ナ・ホンジン(私は1本も観ていない)が、原案とプロジュースしたタイのホラー映画。1日1回の上映だからか、16:30の回でほぼ満席。
タイの田舎の土着信仰の取材というドキュメンタリー形式の映画。ただ、ドキュメンタリースタッフはカメラを回しているだけなので、存在が全く邪魔にならない。何でこいつら何もしないんだ?とイライラしてはいけない。とりあえず、取材対象のインタビューを挟みこんでるけど、ただのカメラだ。たまにわざとピントが合うまで時間がかかったり、ぶれたり、走ったりしてドキュメンタリーっぽい雰囲気はだしてるけど。
あと、案の定、カメラに急に突進してくるシーンがあった。観客皆驚きました。見事!
土着信仰の巫女の代替わりを取材してたら、今風の、どこにでもいそうな可愛い娘が悪霊に取り憑かれて、悪霊祓いの儀式をするんだが、その儀式が血みどろになるというストーリー。邦画の「来る」に似てる。「来る」は日本政府主導の儀式だったから隠蔽できるけど、タイ政府がこの事件を隠蔽できるだろうか? できないだろうなあ。世界中大騒ぎだ。
花火があがるシーンだけホッとできるけど、あとはもうどうなるか分からない展開。
邦題の「女神の継承」は、この地方の土着信仰の女神の巫女(霊媒:英語の原題はTHE MEDIUM)であるニムが、姪のミンにその役割を継承するのではないかと言う前半のみのストリーを表した題名。私は、ミンの方が若くては華があるからとりあえずの主役で、真の主役はニムかと思っていた。が、違った。
ニム、女神の巫女としていろいろ頑張るのに。兄と妹の関係とかを探りだしたり。姉のノイ(ミンのお母さん)とニムの関係とか。いい味出してたのに。
ミンを演じてた女優さんは、撮影終了後の精神状態が心配になる位頑張ってた。R18+はホラーとしてかと思ってたら、ミンの頑張りに対してだった。
面倒だからネタバレ。
ニムは儀式前に死亡。お兄さんは、なぜ奥さんと息子を避難させなかったのだろうか。
悪霊祓いの儀式では、悪霊に取り憑かれた人たちが、なぜかゾンビ風にガンガン攻撃してくるので、その様子に思わず笑ってしまった。
一番の見どころの血みどろ儀式は、夜で、たまに照明が落ちる設定で、暗視カメラの映像に切り替わるのでグロさはない。
結局悪霊の正体は、ノイの夫の一族が昔残虐行為をして、その被害者と遺族の恨み。「子孫まで祟ってやる!」という強いパワーが、文字通り神も仏もそれ以前の土着信仰もあっさり打ち破り、関係者やら霊媒師達も取材班も全員死亡という救いのないバッドエンド。ノイの家の犬まで茹でられる。多分40名位死んでる。悪霊はこの後どうするんだろう? 恨みの対象は全滅したからあの世に帰るのか? あるいは、自分達のパワーに目覚めて世界征服を狙うのだろうか?
この事件が明るみに出たら、タイの人々は、神に対する信仰心を失くしてしまうぞ。タイの出家の伝統もなくなってしまうぞ。
↑ このシーンでは、ガラスの映るミンの顔が笑う。映る顔が最初からやたらはっきりしてるので想定内。