永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(112)

2008年07月20日 | Weblog
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【澪標(みおつくし】の巻  その(5)

 源氏は、紫の上に明石の御方のことをきちんと打ち明けないうちに、他から聞き込まれることもあろうかと、

「さこそあなれ、あやしうねじけたるわざなりや。さもおはせなむと思ふあたりには心もとなくて、思ひの外に口惜しくなむ。……憎み給ふなよ」
――実はそういうことなのです。妙にいじわるな仕業ですね。子供があればと思うあなたには生まれそうもなくて、以外な所にできるとは残念です。おまけに女だそうで、構わず置いておいても良さそうですが、そうも行かず、連れて来てお見せしますから憎まないでくださいね――

 紫の上は、顔を赤らめて、嫉妬をいつもご注意いただくことが、自分でも困ったものと
申し上げます。(嫉妬などいつするものでしょう)

源氏は程よくにっこりなさって
「そよ、誰がならはしにかあらむ。思はずにぞ見え給ふや。人の心より外なる思ひ遣りごとして、もの怨じなどし給ふよ。思えば悲し」とてはてはては涙ぐみ給ふ。
――ほら、それですよ。一体誰が経験させるのでしょう。心外ですね、思いもかけぬことに、気を回しすぎて恨んでおいでだこと、思うだに悲しい。と言ってついには涙ぐんでいらっしゃる――

紫の上は、すべては一時の出来心なのだと、明石の御方のこともお思いになろうとなさいますが、

源氏はつづけてこうおっしゃいます。

「この人をかうまで思ひやりごととふは、なほ思ふやうの侍るぞ。まだきに聞えば、またひが心得給ふべければ」と宣ひさして「人柄のおかしかりしも、所がらにや、まずらしう覚えきかし」など語り聞え給ふ。
――明石の御方をこうまで思いやってお尋ねするのはね、理由があるのですよ。早くお話しすればまた誤解なさるでしょうし、――と、途中で言いさして、――明石の御方の人柄が立派に思われたのも、海辺での淋しい思いからだったのでしょう、などとお話になります。――

◆この箇所は、お互いの心のなかの心理描写。お互いのくいちがいが出ています。

ではまた。


源氏物語を読んできて(男性の装束・直垂)

2008年07月20日 | Weblog
直垂(ひたたれ)

 袖細(そでほそ)とも。平安期には庶民の衣服。
後には武家の装束。
初期の頃は、おくみの無い小袖のようなもの。のちに、垂領(たりくび)で、菊綴(きくとじ)と胸紐がつく現代の形になる。長袴とセット。
侍烏帽子(さむらいえぼし)をあわせる。


源氏物語を読んできて(男性の装束・水干)

2008年07月20日 | Weblog
水干 (すいかん)

 狩衣(かりぎぬ)によく似た装束。
民間の男性が着る衣服。
構造は、盤領(まるえり)で袖と身頃がはなれている。
襟(えり)は、首の後ろから出ている紐と、襟に通した紐を結んでとめる。(袍の、古い襟の留めかたに近いと思う)。
袖に2つづつ、袖裏に2つづつ、胸に2つ、菊綴(きくとじ)という飾りがついている。

正式な着方(図左)とくずした着方(図右)がある。