言葉を冠することもある。

 清少納言の「清」は清原氏の出自であることを示し、紫式部の「紫」は彼女の著作源氏物語の紫の上にちなむ(他説あり)。

◆写真 女房の部屋 衣桁に重ね衣裳を準備している。

源氏物語を読んできて(97)

2008年07月03日 | Weblog
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【明石】の巻  その(9)

源氏は、入道が泣き泣き話をしますのをお聞ききになり、ちょっと涙ぐまれて、

「横ざまの罪にあたりて思ひかけぬ世界に漂ふも、何の罪にかとおぼつかなく思ひつるを、今宵の御物語りに聞き合はすれば、げに浅からぬ前の世の契りにこそはとあはれになむ。
……」
――無実の罪によって、思いがけない世界に漂うのか、何の宿業かと気がかりでしたが、なぜ、今までお聞かせ下さらなかったのですか。お聞きすればまったく浅くない前世からの約束かとあわれに心動かされます。(都を離れてからは世の無常も侘びしくて、仏道以外には顧みず日を送っておりますうちに、すっかり意気地がなくなってしまいました。
そのような方がいらっしゃるとは、ほのかに聞いていましたが、わたしのような流人は縁起でもない、相手になさるまいと悲観していたのです。
それならば、ご案内くださるのですね。心細い一人寝の慰めにも――

入道はかぎりなくうれしく思います。

源氏のくつろがれたお姿のなんとお美しいと、入道はますます雄弁になって
「数知らぬ事ども聞えつくしたれど、うるさしや」
――入道は数えつくせぬほど、いろいろな事を申し上げたようですが、煩雑なので省略――(作者のことば)

源氏は、かえってこんな人目につかない所にこそ、案外優れた女が隠れているのだろうと思われて、翌日の昼頃、岡辺にお文を渡されます。

 「高麗の胡桃色の紙に、えならず引きつくろいて、『をちこちも知らぬ雲井にながめわびかすめし宿の梢をぞとふ』思ふには。」
――高麗製の薄赤く黄ばんだ色の紙に、ひどくきどった書き方で「あてどなく思いすごすのもわびしくて、父上がほのめかされたあなたの家を訪れます」お慕いする心に負けまして――

 源氏からのご消息を待って、ひそかに岡辺に来ていた入道は、望みが叶っていくようでうれしさに酔っています。

 娘はなかなか返り文をされませんのを、入道は早くと薦めますが、なおもお返事しようとしません。

 娘は、源氏からのお手紙は大層ご立派で、気が引けてはずかしく、源氏のご身分と自分との差にまたも打ちひしがれて、気分が悪いと言って臥してしまいましたので、入道が代わりに(こんなふうに)書いたようです。

もったいない仰せに、田舎者の心にはお受けしきれぬのでしょうが、あなた様がながめていらっしゃる同じ空を娘も眺めていますのは、きっと同じ思いからでしょう、ちょっと、色めいたことを申し上げて恐縮でございます。

 入道からの代筆は、陸奥国紙に古めかしい筆跡ですが、上品にありました。
源氏は、まったく内容どおり色めいていることよ、とつくづくとご覧になります。

「御使いに、なべてならぬ玉裳などかづけたり」
――使いの者に、並一通りでない立派な女衣裳を贈りました。

◆陸奥国紙(みちのくにがみ)=陸奥(みちのく)の東北地方で産したという良質の厚手の和紙。普通は恋文や文には使わない。

◆被け物(かづけもの)=目下の者に褒美として与える品。玉は美称。この場合は、女物の上等な衣裳を使いの者に与えるほど、娘を重く思っているということ。

2日間お休みします。ではまた。