◎映画『ゼロの焦点』(1961)と太平住宅
昨日のコラムで、「Hans Potterの日々」というブログから「ゼロの焦点 ラストシーン考」という記事を援用した。
このブログには、それとは別に、「ゼロの焦点 金沢の懐かしい風景を訪ねて」という長文の記事がある。映画『ゼロの焦点』のロケ地を紹介しながら、映画における景観と今日の景観とを画像によって対比するという、たいへん興味深い記事である。
その記事のなかに、「鵜原憲一の勤務先」という項がある。引用させていただこう。
鵜原憲一の勤務先
失踪した夫、鵜原憲一の勤務先へ妻の鵜原禎子が訪れるシーンですが、事務所のボードに何故か「太平住宅」のポスター。鵜原憲一の勤務先のクライアント? クライアントだとしても、一社だけ掲示するのは不自然ですよね。
勤務先を映したシーン【写真略】
左にポスターが…(映画のシーン)
当時の住宅地図で確認すると、金沢市尾張町に太平住宅の事務所(地図❺)があります。自信はありませんがここでの撮影でしょうか。当時の金沢市尾張町には企業の支店や営業所が多かったようです。
ブログの主宰者は、「ここでの撮影でしょうか」と言われているが、必ずしもそうとは限らないと思う。おそらく太平住宅は、この映画の「協賛」をしており、どこかの会社で撮影したシーンに、自社のポスターを割り込ませたのではないか。これについて参考になるのは、一九五八年に公開された松竹映画『眼の壁』である。内池秀人さんのブログ「エクランの撮影日記」に、「ロケ地探訪 映画『眼の壁』」という連載記事がある(貴重な労作である)。その連載記事の【おまけ】によると、映画『眼の壁』には、「太平住宅」という文字が五回、出てくるという。映画『ゼロの焦点』の場合も、よく探せば、「太平住宅」が出てくる場面が、ほかにも見つかるのかもしれない。
ちなみに、太平住宅株式会社は、一九四六年三月の設立、二〇〇三年一月に経営破綻したという。